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油断大敵

闇魔法 紹介

●闇の羽衣(光属性以外の魔法や技を無力化)

魔力5消費 効果時間、光の波動を喰らわない限り戦闘中ずっと

 

 アーダルベルトが「魔刃剣!」と剣を振り下ろし、私めがけて魔力を帯びた斬撃が迫ってきた。しかし、私の目の前で斬撃が突然消えた。それに戸惑うアーダルベルト。私はその光景にほくそ笑む。


「ふふふふ」


 そして、エミリーのターンになった様で、エミリーが祈る様に両手を握り「光の波動!」と叫んだ。私の頭に先程の画面が横切った。


 ●闇の羽衣(光属性以外の魔法や技を無力化)

 魔力5消費 効果時間、光の波動を喰らわない限り戦闘中ずっと


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 ーーなんだとーー!?


 この時の私はヒーローに倒される悪役の様に顔を引きつらせた。


 光がエミリーの握る両手からキラッと光るとぶわーー!と光が溢れて辺りを照らす。私の肩に載る闇色の羽衣をバリンッと破壊した。緑の男は眠りから覚めた。どうやら、状態異常も解除できる様だ。


 青い男が「水の矢」と叫び。水の矢が私の腹部にぶつかった。その衝撃で私は冷たい床に仰向けに倒れた。衝撃で星が見えた。


 体力:◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 魔力:◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 精神力:◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ↓


 と表示された画面を見て、私は負けた事を確信した。


 ▼戦闘不能 と表示が出た。


 動けない私を見下しエミリーは高笑いをする。


「おっほっほっほっ!ざまあないですわね〜!」


 私はエミリーを睨む以外に抵抗できなかった。身体が金縛りにあったように動けない。


 ーーく、悔しい!!もうちょっとやり方を変えれたら、もしかして勝てたかもしれない!!


 エミリーは私を見下ろしてニヤニヤ厭らしく笑っていたが、突然はっと視線を私の後ろへと向けた。


 シーーン


 この空間自体が静まった。空気が突然変わったのだ。その静けさに私は危機感を覚えた。


 コツコツ


 全身黒ずくめの男が靴音を鳴らしてエミリーに歩み寄る。漆黒の髪に、瞳の彼は形の良い唇の端を吊り上げ妖しげに笑う。黒い執事服は彼のためにあるかのようによく似合っていた。彼はすらっと背が高かった。


 私はあるゲームのスチル画像を思い出した。漆黒の眼差しは優しくて、でも主人公ではない主人を想っているその表情。その画像を見て思った、尊い……。


『貴女なら我が主人を救ってくれるでしょう』


 せつなくて 優しくて 犯し難い存在。


 私はゲームのキャラクターである筈の彼に恋い焦がれた。


 あれは高校生の頃であった。お年玉で奮発して買ったゲーム機に付属でついていたゲームソフト。タイトルは<アルカナストーリー〜愚者の微笑み〜>だった。


 私は最も重要な事に気づいた。ここはそのゲームの世界であった。乙女ゲームのその世界には5人の攻略キャラクターがいる。神器を生まれた時から身につけている4人のキャラクターのうち1人をプレイヤーはまず選択する。


 1人目が赤い男ことアーダルベルト。王太子という身分。俺様キャラクターだ。火属性を操る。神秘のワンドを身に宿している。


 2人目が青い男ことニクセ。宰相の息子にして本人も宰相候補である。冷静沈着なクールメガネキャラクター。水属性を操る。神秘のカップを身に宿している。


 3人目が緑の男ことオットー。伯爵家の次男にして王家隠密暗殺部隊隊長の裏の顔をもつ。女たらしだが、本心を一切見せないキャラクター。風属性を操る。神秘のソードを身に宿している。


 4人目が茶色の少年ことファビアン。元庶民だったが神器を宿しているために男爵家の養子となった。心優しい可愛らしい見た目に性格だが、ブチギレると作中では1番怖いキャラクター。土属性を操る。神秘のコインを身に宿している。


 4人を攻略してようやく解放される隠しキャラクターが今ピンク女ことエミリーに跪く漆黒の執事だ。悪役令嬢に仕える彼の名前はダーク。実は彼の正体は堕天使だ。私はダークが大好きすぎて他のキャラクターをすっかり忘れてた。


 そしてスチル画像のようにダークはエミリーの手をとると甲にキスをした。エミリーは顔を赤く染める。私は胸が焼けるような嫉妬に駆られた。


 ーー憎い!エミリーが憎い!何故そこに私がいない?! そこは私の場所だろ!!


「ダーク!! 貴方裏切るの!?」


 誰かに乗っ取られた感覚だった。顔が険しくなり、怒りで頭が痛い。


 ダークは私を冷たく見下ろす。漆黒の瞳には情なんてもの一切なかった。まるでゴミを見ているかのようだ。


 ーー何故? 今まで私に尽くしてきたのに何故そんな目をするの?


 ーーこれは誰だ? 怒りに染まるこの女は誰だ?


「裏切る? 何を言っているのですか? 貴女が弱いのがいけないのですよ」


「っっ!?」


 ダークのその言葉で怒りで真っ赤に視界が染まる。動悸がする。目眩がする。


 ドクドク


 エミリーが嬉しそうにダークに抱きついた。


 ドクドクドクドク


「いらっしゃいダーク。貴方が欲しかったの。ふふっ。これからは仲良くしましょ?」


 このぶりっ子な声が耳障りだった。


 ダークは愛おしそうにエミリーの頭を撫でた。


 ドクドクドクドクドクドク


 私はエミリーとダークを射殺さんばかりに睨んだ。最早鬼の形相だったろう。


「皆に神の宣託を伝える!」


 その声の方に視線を向けると、白い服を着た大司祭がいた。皆は注目した。大司祭は私を杖で示してこう告げた。


「そやつは世界を滅ぼす大罪人である」


 周りがざわついた。


 ーー世界を滅ぼすだって!? 嘘よ!? 何ふざけたこと言ってるのよ!?くそ坊主が!?


 アーダルベルトが「そいつを捕らえろ!」と指示をする。数名の兵士が動けない私を抱えて運ぶ。勝手に触れてきた兵士に私は「触らないで!!」と叫んだが、無駄な足掻きだった。兵士は気にせずに私を運ぶ。ダークから離れていく事が辛かった。


 ーー辛いの? たかだかゲームのキャラクターでしょ?


 冷静な自分はそう言っただが、


 ーーダークは私のものよ! 私が拾ってあげて執事にしてあげたのよ!


 ともう1人の自分が叫ぶ。意味がわかんない。


 ーー貴女は誰だ?


 すぐに答えが返ってきた。簡単な話だ。単純な話だ。


 ーー私は貴女よ。


 この身体だった頃の自分の記憶が一気に蘇る。


 私はあまりの情報の多さに意識を手放した。




●闇のゆりかご(敵全体に眠り状態。数回の攻撃を受ければ目覚める)

魔力4消費

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