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愛しのあの子を助けに行くぞ

 大空を羽ばたきゆうゆうと飛び回る。スピードはとどまるところを知らず、力は無限に沸いてくるではないかアルに回復魔法を当ててもらったところがぽわぁと温かくなりさらに、羽ばたきの回数は増える。

 

「気持ちいい…」


 感慨の気持ちすら口に出るほど、私の心は凪いでいる。

 そんな中後ろから大声が投げられる。

 

「まああてよ゛おぉっぉおおおお!!!ぜぇ…はぁ…」


 顔は汗だか鼻水だかでぐちゃぐちゃのクラモトだった。

 ここまでくると哀れにも思えてくる。

 

「どうしたの?もうちょっと頑張りなさいよ」

「ぜぇ…ゲホォ!!…」


 言葉を発することすらままならないクラモトのために僅かにスピードを緩める。

 それでもクラモトはこのスピードについてくるのに精いっぱいだ。

 

「おぇふ゛…ぜぇ…」


 追いすがってきた割には嗚咽で精一杯のクラモト。

 そのためにもさらにスピードを緩めてやる。この実力差だ、普通に戦う分には負けることはないだろう。

 

「ぜぇ…ぜぇ…待てよ…」

「なんなの?そんな必死になって…あたし、もう先に行くわよ」


 憤怒の表情を浮かべるクラモトをさらに煽る。今までのお返しだ、これぐらいは許されるだろう。

 すると、クラモトから恨みつらみが漏れ始める。

 

「てめぇらはいつもそうだ…お前も、族長も…いっつも私のはるか上をいきやがる…」

「はあ?」


「そうだ…そうだよ…私がいくら頑張ろうとも、てめぇらはそのはるか上を行きやがるんだ。こうやって負けるたびに、私のハーピィの血が劣っている…そう感じさせられるんだ…」

「知らないわよ…努力が足んなかっただけじゃないの?もういい?先行くから」


 いつも下品なクラモトにあるまじき弱音。普段ならばそんな弱音にも相手をしていたかもしれない、しかし今はレース中、誰よりも先にゴールをしなければいけない。そんな、私の態度にクラモトは何か吹っ切れたような顔をする。

 

「もういい…もう私では勝てない…分かった、てめえらは強えよ…使いたくはなかったが、使うしかねえか…」

「なによ?」

「仕方ねえよ…てめえらが悪いんだ、私は悪くない…」

「…」


 様子のおかしいクラモトに少しの恐れを感じる。

 少しの迷いの後クラモトは口を開く。

 

 

「てめえの男は頂いた、今頃私の部下に乗っかられて喘いでるんじゃないか?」



 その瞬間、自分の血が沸騰するのを感じる。

 体が動くと共に、ドゴォォオオオン!!という音が響く。

 気が付けばクラモトの体は山肌に叩きつけられて、私の足はクラモトの首筋を抑えていた。

 

「どこだ…私のアルは…」


「ギャハハ…もう無理だよ…もう私らの中古の男だ、捨てちまえよ…」


「早く言え」


「無理だって…もう、どう転んでも私の勝ちなんだよ…」


「早く」


「無理だよ…私でさえ詳しい場所は分からない…もう諦めろ…男も!レースも!!」


 クラモトが私の足の爪の下でニヤリと嗤う。そのしたり顔に怒りが沸き起こり、自然と右足に力が入る。クラモトがギリィギリィという音が鳴る。

 

 

 

「いいから言え!!!」



 足の下から微かに「一本大樹の先…」という声が聞こえる。

 瞬間に私の体は空へと飛び立ち、来た道を引き返していた。

 

 

 ……

 

 

 …

 

 

 気持ちよく飛んでいる場合ではない。全速力だ。

 もう半日は飛んでいるだろうか?目的地までの時間が私をさらに焦らせる。

 

「アルゥ…アル!!」


 飛んでいる時に何度、名前を呼んだか分からない。返ってくることは無いと分かっていても、呼ばずにはいられない。

 

「アルウウウウウ!!どこ!!どこにいるの!?アルウウウ!!」


 喉は枯れ、体は軋むが飛ぶことはやめられない。

 山の辺に微かにクラモトの言っていた一本大樹が見えてくる。

 

 

 

 

 その瞬間…ぷ~~んと鼻の奥を突き抜けて、下腹部を刺激する匂いを感じる。

 

「!?なにこれ!?」


 今度は鼻に全意識を集中させる。羽ばたくのを忘れて少し高度が落ちるが仕方がない。すると、今度はしっかりと感じ取れた。

 

「この匂い…アルの匂い」


 何度も自慰行為に使ったから分かる。この圧倒的な雄の匂いはアル以外に出せるものなど存在しない。

 しかし…

 

「でも…この匂い…いつもと少し違う?いつもより薄い…のは場所が遠いからだろうけど、いつもよりコクが…ある?」


 僅かに感じ取れる違和感を何とか言葉にする。

 違和感の理由を考える。とっさに浮かんだのは二つだった。

 

 まずは一つ目…この匂いはアルではなく、もっと別の匂いであるという事。しかし、それはないだろう、この香しさはアル以外に出せるものではない。それに代替品で出せる物が存在するのならば既に商用化されていないことがあり得ないからだ。

 

 そして二つ目…アルの体が危険を感じて匂いを発していることだ、いつもより雌を引き寄せる匂いに変化しているのだろう。恐らくこれだ。

 どういう経緯でそうなったのかはそうなったのかは分からないが、分かることは一つ。

 

「今すぐアルの元へ向かわないと…」

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