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39、それぞれの幸せ


「あ!王子探し…ました。えっ真由?嘘…本物?」


「おい真由!お前な!馬鹿かよ!本当に!馬鹿が!馬鹿だよ!馬鹿だ!馬鹿が!本当馬鹿!馬鹿だろ!本当馬鹿!」


一人は涙し一人は馬鹿しか言わねえ。ピートは膝から崩れ落ち泣いているのにヒースは怒って語彙力を失っている。


「おい、お前急に出て行くなんて馬鹿だろ?なあ…馬鹿なんだろう?どうして一言相談してくれなかったんだよ?俺とピートはお前が居なくなったって聞いた時どんなに心配したか!心がぶっ壊れるかと思ったんだぞ!それでも王子に付いてお前を探しに…。そもそもこいつが、わりいのに。」


うわぁヒースも泣き始めたぞ。なんだこの状況。そして王子にこいつはヤバいぞ。


「もう…一生、あ゛え゛な゛い゛か゛と゛お゛も゛た゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛。」


ピートってこんな感じだっけ?ピートが私の足に縋り付き号泣し始めた。そっと頭を撫でるとその手を握られ腕ごと引っ張られて頬ずりされる。手を涙でびしょびしょにされる。涙以外も何かしらの液体が全て出ている。


「そうだよ!別にそこの王子にフラれても俺とピートで幸せにしてやるよ!もう他の男なんて見えなくなる位ドロドロに甘やかして愛してやる!だから今度何かあったらちゃんと俺達を頼れよ。そこの王子には到底見つけられないような場所に匿ってやるし2人で守ってやるから!」


おい、お前とんでもない事口走っとるぞ。こえーよ。


「お前は未来永劫、真由には近寄るな。」


ユーリが私を後ろから抱き寄せて言う。確かに怖いぞヒース。なんだお前、ドロドロに甘やかすってこえーよ。


「うっ、ぼ、僕は、真由を、離さない。もうこの手も足も離さない。絶対に王子に返さない。もうこの手を離さない!」


ピートは完全に泣きやみ復活したのか。立ち上がり私の手を強く掴んだままユーリから引き剥がす。


「真由は僕のお姫様だ。そうだよねお姫様。」


おいおい完全に目が据わっているぞ。こえーよ、こえーよ!


「お前も未来永劫、真由には近寄るな。」


とユーリが後ろから抱き寄せるが手は離れない。ピートもヒースもだいぶハイになっているようだ。そうじゃなければ…もし本当に今までそう思っていたなら…こえーよ。


「真由、大丈夫。何があっても守ってあげるからね。ふふっ。可愛いお姫様。」


「えっと?」


助けを求めてユーリの方を見るとユーリはヒースとピートを交互に睨んでいる。


「ダイヤ、屋敷に戻るかい?それが1番安全だよ。」


とそこに笑うハンス様が現れた。さすがに朝食の時間だし探しに来てくれたようだ。


「ハンス様!助けて!」


「おい、何故あいつに助けを求める?舐めてるのか?」


と睨むユーリ。


「そうだぞ!俺達のどちらかにしろ!」


と叫ぶヒース。


「ふふっ姫、僕が貴方の騎士ですよね。」


と微笑むピート。


「これはこれは懐かしい顔ぶれだ。」


と微笑むハンス様。


「この中なら断然ハンス様では?」


「さあこちらへおいで。」


とハンス様が本当に助けてくれて、手足を掴まれていたのが解放される。少し安堵してハンス様を見上げる。


「ダイヤ、どうしたんだい?」


「ああ、これは。」


「「「ダイヤ?!」」」


「うるさっ!」


「なんだ!お前の偽名か!やっぱりこの指輪を!」


「うるせえ王子!金でもの言いやがって!」


「姫どうして離れるんです?」


「お前は真由に近寄るな!」


「僕が真由のたった1人の王子です。5歳の時そう言ってくれましたし。」


「うるせえ!」


ハンス様が苦笑しながら私に小声で言う。


「騒がしい子ども達だ。今すぐに追い払いたい所だけど…そうもいかないのだろう?」


ハンス様が私を見て微笑む。3人は未だにギャーギャーと言い合いをしている。


「ええ、そうですね。今までお世話になりました。本当に心から感謝しています。一生感謝してもしきれない…。」


「君はずっと可愛い私の生徒だよ。いつでも頼りなさい。」


と頭のてっぺんにキスをされた。ギャーギャーと騒いでいた3人は動きを止めてすんと黙った。


「ひえっ、ハンス様?」


「ふふふ、君たちが揉めている間にお姫様は攫って行こうかな。」


「ハンス様!そんなつもりもないくせに、話をややこしくしないでください!」


「そうかな?分からないよ?」


と耳元で囁くハンス様からは甘い匂いはせず、ただ深い木の匂いがした。


「とにかく!真由は俺と帰るぞ!もう誰にも何にも邪魔はさせん!絶対に俺達の間に入り込む隙はないと思え!見ろ!そいつはもう俺との婚約指輪をしている!俺のもんだ!」


と叫んだ瞬間、ピートが素早く私の指から指輪を外した。


「何の事ですか?」


「おい!いい加減にしろ!」


とまた揉めだした。


「ハンス様、やっぱり屋敷で護衛を続けようかな?」


「はははっ早く帰ってあげなさい。」


とハンス様が初めて歯を見せて笑った。




「えっ!」


「うん、本当にごめんね。嘘だから!嘘なんだよ!婚約者なんて居ません!」


と王が言う。私はユーリを見るがユーリはそっと視線を逸らした。


「あれ?ユーリ言ってないの?」


「聞いてませんよ。」


「あれ程意気込んで出て行って…馬鹿なの?」


「まあいいや、ユーリ大事な事王に言ってください。」


「あ、ああ。俺と真由は結婚します。」


「はい、その言葉が聞きたかった。本当に良かったよありがとう2人共。」


「後、ピートとヒースは城には入れません。出禁です。」


「おい、やめろ。王様、ピートとヒースは学校を卒業したら2人が良ければ私の護衛にしてください。」


「はい、姫を守ります!」


「俺も真由を甘やかします!」


「……。王様やっぱりこの2人は出禁でお願いします。」




数年後、真由とユーリは無事に学園を卒業しユーリが準備してすぐに結婚式を挙げました。子どもは2人恵まれ男の子と女の子で男の子は中身も外見もユーリそっくり、女の子も同じように中身も外見も真由そっくりでした。

真由はユーリの傍に寄り添い続けました。その真由の隣にはピートとヒースがピッタリと一緒に居ましたが、本当に出禁になりお見合いをすすめられヒースは無事に愛し合う人と結婚しました。

ピートはユーリに娘がお前を好いていてそっくりだから結婚を許すから真由から離れてくれと頼まれても結局、ユーリを無視し続け真由の傍から最期まで離れませんでした。


めでたしめでたし。



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