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25、花火


「ねえヒース、真由知らない?」


「真由?いやまだ来てないのか?」


「うん。今日この後一緒にまわる約束してるんだけど。」


「うーん。あいつの持ち場は?」


「行ったけど居なくて。」


「それは……あいつ腹が空いて先に出店をまわり始めたんじゃないか?」


「えぇーそれは。」


「絶対にないとは言い切れないんじゃないか?」


「いや…でも約束は守るよ。絶対に。」


「忘れてたら?」


「いや。そんな……。」


「とにかく大丈夫。騎士コースで1番強いんだから。」


「まあそうだけど。」


「なっ探しがてら一緒に店まわろうぜ。」


「ああ。」


真由どこに行ったんだ?確かに強いから誘拐とか閉じ込められてるとかはまずないだろうけど。



「助けてー!閉じ込められてまーす!」


ダメだ全く返事がない。落ち着いて考えてみよう。


「まずマリスを殴る。そして殴る。じゃなくて!ここは今日は誰も通らない廊下にある部屋。多分何かしらの教科の準備室だ。でも色んな種類の教科書があるからもしかしたらつかわれていない倉庫の可能性もあるぞ。おいおいおいおい。今日中って思ってたけどもしかしたら明日も誰も来ないかも……。マリスめ!くそが。」


怒っても仕方がない少し座って考えよう。と考えても辺りにはドアを開けられそうなものは落ちておらずドアは頑丈でビクともしない。なんだか疲れてしまって眠ってしまい辺りはいつの間にか真っ暗になっていた。



「王子!やっと見つけた!」


結局あれからどこを探しても真由はおらず今ヒースがノーブル教官に事情を説明しに行ってくれている。僕はもしかしたら王子といるのかもと考え探しまわりようやく美術部が行っている絵画の展示場で王子を見つけたところだった。王子は1人でコスモスの絵を眺めていた。


「どうした?真由とまわるのでは?」


「真由がいないんです!警備終わりに現れなくて。」


「なんだと?もう終わる時間だぞ!今まで何をしてたんだ!」


王子が僕の胸ぐらを掴み怒鳴る。王子がこんなに激昂すると思わず少し怯んでしまい上手く話せない。


「言え!これは命令だ!」


「…あ、あの、約束を忘れてしまったのかと思って。」


「なんだと!真由はそんな人間では無い!馬鹿が!」


と王子は僕の胸ぐらを乱暴に離し僕は思わず尻もちをついた。


「すみません。」


「お前は本当に馬鹿者だ!とにかく探すぞ!どこは見たんだ?」


「出店は全て。」


「なら校舎内はまだなんだな!とにかく行くぞ!」


と王子がまた僕に怒鳴り美術展の教室の扉を開けるとそこにマリスが立っていた。


「あっすみません。盗み聞きをするつもりは……。」


「なんだ貴様は?」


「ひっ騎士コースの同級生です。」


「ほう、真由について何か知っているか?」


王子が言葉を発する度に空気がビリビリとするのが分かる。マリスは王子に睨まれピクリとも動かずに首をふるがその瞬間王子がマリスを殴った。


「なっ何をするんですか!王子!」


僕は我に返り慌てて王子を止めるが王子は僕を振り払い、


「お前だな!嘘をつくな!俺には分かるんだどこに隠した!言え!」


とマリスを睨みつける。


「なんだって?マリス君が?」


「僕、僕、君が好きなんだ。真由を消せば僕を愛してくれると思って……。」


「な、なんだと!そんな、そんな理由で!いい加減にしろ!どこへ閉じ込めたんだ!」


僕は声も出ず王子とマリスを眺めていた。真由は僕のせいでマリスに閉じ込められて。

と王子が表情を歪ませた。


「なんだそこはどこだ学園内だな。上階だ。誰も来ない。渡り廊下がある。ピート真由の持ち場は何階だ?」


「3階。」


「3階に渡り廊下があって。あそこか!」


王子はマリスを突き飛ばし走り出した。マリスは僕に擦り寄り赦しをこう。


「お願い赦してほしい。真由を閉じ込めたのは君に見て欲しくて愛して欲しかったから……。」


僕はマリスを突き放し、


「僕は君が男だろうと関係ない君を好きになる日なんて永遠に訪れない。消えてくれ。」


と言い王子を追いかけた。



王子は階段を駆け上がり僕もその後をついて行く。廊下を人にぶつかりながら走りそのまま渡り廊下を走ると人気のない廊下についた。


「ここだ。真由!真由!いるのか?」


王子が扉を叩いても返事はない。王子が必死に開けようとするが鍵がかかっているようだ。


「王子少しいいですか?」


「ああ。」


「さっきマリスからすってきました。この鍵で開くかもしれません。」


と鍵を使うとすんなりと開いてすぐに倒れ込む真由が目に入った。


「真由!真由!」


扉が開き顔に光が当たったからか真由がうっすらと目を開けて立ち上がって駆け寄ってきたので僕は抱きとめる格好になったが真由は隣をすり抜けて王子を抱きしめた。


「ユーリ…ユーリ怖かったよ……。」


「ああ、大丈夫か?遅くなってすまない。泣けばいい大丈夫、大丈夫だから俺がそばに居る。」


僕は真由が泣くところを初めて見た。彼女は強いと思っていたけど間違っていた。本当に僕は王子の言う通り馬鹿だ。どうしてすぐにもっと真剣に探さなかったんだろう。守るとか好きだとか言っておきながらなんにも分かっていなかった。僕はすっかり真由は僕を選んでくれると思っていたのに。

真由は王子の胸で小さくなって泣き続けて王子は聞いた事もない位優しく穏やかな声で慰めている。

邪魔者は去る事にした。



「真由落ち着いたか?」


とりあえず場所を移そうとこの棟の屋上にあがってきた。ユーリが持っていたクッキーをくれてお腹も少し落ち着いた。


「うん。大丈夫、ありがとう。もう一生出られないかと思った。なんか暗くなるとダメね本当に。」


「ああ本当にすまない。遅くなって。」


ユーリが私の両手を自分の手で包んでくれる。少し冷えていた手が温められて安心する。


「ごめんね。一緒にいた子怒ってない?」


「やめたから。」


「女の子と遊ぶの?」


「好きでもない子に好きだと言うのをやめたんだよ。」


「そっか……。」


突然ユーリが私を抱きしめて言う。


「真由好きだ。お前の事が昔からずっと好きなんだ。」


その瞬間花火があがった。心臓が痛い位鼓動している。


「花火。」


私が呟くとユーリも私を離し眺める。


「良かった。お前と見られた。」


とても嬉しそうに笑い私を見る。


「花火好きなの?」


「いや、聞いたんだ。好きな人と一緒に見る事が出来たらその2人は永遠に幸せになれるそうだ。」


「ふふっ似合わな。」


「おい。」


「ふふっ私も好き、ユーリが大好き。」


並んで座り手を繋いで花火を見ていた。


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