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戻ってきた

 




 コルセットで圧迫された腹部。血の巡りが悪くてふらふらした。高いピンヒールを履いている所為で足元がおぼつかない。


 ーー気持ち悪い。うぷっ。


 口から内臓が出てきそうな気分だ。


 ーーよくこんなの我慢してたな。すごいな自分。


 17〜25歳まで日本人をやっていたので約8年前の自分がこのコルセットやピンヒールを選んだ事になる。


 ーー若いってすごい。昔の自分を褒めてあげたい。


 昔をしみじみと思い出していると、目の前の野性味あふれる赤髪の男が喚いた。


「おい! 何しみじみしてるんだ! 俺がお前に引導を渡してやる!」


 赤髪の男こと、アーダルベルトだった。その台詞により、無事に断罪イベントに戻れたことを確信した。相変わらずピンクの髪の女、エミリーを庇うように抱きしめている。残念そうに顔をしかめるエミリー。


 ーー今の私ならわかる。エミリーは私が気絶するのを期待してたんだ。ランダムで悪役令嬢はこの断罪イベントで気絶する事がある。そして、それを知っているのはゲームの知識を持っている転生者のみ。こいつは転生者ってことになる。もしかすると説得できるかも!?


「ねえエミーーーー


 リーと言う前に、

 ▼戦闘が開始されました。と表示された。アーダルベルトとエミリーは離れて剣とタロットカードを構える。ニクセとオットー、ファビアンも

 杖と短剣、拳を構えた。


 やはり戦いは避けられないみたいだ。ムチを出す時にまた太ももを晒すのは嫌なのでスカートがなるべくめくれないように注意しながら太もものガーターベルトに挟んだムチを手に取った。


 体力:◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 魔力:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 精神力:◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ↓


 と表示された。


 ▼選択して下さい。


 ●たたかう

 ●防御

 技 ●乱れ打ち●緊縛

 魔法 ●闇の羽衣●闇のゆりかご

 装備●コルセット●ピンヒール

 ※この戦闘は逃げられません。


 と表示された。


 右手を上げ↓をタッチする。


 ●ピンヒール(敵を蹴りつけるまたは踏みつけると攻撃力+1。敵への魅了、攻撃時1割。装備者体力ゲージ−1。精神力ゲージ−1。俊敏半減。



 ーーまずは装備のピンヒールを外す。


 装備は外す事が可能だ。ターンも減らない。外すとその戦闘ではもう一度装備する事は出来ない。


 ピンヒールを脱いだ。足元はもともとスカートで見えないから、他の人からは身長が縮んだ様に見える。スカートが地面にこすれた。ピンヒールを外す事により、敏捷がもとに戻り2倍の早さでターンが回ってくる。そして私は●防御を選択した。 防御はダメージを半分にしてくれる。


 アーダルベルトが火をまとった剣で私に斬りかかる。自動モードになった私はムチで剣を弾く。驚く赤い瞳。私は妖艶に笑った。どうやら防御に成功した様だ。


 体力:◆◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇

 魔力:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 精神力:◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ↓


 と表示。体力1と精神力1はピンヒールを外した事により回復。精神力は1ターン終えると1回復する。


 次にだるそうな表情に仕草のオットーの番だ。オットーは空を見上げて口笛を吹いていた。


 ーーオットーがサボっている!!


 エミリーへの好感度が低い証拠だ。


 ●神秘のソード(ヒロインとの好感度によりやる気アップ)


 はオットーの唯一の装備の筈だ。


 ーー好感度が低いのに、何故隠しキャラルートになっているの? このルートに入るには好感度は最大の筈だ。私の知っているゲームとは少し違う?


 エミリーがオットーに「あんた何してんのよ!?」と目を吊り上げて怒っている。オットーはそれを口笛を吹きながら無視した。


 ーーどっちにしろ助かるわ!


  1番好きだったキャラクターはダークだったがオットーになりそうだ。


 オットーにグッと親指を立ててウインクした。そんな私にムカついたエミリーは「何調子に乗っているのよ!?」と怒鳴る。


 ーーそんなに大きな声を出すとは品性を疑うわ。……私も大概だが。


 ピンヒールを脱いだ足が冷たい床で冷えた。エミリーはタロットカードを器用な手先でシャッフルして1枚を引く。


 私は女神からもらったデータを頭の中から引っ張りだした。


 タロットカード 技

 ●占い(0〜4ゲージ敵の体力をランダムで減らす。低確率で戦闘不能にさせるか自滅する)

 精神力5魔力3消費

 ●スート(火風水土の魔法をランダムで発生させる。威力もランダム)

 魔力5精神力3消費


 ーー占いかスートかどっちだ!? 占いはちょっと怖い!


 エミリーは引いたカードを見てにやりと笑う。そのタロットカードを私めがけて飛ばしてきた。


 ーー占いか!?


 タロットカードは私のほっぺたをスパッと切った。血が垂れて紫のドレスに染みをつくる。


 体力:◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 魔力:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 精神力:◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ↓


 と表示された。体力が2減った。


 戦闘不能ではないことに少し安心した。私のターンだ。


 ▼選択して下さい。


 ●たたかう

 ●防御

 技 ●乱れ打ち●愛のムチ●緊縛

 魔法 ●闇の羽衣●闇のゆりかご

 装備●コルセット

 ※この戦闘は逃げられません。


 また●防御を選択する。


 メガネのニクセは「水の矢!」と叫ぶ。水で作成した少し大きめな矢が私に高速で飛んできた。自動モードの私はそれをムチで真っ二つに断ち切る。防御に成功した様だ。ニクセは眉間にしわを寄せメガネを指で押し上げる。


 ーー悪役令嬢の防御力最高ね。あっ今すっごく高笑いしたい。


 手を口に当てて笑おうとするが、顔面を掌で掴まれそうになり自動モードになった私はひらりと避けた。


 ●アイアンクロー(ミスしやすいが、決まると体力3減らす。掌全体で相手の顔面をつかむ)

 精神力1消費


 ーー今のはアイアンクロー!? 人の顔面つかもうとしたよ!? 可愛い顔して恐ろしい!!


 私は顔面蒼白になった。技をかわされたファビアンは「失敗しちゃった」と瞳をうるうるさせる。エミリーが「気にしないでいいのよ! 次頑張りましょう」と励ます。


 ーーエミリーめファビアンには甘いな!?


 私のターンになった。


 ▼選択して下さい。


 ●たたかう

 ●防御

 技 ●乱れ打ち●愛のムチ●しびれ打ち●緊縛

 魔法 ●闇の羽衣●闇のゆりかご

 装備●コルセット

 ※この戦闘は逃げられません。


 また●防御を選択する。


 アーダルベルトは「魔刃剣!!」と叫びながら剣を振り下ろし私に魔力をおびた斬撃をおみまいする。自動モードの私はそれを防ぎきれなかった。


 体力:◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 魔力:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 精神力:◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ↓


 体力を1減らした。精神力は2ターン過ぎた為2回復していた。


 ーーまだ大丈夫な筈!! いける!!


 私は防御を繰り返していた。それはある魔法を発動させる為だった。


 ーーあと2ターン持ち堪えれば私の勝ちよ!


 あのサボり男がまさか動くとは思わなかった。緑の男ことオットーはだるそうに4本の短剣を構えて剣の舞を踊り出した。軽やかな舞に私を含めた周りの生徒達が見惚れた。そして、短剣が風をまとい私に飛んできた。4回続くその攻撃を自動モードの私は3回ムチで弾く。1回は残念ながら私の腕をかすめた。


 体力:◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 魔力:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 精神力:◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ↓


 体力が1減った。


「何すんの!? 私の味方じゃないの!?」


 思わずオットーに文句を言う私。オットーはめんどくさそうに「えー。まあ。はい」と答えた。エミリーはすごく驚いていたが「最初からやりなさいよ!」と叱った。エミリーは多分オットー嫌いだな。そして私もこの瞬間嫌いになった。


 ーーぬかった! オットーの所為で死ぬかも!?


 再び顔面蒼白な私。エミリーはタロットカードをシャッフルし始めた。1枚を引き、エミリーは舌打ちした。掲げた1枚のカードは風をまとい私の方へと飛ぶ。それを自分モードの私はムチで弾いた。


 ーースートか!? でも弱い! よかった!


 私のターンになった。


 ▼選択して下さい。


 ●たたかう

 ●防御

 技 ●乱れ打ち●愛のムチ●しびれ打ち●緊縛

 魔法 ●闇の羽衣●闇のゆりかご

 装備●コルセット

 ※この戦闘は逃げられません。


 また●防御を選択する。


 ニクセは「水の矢!」と叫ぶ。水で作成した少し大きめな矢が私に高速で飛んできた。自動モードの私はそれを真っ二つに断ち切った。


 ーーよっしゃあ! いける!




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