31、後悔先に立たず
「真由!真由!話を…し…よう。真由居ないのか?」
王に連れ回されてみっちりと挨拶周りをしてその後もピートの父親や宰相の話に付き合わされて結局、誕生日会がお開きになったのは開始から5時間後だった。終わった後まっすぐ真由の部屋に来たが誰も居ない。というか部屋に戻った様子がない。
「真由!真由!」
真由の部屋を探した後、俺の部屋にいるかと思って戻ったが居ない。城中を2時間かけて探し回ったがやはり何処にも居ない。その頃にはすっかり真夜中になっていた。もしかしたら真由は城に居ない?不安と恐怖でごちゃまぜの感情に押し潰されそうになるのを必死に堪えて考える。
しかし俺も真由も城しか知らない筈、何処に行ったんだ?気持ちだけがはやって仕方ない、だったら俺の勘だがあいつに話してみよう。
「ポール!すまない!少しいいか?」
ポールの部屋の扉を叩く。すぐにパジャマ姿のポールが顔を出した。
王子?こんな真夜中になんだ?
「王子どうされました?」
「今は時間がない、単刀直入に聞くお前の能力は人探しだな?」
えっ言ってないのに!やっぱり王子には全てを見透かされるんだ怖い…。
「ど、どうしてそれを。」
「小さい頃イタズラした後、隠れても絶対に見つかるのが不思議だった。お前は場所が最初から分かっているみたいにすぐに歩き始めた。そこでピンと来たんだ。」
子どものくせに聡い人だなぁ。やっぱり王子は全てを見透かしてる。
「はい、王子の言う通りです。」
「真由が居なくなった。すぐに真由を探してくれ。」
だが能力の効かない真由だ、ポールの能力でもどうなるか…もし無理だったら…。
「真由が居ないですって!」
真由!てっきり部屋に戻ったと思っていたのに。やっぱりあんな事すべきじゃなかったんだ最近2人は仲良かったし、だから王に言ったのに!
「あ?なんだと、おい何の話だ?」
「えっ?」
「王に何を言ったんだ?」
…何も考えるな…多分そうだな…。
ポール、心を読まれていると気付いて無心に!くそが!
「言えよ!話せ!」
王は……2人を傷付けたかった訳では…それだけはどうか。
「王子、私の口からは言えません。王から話を聞いてください。その間に私は真由を探します。」
「……分かった。」
ポールと離れ王と王妃の寝室の扉を叩いた。王がびっくりした様子で扉を開ける。
「びっくりしたよ。ユーリどうしたの?」
「真由が居なくなりました。」
「真由が!な、なんで?どうして?」
「まあ、どうしましょう。」
王妃はオロオロと部屋を歩き回り王は浮かない顔で椅子に座った。
「おれ、私達は愛し合っていたんです!それなのに婚約話が出たから。」
「えっ愛し合って…嘘…どうしよう…ユーリ…あの婚約話は…嘘なんだよ。」
「はあ?な、なんでだよ?どうして!俺達がどんな思いで!」
「私達大人から見ても君達はお似合いだったからどうにか結婚させたいって思って何かきっかけがあればって。」
「なんだと!そんな、そんな事で!真由、真由がどんな思いで!居なくなったんだぞ!1人で誰にも言わずに!」
「ごめん、ごめんね。すぐに対策チームを。」
俺は床に座り込んだ。全身の力が抜けてしまったようだ。
「俺達、昨日の夜に結婚の約束をしたばかりでした。俺からプロポーズをして指輪を渡して真由と結婚を誓い合った。幸せだったんです今日、誕生日会が始まるまでは。誕生日会が終わったら2人であなた達に話をしに行こうと約束しました。」
「ごめん、すぐに見つかるから!」
「いえ、失ったんです。俺はたった今、真由を失いました。もう一生会えなかったら…どうしよう。ああぁぁ。」
俺は子どものように声をあげて泣き始めた。王妃が優しく背中をさすってくれるが本当は振り払いたい位、全てが憎かった。
一旦ユーリを自室に帰すとすぐにポールが戻ってきた。
「真由は学園に行ったようです。教官室で痕跡を失いました。」
「なんだって?」
「はい、それが痕跡が多すぎて何が何だか分からなくなってしまって。」
「多い?」
「はい、どうやら私のトレースが匂いを追うと知っていたようで。様々な香水や人の匂いがわざとたくさん残っていました、なのに真由の匂いは薄れてしまって不完全な痕跡になってしまい、しかも全ての痕跡にその薄れた真由の痕跡がついていて何が何だか。能力が効かないんです。これ以上、真由を追えないんです。」
「真由はポールの能力を知らなかった筈、そこまでは追えたという事はその場所で誰かが助けたに違いない。」
「はい、教官室なのでノーブルを疑ったのですが……。」
「彼はなんて?」
「辞めたそうです。数時間前、学園長の屋敷に直接、辞職願を出しに来たそうです。途中で投げ出してしまう事をひどく詫びていたと、学園長が言うには1人だったと。」
「な、なんだって!それで何処に行くって?」
「ノーブルは旅に出ると告げてすぐ馬で走って行ったそうです。」
「匂いは?追えたのか?」
「すみません、無理でした。そこで何かを撒いたみたいで。ですが確実に手を貸したのはノーブルです。」
「ノーブル、まずいね。彼はとってもとっても優秀なんだよ。」
「ええ、学園で同級生だったので知っています。」
「ポールそうか、そうだったね。とにかく探し続けて。」
「はい。」
ポールが部屋から出て行くと私は頭を抱えた。
「取り返しのつかない事をしてしまったぞ。ユーリ、ユーリは大丈夫だろうか?」
私は兎にも角にもユーリの事が心配だった。




