3、ファーストインプレッション
「まあこんなもんでしょうね。」
あれからポールにひたすら毎日毎日くそほど勉強させられた。
「夢遊病になりました。」
「あなたが毎日毎日言うから昨日の夜一応ここを覗いたんですがグースカ眠ってましたよ。」
面倒そうに言うポールを殴ってやりたい。だけどイケメンだから歯向かえない。抗えないの。と思いながら足をふむ。
「わざと踏んでますよね。ほらこれからあなたの婚約者の王子に会いに行きますよ。」
「なあボールここ他に人いるんですか?私見た事ないんですけど。」
「居ますよ。何人かは。あとは週1でお掃除の日があってその日だけ来てくれる業者の人とか。城に常駐してるのは数人ですね。」
「こんな広いのに。」
「ええ、庭師、洗濯係、調理師、執事3人、僕が住み込みで仕事をしてて、王様と王妃様と王子と貴方が城に住んでいるという形になりますかね。」
「へぇ。ホストはいないんですね。」
「あなたまだ諦めてなかったんですか?もう戻れないんだから諦めなさい。」
「ボーイさんかっこよかったなぁー。癒されたかったなぁー。」
「ほらそろそろ王子の部屋ですよ。しゃんとして!」
「はぁーい。」
「なんですかその返事は!おやつのパフェなしですよ!」
「やだ!唯一の楽しみを。ボールめ転がすぞ!」
「馬鹿早く入れ。」
「うわぁぁぁん。コンコン入りたーい。」
扉の向こうからえっという声が聞こえる。
「真由、普通に入れないんですか?」
「コンコンお邪魔しマース。」
と扉を開けた。
「いや口でコンコン言うな馬鹿。」
中はえ?社長室?5歳の男の子の部屋じゃなかった?
「えっ社長室?子供部屋じゃなかったん?」
「失礼ですよ!王子ご機嫌いかがですか?」
ああ忘れてた王子や。と慌てて見回すとその大きなデスクのリッチな椅子にちょこんと男の子が座って本を読んでいた。横には眼鏡で腹黒そうな執事さん?がいる。王子が私を見てふっと笑ったと思ったらすぐに無表情に戻った。黒い髪の前髪が長めのなんだっけマッシュボブって感じ。顔はいいけど子供やしなぁ。ああやっぱりあのボーイさんかっこよかったなぁ。
「ああ変わりない。」
王子がムスッとした様子で言う。おい可愛いなおい。子供特有のあの頬の膨らみが可愛い。プニプニしたいってもしかして今なら私もあのプニプニがついてるんちゃう?
ハッとして自分の頬を触る。
「うわぁプニプニしてるぅ。可愛い。」
「いやあなた何してるんですか?王子に挨拶しなさい。」
「はーい私真由28…5歳。好きな物はパフェとイケメン。これからよろしくね。」
「ああ、私はユーリ5歳。君が私の婚約者になってくれると聞いた。わざわざ転移までさせてしまってすまない。苦労をかけるが婚約者としての責務を果たしてくれ。」
えー可愛い!おいおいおいおいおっ。5歳がこんなに流暢に可愛過ぎんだろ。優勝、彼が全一です。
「少しの間真由と2人にしてくれるか?」
「「はい。」」
ボールとドSが外に行き王子と2人きりになった。
「すまないが俺は女に興味が無い。女はキーキーと高い声を出し弱いくせに口だけは達者ですぐに泣くし面倒だ。」
王子の話が終わると無意識に私の体が王子にプロレス技を決めていた。えっとなんだっけ名前は、
「チョークスリーパーホールド?」
そして王子から呻き声がしてしめ続けたら声が消えた。落ちたようだ。扉を開けてポールを呼ぶ。2人は扉の前で三角座りをして指相撲をしていた。可愛い。
「ボール勝ったよ!」
Vサインを作り笑う。ポールは
「はあ?」
と言い、ドSは黙って部屋に入ってきた。2人は床に寝転がっている王子を見て叫んだ。
「ななななななあな。あああああああ。」
「あばばばばばばばばばば。王子!王子!王子!」
「なんか元彼思い出しちゃって気付いたらしめてたよね。急になんだってんだ本当に。ああ元彼も決めてやれば良かったなぁ。パイルドライバーとか。ジャーマンスープレックスとか。」
「何をしてるんですか!王子ですよ!一国の王になるお方なんですよ!」
「大丈夫大丈夫すぐに起きるって。ああほら起きた。」
「うう、ううん。ああ、俺はどうしたんだ?急に視界が白くなって。」
「王子!王子!良かったぁ。」
ドSが泣きながら抱き着いている。
「ほら真由謝って!」
「すいませんでした。」
「ああ、何があったんだ?」
「さあ王子今日はもう休みましょう。」
王子がベッドに寝かされる。私はポールと一緒に部屋から出た。
「王様!彼女は婚約者に向いてません!」
ポールが今日の出来事を話す。めちゃくちゃに面白い。やっぱり彼女にして良かった。適当に選んだけど強く願ったからね。素直な事と強い事。本当にピッタリじゃないか。それに王子はあの問題があるから人を寄せ付けないが、彼女ならきっと大丈夫だ。
「ええ向いてるよ。大丈夫最高に向いてる。」
「王様!」
「もうちょっと見守ってて。」