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13 、本心


「もうすぐ14歳になるね。」


「うんピートはどのコースに行くか決まった?」


ユーリは王子の仕事が増えてきて最近はピートと勉強する事が多くなった。ピートは努力家で私も見習わないといけないと思う程勉強している。3人の中では1番頭がいい。私とユーリは同じ位だ。


「学校の?まだ悩んでる。父が意外と騎士コースも良いんじゃないかって言い出して、僕としてもそっちの方が良いかなって。」


「でもお父さん裁判官でしょ?」


「うんでも別に世襲制じゃないから王子を守るっていう意味では騎士も良いかなって。」


「そっか。ピートは偉いなぁ。優しいしかっこいいし学校入ったらモテまくりやな。」


「うーん。でもきっと父が選ぶから。」


ピートが俯き言う。


「そっか。」


そういえば気付いた事がある。ピートはいつも父親の言う事を聞いて行動していて親の期待や自分の気持ち等で雁字搦めになっているようだ。こんな若いのに可哀想。


「あの…私はめちゃくちゃピート好きやから!優しいし見た目王子やしよく気が付くし私の事もいつも気にかけてくれるし家族思いやし本当に素敵やから!だからそんな悲しい顔しないで!」


ピートは目を丸くして驚きすぐに笑う。


「ふふふっありがとう。僕も真由が好きだよ。君だっていつも優しいし見た目お姫様みたいだし僕の事もこうやって励ましてくれるしいつもありがとう。だから僕も真由が好きだ。」


と優しく抱きしめてくれる。ユーリが抱きしめてくる時はいつも震えているのでこんな穏やかなハグは初めてかもしれない。

ピートは1番背が低かったのに、今では1番背が高く程よく筋肉もつき始めている。


「ピートは大きくなったね。」


ピートの腕の中で話す。ピートも私の頭の上で言う。


「ふふふっそうだね。僕が1番小さかったからね。」


「ピートは本当に優しいよね。何かあっても絶対に庇ってくれてたし。」


「……ごめんね…本当は父にそうするようにって言われてただけなんだ。」


と顔は見えないが悲しい声で言う。


「そんなん関係ないよ。それでも庇ってくれた事が嬉しかったからふふふっピート好き。」


「ふふふっありがとう僕も真由が好き。」


「へえ初めて聞くお前の本音がそれか?」


とピートがビクリと体を震わせて私を引き剥がす。扉の近くにユーリが立っていて声をかけたようだった。


「王子…これは…深い意味は…。」


「ユーリ仕事終わったの?お疲れ様!」


とユーリに近付こうとすると私の腕を掴み何故かピートが私を自分の後ろに庇ってくれる。私は小声で、


「ピートどうしたの?ユーリ以外に誰かいる?」


「いいえ王子だけ。」


「じゃあどうして?」


「ちょっとだけ僕に隠れてて。」


「なんだコソコソと?ピートお前、誰にも本心を明かさないと思っていたのに、真由には…そいつだけには本当の事を話すんだな。」


ユーリはいつもより低く少し掠れた声で言う。コツコツと靴音を鳴らしていて静かな部屋にその音が響く。


「真由は親友だからです。」


「ほーうそうか。なら友達以上の感情はないな?」


「ええありません。」


「ふっまあいい。」


ふんと鼻を鳴らしユーリは部屋に入ってきた。私の部屋だがいつものように椅子に座った。


「ええでは僕と真由は少し出ますので。」


「駄目だな真由は置いていけ。」


ピートに命令したりしないのにこんな言い方初めてだ。


「王子、今は頭に血が上っておられる。そんな状態の時に真由を1人にはできません。さあ真由行こう。」


私の手を優しく引っ張りピートが連れ出そうとするがユーリが叫ぶ。


「駄目だ!真由来い!」


ユーリの叫び声で体がビクリとしてしまう。それに気が付いたピートが焦ったような口振りで、


「王子、真由を怖がらせないでください!」


とユーリに言う。ユーリはピートを強く鋭く睨んでいる。もしかしたら今日も能力の事で何かあったのかもしれない。それならピートがいると話せないので、


「分かった!ここに居るから!ピートいいよもう帰って。今日本当にありがとう。気を付けてね。」


とピートの手を握って言う。ピートは心配そうに私を見つめた後、耳元で、


「真由、気を付けて。」


と囁き部屋から出て行った。


「真由こっちにおいで。」


ピートが出て行くとユーリはさっきとはうってかわって優しい甘えるような声で言う。私はユーリの座っている椅子の前の椅子に座った。


「そうじゃなくて俺の方へ。」


と手招きするのでユーリの傍に行くとグンと引っ張られ膝に座らされる。


「えっ重いし疲れてるんやろ?離して?」


と後ろにいるユーリが私に腕をまわし離してはくれない。なんだ?本当に何かあったのかな?


「俺知ってるんだ真由の気持ち。」


と耳に触れられる。ピアスを触っているようだ。


「ん?なんの話?」


「俺の傍にいるのは俺が可哀想だから。だってずっとこのピアスをつけてる大事そうになぁ。」


痛くはないが少し強く引っ張られる。


「ピアス?ユーリもつけてるでしょ。それにユーリが可哀想だからって一緒に居るわけじゃないし。ピートが転移者だけなしは寂しいからってつけてくれただけやからね。本当に優しいよね。」


「へえ。」


また低く掠れた声。いやなんなん?


「えっとどうしたんユーリ?」


「大丈夫なんでもない。」


と私を後ろから抱きしめるユーリは珍しく震えていない。


「そう。」


まあ震えてないなら確かに大丈夫か。とそれ以上聞かなかった。


「真由。」


「何?」


「傍に居てくれよ。約束だ。」


「分かった。」


可哀想にやっぱり仕事で何かあったのかもしれない。



「ねえ街に行く前にちょっといい?」


今日は毎年恒例の誕生日前の外出だ。私も男装をしている。馬車に潜り込む前にユーリの能力を封じるのだが今日は考えあった。


「ああ。」


「じゃあちょっと失礼して。」


とユーリの胸に手を置く。能力に念じる。


ユーリの能力さん、いつも私の言う事を聞いてくれてありがとう。そこでお願いがあるの私の言う事と同じようにユーリの言う事も聞いてもらえないかな?お願いします。いつも本当にありがとう。だけどユーリがあなたのせいで苦しんでいるのは辛いの。


「ねえユーリいつもみたいに自分で封じてみて。」


「えっ分かった。」


ユーリが目を閉じる。


「おさまったがどれだけもつかだな。」


「まあ行きましょう。」



いつも通りジュースを飲み買い食いをして本屋へ行って昼前には帰ってきた。


「真由!ずっと聞こえない!やったぞ!お前何をしたんだ?本当にありがとう!とうとうやったぞ!試しに本屋で一度封印を解いて店主の声を聞いてまた封じたんだよ!成功だ!」


「やったー!良かったね!」


と手を合わせて喜ぶ久しぶりにユーリの心からの笑顔を見た。


「見つけたぞ王子!死ねー!」


と劈くような叫び声と共に騎士の服をしたナイフを持った男がこちらに走ってきた。まさか城内に殺し屋が?


「ユーリ危ない!」


とユーリの前に庇うように両手を広げ目を瞑った。でもうんともすんとも…どこにもナイフは刺さってないし痛くもない。恐る恐る目を開けると男が目の前で鬼のような形相で私を睨み今にも私をナイフで刺そうとした状態で止まっていた。


「真由は本当に無茶するなぁ。そういうとこも好きだけど。」


と柱の裏から出てきたのはピートだった。



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