私の選択
茶色い髪の少年は目をつぶり魔法を唱えた。
「土の壁!」
ドカーーン!
歓喜に打ち震える私を容赦なく人の胴ぐらいの厚みに幅と縦の長さが5メートル土の壁が床から生み出され私を弾き飛ばした。5メートルの高さから地面にバタンと落ちた。コルセットのおかげで助かった。危なかった。 体力が1減ったが何とか1残っている。
ーーこれってコルセットなかったら普通に死んでるじゃないか!?
「ファビアン最高〜!!どっかのバカとは大違いね!!」
「ファビアンてめぇ!? こっちは怖かったわ!!」
ファビアンを褒めるエミリー。私はどろどろの空気を醸し出し爬虫類のような紫の瞳はファビアンを呪いそうだ。エミリーはファビアンを私から庇うように抱き寄せる。
ーーカッコいいねエミリー。だが、もうおしまいなのだよ。
私はあえて敵の殲滅をする。結果は闇堕ちだと思うがそれでもコイツらをぶっ飛ばしたかった。
「今までの屈辱を今晴らす。覚悟なさいエミリー!!」
体力:◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
魔力:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
精神力:◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇
↓
体力2減った。精神力1増えた。
▼選択して下さい。
●たたかう
●防御
技 ●乱れ打ち●愛のムチ●しびれ打ち●緊縛
魔法 ●闇の羽衣●闇のゆりかご
装備●コルセット
特殊魔法●闇のムチ
※この戦闘は逃げられません。
特殊魔法
●闇のムチ(敵全体に地面から闇のムチが伸びて拘束し、締め付ける。体力を徐々に奪い取る)
魔力7精神力5消費 光の剣で解除可。
私は●闇のムチを選択した。自動モードになり、両手を広げて「闇のムチ!」と叫んだ。
アーダルベルトやエミリー、オットー、ニクセ、ファビアンを闇のムチが地面から何本も伸びて拘束し、締め付ける。
「くそっ!」とアーダルベルトは剣で反抗しようとして、地面から生える黒いムチに剣を取られた。エミリーが「まさか!! 貴女は転生者なの!?」と驚いた。
ーー今更気づいても、もう遅い!
「だったら何? 貴女はダークが好きだからこんなことになったのよね?」
ーー5人対1人の戦いは本当に無理ゲーだわ。まあその分、私のステイタスは高い。
私は黒いオーラを纏い体力を吸いまくる。拘束したキャラクターからそれぞれ1の体力を奪い取った。傷ついた頰や腕の傷が癒えた。
「これは貴女が望んだ世界。褒めてほしいわ」
ーーエミリーいや運命の女神。あんたのおかげで私はこうして仕返しができる。感謝しなきゃね。
ピンクの女が「だってママからのおススメだったし、やり方これから知らないし。別に好きってわけでもないわ」と言い訳した。
わたしはこの責任を人の所為にする姿勢を聞いて、ムカついた。
ーー別に好きでもないだと!? 前回、あんたは好きでもない男と寝た。私は名も知らない男どもに犯された。
胸の内側がどろどろと煮えたぎる思いだ。でも、今回は違う私はあんた達を好きにできる。解放感に酔いしれそうだ。
▼選択して下さい。
●たたかう
●防御
技 ●乱れ打ち●緊縛
魔法 ●闇の羽衣●闇のゆりかご
装備●コルセット
※この戦闘は逃げられません。
闇のムチに拘束されたままのエミリー達。
●乱れ打ちを選択した。エミリーに1回、ファビアンに1回混乱、オットーに1回、アーダルベルトに1回ムチが打ち込まれた。そして闇のムチにより体力をそれぞれ1吸い取った。
ーーファビアンが混乱だってさ! エミリーに攻撃してくれないかな。あっだめかどっちにしろ動けない。惜しいことをしてしまった。
エミリーにさらなる屈辱を味わって欲しかった。ピンクの瞳からは諦めたような気配がした。エミリーとファビアン以外の敵は必死に足掻きムチを外そうと身をよじるが無駄な足掻きだ。
右手を上げてステータスを確認した。
体力:◆◆◆◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇
魔力:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
精神力:◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
↓
体力がみるみる回復している。5人で戦うからこうなるのだ。2人であればここまで回復はしなかった。
▼選択して下さい。
●たたかう
●防御
技 ●乱れ打ち●愛のムチ●緊縛
魔法 ●闇の羽衣●闇のゆりかご
装備●コルセット
※この戦闘は逃げられません。
が表示される。乱れ打ちをタッチする。ムチを妖艶に構えた私は敵に打ち据えた。1がニクセに1回、エミリーに1回、オットーに1回、ファビアンが1回。そして闇のムチにより体力をそれぞれ1吸い取った。
▼選択して下さい。
●たたかう
●防御
技 ●乱れ打ち●緊縛
魔法 ●闇の羽衣●闇のゆりかご
装備●コルセット
※この戦闘は逃げられません。
とすぐに表示された。
私はにやりと仄暗い笑みを浮かべる。
ーーいたぶるって楽しいわ〜。
「ねえ? 5人もいてたった1人の令嬢にぼこぼこにされて悔しくないの〜? ましてやそれが王太子や時期宰相だなんてこの国の先行きはどうなることやら。そして、光の聖女様。 貴女は本当に世界を救うの? 貴女の所為で滅びるのではなくて?」
赤と青の瞳が私を睨む。エミリーは「うるさいわよ。この魔女が」と震えながら呟く。
私の事を闇の魔女だと知っているのはゲームの知識がある人だけだ。やはりエミリーは転生者だった。
ーーそう。それを待っていたのよ。悔しくて憎らしい。そんな表情を待っていたの。
私は闇堕ち寸前の思考回路になっていた。
私は●乱れ打ちを選択する。ムチを4回敵にランダムに当てた。
1がニクセに1回、ファビアンに1回、エミリーに2回。
▼戦闘不能と表示されるニクセとファビアン。2人はぐったりと床に倒れた。
「ファビアン!?」
エミリーは悲痛な叫び声を上げた。
ーーファビアンの事好きすぎだな。あからさま過ぎて笑える。
「初めからファビアンに絞っておけば良かったのにねぇ〜。自業自得ね」
ーーてか、ゲームでは4キャラのルートクリアしてからダークに入るんだけど、4回も時間を巻き戻しているのか? けど、エミリーはさきほどこのルートしか知らないとか言ってなかったっけ? やはり何か私の知っているゲームとは違う。
闇のムチは再び体力を1吸い取った。
乱れ打ちと闇のムチによる攻撃を繰り返し、5人とも床に倒れた。それを見て私は高笑いをした。
「おっほっほっほ〜〜。ざまあないですわね〜〜」
闇のオーラをまとう私の髪はどす黒く変色していた。周りの生徒達は「お、おい。あいつ髪が黒くなってるぞ」とか「光の聖女様がやられた」とか「あれは魔女か?」とか言って戸惑っていた。
ーーあーあー。何もできないくせにギャーギャー言ってるよ。気に入らないわね〜。
白い格好のおじさん、大司祭様が私の前に現れた。ぐったりと倒れたエミリーを杖で示す。
「そやつは世界を破滅に導く者なり!!」
周りはざわめく。兵士が数名入り口から現れエミリーを取り押さえる。私は愉快な気分だった。
ーーああ。でも、これじゃ生温い。私の目の前で苦しんでほしい。
完全に闇堕ちした私は金色に輝く瞳になった。黒いオーラを操り、学園の外にいる魔物に呼びかける。
「こいつら全員殺しちゃって!」
100匹ぐらいの魔物達が入り口から現れた。黒い毛並みの狼型の魔物だった。魔物は生徒達を次々と襲う。鋭い牙が生徒の首や足、手に胴を噛んで行く。
「きゃーー!?」
「助けてくれーー!!」
突然の事に多くの生徒は抵抗もできないで、かみ殺された。エミリーはそんな光景を呆然と見て「バッドエンド」と呟いた。魔物はエミリー達にも襲いかかり床を血で汚した。
大司祭は「こ、こんな筈ではなかった!」と魔物を見て震えて、噛み殺された。
「ざまあ。ないわね。神さまが正しいと思っているのが間違いなのよ。ふふふふふふふ。あっはっはっはっはー!!」
私は口を大きくあけて笑った。そして、わたしにも魔物は襲いかかった。私の意識はその瞬間に飛んだ。
ホールの中は人間の死体で埋め尽くされていた。魔物は外へと次の獲物を求めて去っていく。生き残った1人の男はシャーロットに歩み寄る。
死んで動けないシャーロットの頰を愛しそうに手で撫でる黒髪の男は美しい顔で微笑んでいた。