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17、後暗い考え


あの王子は本当に馬鹿だと心からそう思う。どうして真由を試すのだろう。真由は王子にたくさんの愛を与えているのにその気持ちには気付かずに今以上を望むのか、僕には分からない。真由は王子をあんなに想っているのに。そんな事にも気付かずに王子は僕と真由の仲を想像して嫉妬し怒り狂っている。

そういえば昔、いつだったか11歳か、12歳位だった時僕は2人の仲に嫉妬して意地悪な質問をした事がある。あの頃は王子が塞ぎ込んでいて頑として部屋から出て来ず僕と真由の2人だけだった。


「はー今日もいい天気ー。ユーリも外に来れば良かったのに。」


「そうだね、王子は最近部屋から出て来ないからね。」


「そうねー。だからまあもうちょっとしたら戻るわ。」


なんだか真由が王子のそばにすぐに戻るのが少し、いや酷く腹が立って聞いたんだった。


「ねえ、もし僕と王子が海で溺れててどちらか1人しか助けられないってなったらどっちを助ける?」


僕の質問に目をぱちくりとさせて真由は恐る恐る聞く。


「えっ…。うーん、その顔、結構真剣に聞いてる?」


「うん、真剣に聞いてる。」


僕の言葉を聞いて真由は少し考え込んで絞り出すように言った。あの言葉を僕は一生忘れないと思う。


「……まずピートを助けてから、」


「1人しか助けられないよ。」


僕は真由の話を遮るように言う。


「ピートを助けた後、ピートに笑顔でお別れを言って海に飛び込んで溺れているユーリと一緒に死ぬわ。」


それって結局、ユーリを選ぶって事じゃないか。僕を1人残して。


「僕を残して逝くって事?」


「ごめんねどう考えてもこうするしかない。ピートはとてもとても大事な親友で大切な人だから死なせるなんて考えられないけど、もし同じようにユーリを助けてあなたと死ぬ事を選んだとして多分ユーリは1人で生きてはいけないし、ピートを犠牲にして生きていく事にユーリは耐えられない。」


「だからってそんな…。」


「だからこれが1番良い選択だと思うの。あなたはきっと大丈夫だから。」


「真由は本当にユーリを大切に想ってるんだね。」


「そうね、だけどあなたも同じ位大事よピート。」


「ありがとう。」


僕は全然嬉しくなかったけどお礼を笑顔で述べた。



「彼女はいつも王子の事を考えているのに。」


僕は騎士コースの運動場で1人で鍛錬を続ける。最近、王子は真由の代わりを探している。彼女の代わりなんて存在しないのに本当に馬鹿だ。


「だからこの間に僕が。」


真由を手に入れる。



「真由、次の授業一緒に行こうよ。」


「うん、そうだねー。次はおっ法律か。共通授業だね。」


「うん王子がいるかも。」


「そうだねーユーリとかぶる授業はあんまり無いからね。」


「そうだね。」



教室に入ると1番にユーリが目に入った。1番前の席に髪の短い可愛らしい女の子と肩を並べて座っている。目が合ったから手を振ったのに無視されてしまった。


「真由大丈夫?」


「大丈夫、大丈夫。子離れしないとね。私も。」


「真由。僕は離れないから。」


「ふふふ、ピートは良い奴だなぁ。じゃあ座ろ。」


「ああ。」


私達はなるべくユーリから遠くに並んで座った。授業前も授業中も可愛らしい女の子はユーリの手を握り嬉しそうにニコニコしている。なんというか私は複雑な気持ちになっていた。2人の姿に少し胸がザワついたけどそれ以上に懐かしい気持ちで昔を思い出していた。昔、前の世界で彼氏が居た時、私もあんな風に笑っていた。大学の時、一緒に授業を受けて私もあんな風に。


「懐かしいなぁ。幸せなんだよなぁ好きな人のそばに居られるだけで。」


「そうだね。」


「ピートも早く見付けてね。応援するから。」


私の言葉にピートが悲しそうに笑った。ユーリはブスっとした顔で授業を受けていた。私は何故かユーリから目を離す事が出来なかった。


「さあ真由、次は体術だよ。」


「…うん行こうか。」


「ねえ昔聞いた、海で溺れている2人のどちらを助けるかっていう話。」


「懐かしいね。それがどうしたの?」


「今でも同じ考えなの?」


「うーんそうだなぁ。今ならピートに能力を使ってもらうんじゃない?」


「その答えはずるいなぁ。ふふふ。」


「私はずるい大人だから。ふふふ。」


「僕は2人が溺れていたらきっと。」


王子を捨てて真由を助ける。


「何?なんか言った?」


「いいやなんでもないよ真由。さあ行こうか。」


「うん。」



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