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11、8歳になるのに


「剣さばきが良くなってきたな。もしかしたら本当に真由は騎士コースが向いているかもしれない。」


「やったー。」


「俺の能力はまだまだだな。」


「少しずつ少しずつよ。だいぶ音量が小さくなってきたんでしょ?」


「ああ。ボリュームを下げる事はできる。」


「結構すごいよね。後もうちょっとやって!」


「ありがとう。一緒に頑張ろう。」


「うん。」


「なんのお話ですか?」


王子の秘密の運動場に居る2人に話しかけるとビクリと体を震わせて誤魔化すように真由が言う。


「見ての通り剣の鍛錬の話よ。」


「ふーん。」


真由はいつも3人で親友だ!と言うけど何かしら隠し事があるようで僕だけを除け者にする。なんだかとても悔しいような妬けるような気持ちになる。

とこんな気持ちを察したのか王子が、


「ピート、友人としてはお前と仲良くしたいと心から思っているが真由は婚約者だ、お前にも話せない事もある許してくれ。」


と頭を下げるので慌てて、


「ああっすみません王子大丈夫ですから!」


と僕も頭を下げた。しまったこんな事バレたら父に叱られてしまう。


「じゃあ僕はこれで失礼しますね。父に呼ばれていますので!」


と王子の部屋を後にした。そんな事を言われれば僕だって隠し事ばかりだ。

6歳の誕生日の時、真由にピアスを送ろうと言い出したのは父の案だった。王子に取り入り願わくば王子の婚約者にも好かれるようにと絞り出した案だ。

僕らはもう8歳になる。またあの誕生日会が開かれて真由は王子を庇うように前に立つのだろう。


「僕って何なんだろう。」


親の言いなりに王子のそばに居て真由のそばに居る。そして家に帰れば王子と真由の話を根掘り葉掘り聞かれて次の手を考えるのだ。


「多分2人は、いや真由は僕を友達だと思ってくれているのに。」


僕はどうしてもそうは思えない。2人共取り入って媚びを売る相手だ。そんな事を思っている僕に2人が秘密を打ち明けてくれるはずが無い。

それが悲しかった。本当は友達になりたいのに。それは父が許さない。


「僕はきっと一生父の言いなりなんだ。」


静かに僕から漏れだした言葉はまた静かに消えてしまい何も残らなかった。



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