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そういえば

 





「ねぇ女神。ハッピーエンドでも世界が破滅するのだが、結局は私かエミリーが死んだらアウトっていう事?」


 コタツでゴロゴロしながら、隣に立つ運命の女神に私は聞いた。


 そもそもの話だが私はこの乙女ゲームの世界に戻ったばかりのハッピーエンドでも世界は滅びた。私も半信半疑だったが、日本人だった頃にネットに載っていたのだ。アルカナストーリーの4人のキャラのハッピーエンドは世界が滅んでいるのではないかと。それはダークルートで光の神と闇の神について説明され、プレイヤーが推測したものだ。


 アルカナストーリーの舞台、セフィロトには光の神と闇の神がいる。仲の悪いその神達はセフィロトの支配権を巡って戦いを繰り広げる。その代理人が光の聖女と闇の魔女だ。生き残った方が勝つ。負ければその主たる神も消滅する。しかし、人間にはどちらの神様も必要だ。どちらか一方が消滅すれば人間は滅びる。


 それを回避するべくダークは光の聖女と闇の魔女の仲を取り持とうとするが無駄に終わる。この2人めちゃくちゃ仲が悪い。光の神と闇の神並みに仲が悪い。


 4人の神秘を宿す者、いわゆる攻略キャラ4人は精霊に愛されている者だ。火水風土それぞれの精霊は人間に魔法を授ける。精霊に愛された人間は強い魔力を宿している。その4人を手中に収めようと光の神と闇の神は考える。4人のうち1人でも手に入れればその神は有利になる。


 通常のハッピーエンドでは光の聖女と1人の神秘を宿す者と共に、闇の魔女とダークを倒す。ゲームでは語られなかったが、ダークが語った通りだと光の神が勝ち闇の神は負けて消滅する筈だ。


「そうかもしれません」


 運命の女神は曖昧に頷いた。私はその曖昧な返答を不満に思った。


「神さまなのにわからないの?」


「私はその時は神さまじゃありませんから」


「……な、なるほど」


 ーー新米の神様だしな。神様ってどんな感覚なのかわからんが......。


「とりあえず私もエミリーも死ななきゃいいのね」


 運命の女神は花がほころぶようににっこりと笑った。


「わかりません」


「はい?」


「わかりません」


「…………」


 女神に頼ろうとした私が馬鹿であった。


 ーー思ったよりも役に立たないな。



 * *



 何だかんだ言って断罪イベントに戻ってきた私に待ち受けていたのは容赦ない攻撃であった。え? 前もそうだったって? 違う違う、今回は気絶してたのだ。気絶した私に敵は容赦なく攻撃してきた。本当、か弱い乙女に対して酷いよね。


 気がつくとぼろぼろの牢獄だった。今回は辱めを受けることなく、ドラゴンにもなることも無く、淡々と処刑された。



 * *



「ただいま〜」


 優しく揺さぶられて目覚めた。亜空間にきた私は相変わらず裸だった。運命の女神は無言で私を見つめていた。


「どうしたの?」


「あ、いえ何というか、慣れた感じしますね」


 女神はなんとも言えない表情であった。それに対して私はふっと笑った。


「慣れはしないわよ。ただ、諦めただけ」


 何回も死ねば諦めもつく。


「だから、やり直すことをやめたい」


「では、次ダメだったら諦めましょう」


 女神も何か思う事があったのか、妥協案を出した。


 ーーそっかぁ。次でもう死ねるのか。


 気が付けば感情の起伏も少なくなった。人生って何度も繰り返すものではないな。私は「わかった」と頷いた。







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