恋なんて、ガラじゃなかった。
主な登場人物
佐々木・・主人公。顔は中の上。明るくて、お笑い好き。
柚葉・・・美少女。モテモテ。ちょいS。本作のヒロイン。
「好きです!俺と、付き合ってください」
そのたった一言が、どれだけ緊張したことか。
「え・・・!」
戸惑う彼女。俺は、彼女に手を差し出した。
恋なんてガラじゃない俺が、告白しなきゃ耐えられないほどの恋をするなんて、誰が思っただろう。少なくとも、俺は思っていなかった。
彼女――柚葉――は、俺をいとも簡単に変えてくれた。
―――2年前――
俺は、人気者な方だと思う。それから、陽キャだとも。
いつも皆を笑わせていて、笑わせることが好きで―――。明るい人ランキングでは、いつもTOP3に入っていた。
恋なんて無縁の、よく言うガキ系の?いや、大人っぽいよ?俺。
ごめん、自己紹介ちょっとミスった。いつも皆を笑わせていて、のとこ。たまにってか、俺結構滑る方・・・。
「さーさーき!」
柚葉が大声で俺を呼ぶ。柚葉はいっつもワハハッと俺のネタに大爆笑してくれる。
「なんやー?」
「いや、呼んでみただけ」
「何やねんそれー」
柚葉は、モテているらしい。
まぁ分からないでもない。容姿は、一般的に見て美少女な方だと言えるだろう。それに明るい。柚葉が可愛いという話は男子の中でも話題になっていた。
「正しくは佐々木と話したかった、かなー」
ニコッと勘違いしそうな発言をする柚葉。不覚にもドキッとしてしまう。
「・・・それ演技だろ」
「あれ?バレちゃった」
「何回それやるんだよ」
俺と柚葉は、そんな関係。男女にしては仲が良い、それ以上でも、それ以下でもない。たまに噂をされる・・・、ほどいちゃついているわけでもない。
ただの友達。いい友達だと思う。
そんなある日のこと。
柚葉が、告白された。
相手は学年のアイドル的存在の男子。イケメンで、ちょっとナルシ(個人の感想です)。
噂はあっという間に広まり、振っただの、OKしてキスまでしただの、色んな噂が飛び交った。
俺は、胸がチクッとした。無性に腹がたった。告白したやつに、無性に腹がたって・・・。何でだろうと首をかしげながら、友達だからだ、と自分を納得させた。
柚葉本人によると、「考えさせて」と言ったらしい。恋愛とか考えたこと無くて・・・、と言う柚葉にホッとしたのは、なぜなんだろうか。
帰り道、俺は上の空だった。空を見ながら、柚葉のことを考えていた。他の男子が今流行りのゲームの話とかをしているのを、しょーもねとか思いながら流していた。
「そういや、柚葉のやつ告られたんだっけ」
不意に柚葉の名前がでて我にかえる。
「あー、あれはOKだよなー」
「だよな、相手はあの裕也だし」
「あ、でも、断って佐々木説もあるよな」
・・・へっ?ビクッと俺は体を震わせる。
「あー、なぁ佐々木、お前柚葉のこと好きだろ?」
え?「いや?ただの友達だよ?」
いきなり俺なんてどうしたんだよ。ていうか俺が裕也に勝てるわけ・・・。勝てる?勝ち負けを想像した自分に驚く。今日はやけに自分のことが分からない日だ。
「ふーん、じゃあやっぱカップル誕生かー。美男美女だな」
「そうだな」
話はそこでふっと終わり、そのうちまばらに皆帰っていった。
いつの間にか俺は家に着いていて・・・。
はぁ。
と、ため息をついた。
その晩、俺はなぜか眠れなかった。頭の中で「柚葉のこと好きだろ?」と言った友達の声がリフレインする。柚葉は、裕也と付き合うのか・・・。
恋って、何なんだろう。俺は、その瞬間に、自分が柚葉に恋に落ちていることに気付いた。
「佐々木?佐々木はさ、私が裕也君と付き合ってほしいと思う?」
次の日俺は、妙なことを柚葉に聞かれた。柚葉が好きだと気付いてしまったから、心臓がバクバク鳴る。
「俺、は、実はあんまり付き合ってほしくない。何ていうか、寂しい。いや、でも、最後に決めるのは柚葉だと思うよ」
俺の精一杯を言葉に乗せる。
柚葉は、安心したようにふわっと笑って、「断ってくる」と言って駆け出していった。
俺は、柚葉が好きだ、と心の底から思った。
――1年後――
俺は不幸なことに、あの後何もなかっただけでなく、その後のクラス替えで柚葉と離れてしまった。
会いたい、口に出してしまうほどに俺は柚葉が愛しかった。なんかちょっと寒気するセリフだな。
その間柚葉の噂は何も流れなかった。
安心していいのか、悪いのか。
少しずつ萎んでいく柚葉への気持ち。俺はそんな自分が不甲斐なくて、自分を嫌いになりかけた。
――そして、現在――
萎んでいた恋心も、クラス替えで同じクラスになってみるみるうちに復活した。
目の前の柚葉は、本当に可愛くて、可愛くて・・・。
こんなに性格が良くて、可愛くて、よく笑ってくれる素敵な女の子が、他にいるだろうか。いや、いない。俺は溢れんばかりのこの気持ちを、たった一言に込めた。
「好きです!俺と、付き合ってください」
手を握ってくれたら、どんなに良いだろう。そんな妄想をしながら手を差し出す。この恋が始まったのは、あの日から。2年の片思い。
「はい、私もずっと前から、佐々木のことが好きでした!」
パッと喜ぶ柚葉の声とともに、ギュッと、手を握られる感覚が走る。
俺はその手を思いっきり引いて、柚葉を抱きしめた。
「大好きだ、柚葉」
俺の胸の中にいる柚葉の香りが、あまりにも暖かくて・・・、俺はこいつを絶対幸せにする、と心に決めた。
俺の甘ーい恋のお話は、まだまだ続く、はずだ。
こんなカップルおるかなー