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エミリーが静かに現れた。助っ人の登場かと期待した。だが、様子がいつもと違う。洗礼された身のこなし、光輝くオーラ。それは私達に畏怖の念を与えた。
ーー女神とも違う。私の闇落ちの逆バージョンか!?
「……貴女はエミリーなの?」
エミリーは瞑っていた目を開いた。金色に輝く瞳。瞳孔は猫のように縦に長い。可憐な少女の声はまるで男のように低い。
「お前は邪魔だ。今すぐ消し去ってやる」
タロットカードが宙に浮かぶ。
▼戦闘が開始しました。と表示された。ムチを構えた。
アーダルベルト達は武器を構えない。どうやら私とエミリーとの一騎打ちだ。
「あなたは誰? エミリーを返して!」
エミリーはくすくす笑う。
「光の神だと名乗っておこう」
光の神様が憑依したようだ。まだ、こいつと戦うには早い。大人しく倒されるのを待っていてくれなかったようだ。
ーーだーー!? 計画がめちゃくちゃだ!? ふざけんなよ!?
「光の神だと? シャーロットが言っていたな。本当にいたのか」
ニクセが考え込んだ。アーダルベルトが「はあああ!? なら、倒すとまずくないか!?」と叫ぶ。かなりまずいよ。
「貴方達はせいぜいそこで傍観してなさい。エミリーは私が取り戻す」
光の神は宙に浮かび顔を歪めて私を見下ろす。
ーーやれるものならやってみろってか!? 上等だわ!? 後パンツ見えそうだから、浮かばないでほしい。
「アルス・マグナ!」
4属性の魔力を纏うタロットカードが私めがけて飛んできた。12のダメージを負った。
体力:◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
魔力:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
精神力:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
↓
ーーわーお。死にそう。やっぱり、あれを試すか。
思い浮かべるのは、子を奪われた母の悲しみ。闇のオーラが漂い始める。母は復讐の火を灯す。
ーー意識が闇に引っ張られる!? 踏ん張れるか!?
紫の髪は闇に染まる。紫の瞳は金色に染まり瞳孔を縦長にした。
「エミリーを返して!」
魔物達に呼びかける。
ーー光の神を消せ!
狼型の魔物や鳥型の魔物がエミリーに襲いかかる。
▼戦闘が中断しました。と表示される。
白い光が魔物達を消し去った。ところどころ血塗れになったエミリーは金の目を光らせて私を見つめる。
「やはり邪魔だな」
「光の神よ!? どうか、目を覚まして下さい!? あなたはそんな神ではない筈です!? 優しいかったあの頃に戻って下さい!!」
突然現れたダークが私を庇うように光の神の前に立ち塞がる。光の神は忌々しくダークを睨む。
「おのれまた邪魔をする気か!? この失敗作が!?」
タロットカードがダークに飛んできて頰や腕を斬る。くっと痛みで顔をしかめるダークは説得を続ける。
「何度だって、邪魔をします。あなたははじめは闇の神を信じていたじゃないですか!? またわかりあえないのですか!?」
光の神は怒りで光のオーラを光らせた。
「あいつが先に裏切ったのだ!? 信じた私が愚かであった。闇の魔女と共に消えよ!!」
ーーダークを死なせる訳にはいかない!!
私は力を使う覚悟を決めた。闇に身を委ねる。
光輝くエミリー。髪は金色に染まる。
「ジャッジメント!!」
放射する聖なる光がダークと私に降り注ぐ直前にに私は闇に呑まれ形状を変えた。光と闇がぶつかり爆発した。
ドゴーーーンッッ
砂煙が舞う中に闇色のドラゴンはいた。それを見上げるダークは申し訳なさそうに謝った。
「……すいません。我が主人」
ーーいいわよ。
「シャーーーッ」
ーーあっ。この姿だと喋れなかったんだ。
おのれの手を見ると爪が鋭くて分厚い皮に覆われていた。光の神は忌々しく見下した。
「その姿になってまで失敗作を守るのか。愚かな魔女め。くっもうそろそろ限界か……再び会うその時はお前らの最期だ」
エミリーは突然気を失い落ちてきた。私はそれをギリギリキャッチする。怪我を負っているが命に別状はなさそうだ。ほっとした。
「お前ドラゴンだったのか!?」
アーダルベルトが私に剣先を向けた。それを阻むダーク。ニクセとオットーはアーダルベルトを止めた。
「やめましょう。俺たちは事情を知らなすぎる。まずは話を聞きましょう」
「……ドラゴンに勝てる気がしない。ニクセの言う通りにしましょう」
そんな2人に私は感動した。話せばわかる奴だったのか。




