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to be continued

 


 ーー戦闘から逃げれないんじゃなかったのかー!?


 アーダルベルト達を縛っていたムチが灰になる様にパラパラと消滅した。


 低い声がした方を向くと40代ぐらいのダンディなお髭のおじさんがいた。格好は貴族の姿だった。それを見た先生と生徒達は慌てて跪き頭を垂れる。私もそれに倣った。


 ーーあれは陛下じゃないの!? どうしてここにいるの!?


 さっきから予想外な展開が続いてる。


 ーーまあ。前回までが悲惨すぎたんだけどね。


 1回目はダークに殺され、2回目は魔物に殺され、3回目は処刑。本当私が何したっていうんだ。過去を思い出して泣けてきた。


 陛下は私の目の前に来た。すごく緊張した。処刑だと言われたらどうしよう。


「面をあげよ」


 私はその言葉に従い視線をゆっくり上げた。赤い髪に瞳にお髭。優しげなその顔付きはぶっちゃけ野生的なアーダルベルトと似ていない。色だけは似ている。


「愚息が何やら迷惑をかけたみたいだな。申し訳なかった」


 頭を下げて謝られた。


 ーーアホな子供を持つと親は苦労するわね。っっじゃなくて、一国の王様に頭下げられたー!?


 周りは騒然となった。私は慌てて「謝らないで下さい」と言う。


「事情は聞いた。いじめは確かに良くない。だが、我らにも非はあった。勝手に婚約を決めたのに、光の聖女なら良いと言って申し訳なかった。あの時はどうかしていた。婚約を軽んじるなどあってはならない」


 ーー本当にな!! 律儀に婚約を守っていた私が馬鹿だったわ!!


 それに関しては許すつもりもなかった。黙り込む私に陛下はまた頭を下げた。


 ーーいやしかし王様が貴族に頭下げるのは国の威厳に関わる。それは貴族としてマズイぞ!


「頭を上げて下さい。貴族に頭をさげないで下さい」


 私はつっけんどんな言い方になってしまった。周りの視線が痛い。何陛下に偉そうに言ってるんだって感じ。


 ーー私にだって色々あるんだよ!? 1回死んでみっか!?


 私は眉間にしわを寄せた。陛下は「それもそうだな」と顔を上げた。アーダルベルトが「何で父上が謝るんですか!?」と焦っていた。


「黙れ。勝手に婚約破棄だと言いおって、お主は王太子としての自覚はないのか!?」


「ですが、その女はエミリーに散々酷い仕打ちをしてました。王太子妃には相応しくありません」


 ーーあ。王太子がまともな事言った。


 私も自分が王太子妃に向いているとは思わない。それは大賛成です。


 ーーアーダルベルトも王太子に向いてないけどね〜。


 お互い感情的である。冷静さを求める王太子のお仕事には向いていない。


「黙れと言っている! 1人の女子をこんな大勢の前でいたぶりおって、男としても恥ずかしい!!」


 ーーわあお。王様の言うことも正しい。結局私がいたぶる方になったのだが。


「この女はそれだけのことをしたのです!! そして非を決して認めないのです!!」


「さっき謝っていただろう!!」


「あれは……ただの気まぐれです!!」


 ーー間違いではないな。


 婚約者を一応やっていた王太子は割と私のことを理解していた。全く嬉しくない。


 王様の後ろにいた大司祭が「あの〜?」と伺う。


「「何だ?」」


 ギロリと王様と王太子に睨まれた大司祭。顔を引きつらせた。


「宣託を申していいでしょうか?」


 ーーいやー!? またこの時が来た!?


 静かに私は後ずさった。王様と王太子は気づかなかった。後ろから首に腕をまわされて悲鳴をあげそうになったが根性でどうにか堪えた。黒い瞳が私の顔を覗いた。


「大丈夫ですよ」


 顔を青くした私を安心させるようにダークは微笑んだ。


「申してみよ」


 首に巻きつく腕の体温は温かったが私は震えた。


 大司祭はえーおほんと咳をする。


「どちらも正しいが間違っているとエミリー様とシャーロット様のことを言っておられました」


 その曖昧な言葉に周りは微妙な空気になった。


「…………どういう事だ?」


「いやあ。それが2つの違う声が聞こえまして、言う事が真逆なんですよねー。びっくりでした」


 光の神と闇の神の声だろう。有利な方の声が届くらしいので、エミリーと私が拮抗している今は両方聞こえるようだ。


 ーーえ? どっちも無事? え。何この展開今までで一番平和じゃん。


 エミリーを見ると、驚いていた。王様は「では、この件は両者に非はなしとする。婚約についてはシャーロット嬢の判断で継続してもいいし、解消しても良い事にする」と場をまとめた。


 私は挙手した。陛下は「発言を許す」と頷いた。ダークが首から腕を離したので、首元がすーすーした。


「解消がいいです」


 私はキッパリと縁をきることにした。こんな目にあえば誰だって嫌になるだろう。もう王太子など見たくもない。陛下は残念そうに「わかった」と頷いた。アーダルベルトは嬉しそうだった。そんな息子をジト目で見る陛下。


「お前には説教がいるな」


「へ? あっいててててて!」


 息子の襟を引っ張ってずるずる引きずりながら出入口に歩き出す陛下。大人と変わらない大きさの息子を易々と引きずる陛下は力が強い。なんとも言えない表情で見送る先生と生徒達。


 ーーカッコ悪。解消出来て良かった。あーでもこれからどうしようね〜。とりあえず、エミリーから色々と聞かないとね〜。


 周りがぞろぞろと会場を出ていく中で茫然と佇むエミリー。ファビアンが話しかけても反応がなかった。ニクセとオットーは2人を置いて会場から出ていく。


「我が主人。帰りの馬車を手配してきます」


 恭しく片手を胸にあてお辞儀をするダーク。裏切ったのが嘘みたいな光景だ。


「ダーク」


「はい」


「次裏切ったら許さないから」


 案に今回は許すと言っていた。ダークは微笑んで「はい」と答えた。


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