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火の精霊

 




 教室にてアーダルベルトが私に頭を下げていた。私は帰り支度してそれをスルーした。ファビアンが精霊を召喚できる様になった事を聞いて私に協力してくれと頼んできた。火の精霊サラマンダーを倒して召喚出来るようにしたいらしい。アーダルベルトが気にくわない私は無視していたが、周りの生徒の視線が刺さる。


 ーーまったく。見世物じゃないわよ。


「私がいなくとも殿下なら強い仲間を集めれるでしょう? 」


 刺々しく言ってやった。断罪イベントのことを思い出して腹が立ってきた。アーダルベルトは顔を上げるが、しゅんと落ち込んで下を向いた。


 ーー男に可愛く落ち込まれても、可愛くねー! ……ファビアンなら様になりそうだ。


「……試してみたが、まずは戦闘にもならない。どうやって戦闘にもっていくのかさえわからない」


 ーーあー。なるほど、戦闘になる以前の問題か。契約するにも理由がいる訳だ。力を貸して欲しいじゃ駄目なのか?


「力を貸してくれってきちんと言いましたか?」


「言った。だが、理由が明確にないと駄目だと断られた」


 ーーまるで面接。


「理由が弱いんですね」


「そういう事だ。ファビアンがお前なら意味がわからない事を言って説得させれるとか……。頼む。俺が王になるには必要なんだ。このままではファビアンを王にすると言い出しかねん」


 ーー貴方の父ちゃんすでに言ってたわよ〜。冗談とか言ってたけど割と本気みたいねー。ファビアンが可哀想。絶対に嫌がる。


 ファビアンは大司祭見習いの勉強のために授業が終わると早々に城に向かった。


 ーーファビアンって頼まれたら断れないタイプよね。真面目だし。


 私は渋々頷いた。最初から精霊と契約はしてもらうつもりだ。ただ、すんなり頷くのは嫌だった。


「わかりました。ただし3つ条件があります」


 ーーせっかく頼まれたんだもの。このチャンス生かさないとね。


「何だ? 聞いてやらない事もないぞ?」


 ーー偉そうだな。


「まずは、ニクセとオットーにも参加させること。風属性のオットーは必須ね」


 属性の弱点は火>水>土>風>火 光↔︎闇となっている。火属性のサラマンダーの弱点は風だ。サボリ魔のオットーが役に立つか分からないがいないよりマシだ。


「言われなくともそのつもりだ」


 ーー貴方達仲良いもんね〜。オットーは秘密をバラしたのかしらね。まあどうでもいいが。


「2つ目はニクセとオットーの精霊も契約させること」


「ほう。お前に利点があるとは思わんが?」


 ーー……利点以前に世界が滅ぶ危機なのよ。言ってみるか? いや、やはり無駄だろうな。


「世界の滅亡の危機なの。だから、精霊の力を借りるの」


「……意味わからん」


 ーーだろうな!


 アーダルベルトは頭大丈夫か? と私を疑う。


 ーーやはり、嘘は必要ね。


「精霊がいればこの国も安泰だってことよ」


「ふむ。……お前がそんなことを思うとは意外だな。明日は雪が降るな」


 アーダルベルトは窓の外を眺めた。今は春なので雪は降らない。否定はしないが失礼なやつだな。


「3つ目は化け物を2体ほど倒すから手伝って、精霊の力は必須よ」


 アーダルベルトは眉間に皺を寄せる。


「化け物とは、魔物か?」


「そんなものね」


 神様だって言ったら、反対するだろうな。ファビアンはちゃんと協力してくれるだろうか。


 私が勝手に世界の命運握ってて、なんか独りよがりな感じで嫌だな。


「3つ目はよくわからないから、約束できないが、最大限の努力はしよう」


「それだけでも、有難いわ」


 ーーまったく期待してなかったから、譲歩である。



 * *



 そんなこんなで私たちは街外れの湖に来てます。街は結界で覆われて魔物が入ってこない。街外れにはちらほら魔物がいる。アーダルベルトに飛びかかってきた狼型の魔物をオットーが短剣で素早く斬り伏せた。普段の気怠い雰囲気からは想像できない早技であった。唖然とするアーダルベルトとニクセ。私はある程度ゲームで知っていたので驚きはしなかった。他国からのスパイを殺しまくっているので当然強い。


 オットーは「どうしました?」と気だるそうな態度に戻った。


 ーーなるほど、ここにきて正解かしら。


 魔物のいる危険な場所なら、オットーはある程度やる気が上がる。危険が無ければ、サボる。やる気のあるオットーはこの2人より強い。


「……お前。強いんだな」


「はあ。まあ、そうですね」


 裏の顔を未だに隠してるようだ。エミリーがオットーのルートに進むと、アーダルベルトやニクセに暗殺部隊の隊長だとバレる。


 ここに来たのは人目を気にしてのことだった。


 ーー闇の魔女とか連呼しないでほしい。


「暇じゃないので早くしてくれませんか?」


「オットー。そんなことを言ってサボりたいだけでしょう」


 ニクセがオットーを睨む。


「バレたか」


 実はオットーはかなり忙しい。夜は一睡も出来ないほど、隊長として働いている。だから、いつも怠そうなのだ。ニクセも宰相候補で忙しいが、オットーよりかはマシである。


 ちなみにエミリーはファビアンについて行って今はいない。ミアはニクセが嫌がるから、ニーナはおっちょこちょいのため、オリヴィアは怖がるため置いてきた。役に立たない3人だ。


「始めて頂戴」


 アーダルベルトは木製の先がぐるぐるしたワンドを取り出した。


 ーー仙人風のおじいちゃん思い出しちゃった。


 空に掲げると宙に赤い魔法陣が描かれた。赤い魔法陣から地面に降りるように出てきた蝙蝠の羽根を背中に生やしたトカゲ。鋭い牙に爪。瞳孔が縦に長い。尻尾も合わせて横に3メートルはあるサラマンダーは私を睨み「闇の魔女よ。何か用か?」と問う。


 ーー私って有名人だな!?


「闇の魔女? 何だそれは?」


 アーダルベルトは訝しげにサラマンダーに聞く。


「話す必要はない。して、何用か?」


 サラマンダーナイスである。余計なことは話さなくていいのだ。


「光の神様と闇の神様を倒したいの。力を貸して。そして、神様となって世界を救ってほしいの」


 アーダルベルト達はぽかーんとなった。サラマンダーは私に感心をもったようだ。


「ほう。運命から足掻くつもりか。一歩間違えれば破滅だがいいのか?」


「どっちみち滅ぶのだから構わない」


 ーー足掻かないとね。女神もそれを望んでいる。


「……ふむ。良かろう。まずは我を倒してみよ」


 ▼戦闘が開始しました。と表示された。


 私はムチを構えた。アーダルベルト達も戸惑いながら武器を構えた。


 サラマンダーは「フレイムバースト!」と叫び、口から赤い火の玉をこっちに向けて吐き出した。それは私たちの目の前で爆ぜた。


 バシューーッ


「「「「あつっっ!?」」」」


 アーダルベルトのダメージは2で、その他は4だ。ニクセは火傷を負った。めちゃくちゃ熱かった。髪が一部縮れた。それに私はキレた。


「乙女の髪に何してくれてんじゃー!?」


 ●乱れ打ちを連打する。ムチでサラマンダーの硬い赤い皮を4回叩く。2が3回、1が1回計7のダメージを食らわした。女の命である髪の敵だ。アーダルベルト達は若干引いた。おそらく、私とアーダルベルト達との好感度は低いな。


 オットーは「とんでもない令嬢だな」と舞を踊りだした。風を纏う短剣が4本飛び出してサラマンダーの皮を傷つけた。3が3回、2が1回計11ダメージを食らわす。弱点が効いたようだ。


 ▼戦闘不能。とサラマンダーに表示された。


 ーーつえーなおい。オットーのがとんでもないわ。


「すげーなお前」


 アーダルベルトが思わずそう呟く。

 呆然とするオットー以外の3人。サラマンダーは「ふむ。お主らの力見せてもらった。我に神秘のワンドを掲げよ」と指示する。


「お、おう」


 白く光輝く神秘のワンドを掲げる。サラマンダーは口から白い光を吐き出してワンドに当てた。辺りは白く輝く。光が収まると

 ▼サラマンダーを召喚できるようになりました。とアーダルベルトの頭上に表示された。


 サラマンダーは「でわ。さらばだ」とボンッと消えた。


「はい。じゃあ次お願い」


 私がそう3人に声をかける。ニクセが聖杯を取り出そうとした時に、それはやってきた。



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