時空の歪み
コタツでぬくぬくと温まる私は紫色のジャージを着ていた。長い髪は部屋ゴムでまとめた。巨乳により胸元がぱつんぱつんだ。
ーー胸っていらないかもな。貧乳だった頃は嫌味に聞こえただろうがいらないな。
私がいる場所は亜空間であり、時空の狭間であった。寒くも暑くもなくちょうどいいその空間に何故かコタツがある。というのも私が頼んだからだ。
この空間に戻ってきた私はグーで殴られて目を覚ました。運命の女神様はバッドエンドになった事を「何やってくれてんだ」と怒ってきた。
ーーだって、仕方ないじゃん。あの世界では私は救われない。あのエミリーでいる限り隠しキャラのハッピーエンドこと真のエンドにはたどり着けない。
ぐれてそう言った私に女神は「そうだけど、そうじゃないでしょ!?」と目を吊り上げて叱ってきた。
ーーどないしろと言うのだ? 私なりに満足したのでもう死にたいわ。
死にたいと言う私を見て、運命の女神様は何か察したのか、今度は心配して欲しい物はないかと聞いてきた。
そしてコタツで休みのサラリーマンのようにぐーたらしていた。
ーーあー今がいちばん幸せ〜。
シャーロットにコタツは見た目がきっと合わないが、いいじゃないか。運命の女神はそんな私を見て、「まあまあまあまあ」と何やら自分と葛藤していた。
「ねえ。女神。あのエミリーは転生者?」
「そうですよ」
「女神も?」
「違いますよ」
どうやら根本的に違う人物の様だ。
「私が運命変えるの無理だし、あの子をどうにかしてよ」
ーーてか女神が直接どうにかしなさいよ!
女神はキッパリと「無理です」と言い切った。
「私が干渉できるのは貴女だけです」
「それは何故?」
「貴女が闇の魔女だからです」
闇の魔女。それは私が嫌うワードである。眉間にシワが寄った。
「じゃあエミリーはどうやって転生したの?」
私は転生というか、出戻りであるが、運命の女神の呼びかけによって日本人に転生した。仙人風のおじいちゃんのおかげでもある。
「彼女はイレギュラーな存在です。時空の歪みにより転生しました」
彼女はイレギュラーか。日本人だった時の私と一緒か?
「貴女が逃げたから生まれた歪みですかね〜」
女神はじと目になる。
「私の所為にしないでよ! 貴女が私に逃げたいか言ったのよ? それさえなければ良かったじゃない......?」
語尾が上がった。
ーー良かったとは言い難いのか?
女神は自分は孤独だと言った。
ーーだからって世界が平和ならいいのでわ? でもそれでは自分を犠牲にしろって言ってるな。
「ねえ女神。私さあ。日本人になったりシャーロットになったりと色々あったじゃない? それで1番満足したのはバッドエンドだったのよ。なんていうか自分をさらけ出した感じで満足したわ」
女神は私が正気か疑った。ピンク色の目をまん丸くして「え? え?」と頭を抱える。
ーーまあ。結局のところは本人次第なのだ。




