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帰ってきた人  作者: 陸 なるみ
第二章 帰ってきた人
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法子の決心



 学校で朝の出来事を何度も思い返した。


――信也さんは私が誰かわからなかった。「姉さんとばかり踊らないで」というようなことを言ってた。信也さんはお祖父ちゃんをお父さん、私を加代さんだと思ったんだ。


 私のことなんて眼中にない。その事実を認めるのはつらいけれど、今は自分の恋心より、信也さんを助けることを考えるべきだ。


 お祖父ちゃんの踊りを見て「お父さんじゃない、お祖父ちゃんだ」とわかったんだ。


 こういうと信也さんのお父さんはお祖父ちゃんの息子のように聞こえるけど違う。

 養子縁組でちょっとこんぐらがってるだけ、彼らは従兄弟同士だ。法子の父親が信也さんと「はとこ」。

 もう何度も考えている。法子は血筋でいけば「はとこの子」、遠い親戚だ。戸籍上は従兄妹。結婚も許される。

 

 また自分の恋路のことを考えてしまった。今は信也さんが少しでも立ち直れるようにしなくては。

 まずはお祖父ちゃんを仲間につけてお父さんを説得する。私は神社で巫女をする。信也さんの身の回りに目を配る。


 明後日は青山さまの誕生日。死んでしまった人の誕生会をするものかどうかはよくわからないけれど、信也さんはお父さんが生まれた家で祝ってあげたいんだ。だから自分から京都に戻った。

 自殺するためなんかじゃない。


 お祖父ちゃんに甘えるように泣いてた。カッコ悪くなんてなかった。なり振り構わず心剥き出しにして泣いてた。

 

 きっとよかったんだ。お祖父ちゃんが泣いていいんだって言ってた。男の人だって悲しいときはちゃんと泣かないとだめなんだろう。


 痩せてた。髪と髭のせいもあるけど、もともと髪が硬めだからヴォリュームがある。その分顔が小さく細く見えてしまった。

 柔道もできる頼りがいのあるお兄ちゃんだったのに。

 

 子供のころ、母方の祖母が身体を壊して母が看病にいったときとかに、お隣で夕食を食べた。信也さんは父が店から帰るまで出来る限り一緒にいてくれたと思う。


 宿題を見てもらったり、淋しくなって泣いてしまって、お店まで手を引いてお父さんの様子を見に連れて行ってもらったり。


 加代伯母さんは、百人一首しようとか、トランプしようとか、すぐ遊びを思いつくし、信也さんもヘッドフォンで電子ピアノを聴かせてくれたりした。

 

 今度は私が信也さんを守る。私がお祖父ちゃんに似て気合いの入った娘なら、頑固一徹にでもなってやる――




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