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リリアと秘密を共有することにしました

 僕はリリアに向き直った。


(どうしたもんかね……)


 喋ってしまったのも、それを聞かれてしまったのもまぁしょうがない。


 問題はそれをどう始末を付けるか、だ。取り敢えず口止めをしようと思うが、話をしてそれでも言いふらされたり、怖がられたりされるのは嫌だ。


 リリアは真面目だから、言いふらしたりはしないだろうが、怖がらないかだけが心配である。


 僕は彼女に口止めしようと、口を開いた。


「リリアさん」


「っ、……はい。なんでしょう」


 彼女は僕がまた喋りだしたのに驚いたのだろう……ビクッ、と肩を震わせてから返事をした。


 なんかこのまま話掛けると怖がられてしまいそうだ。そうなると、なんて声を掛けていいかわからない。


「あの……えーと、突然喋ったりしてびっくりしたよね。その、ごめんね?」


 取り敢えず謝ってみた。すると彼女は手をわたわたとさせて、


「あっ…、いえっ、そんな事はありません!大丈夫ですよ!!」


と、そんな事を言ってきた。可愛い。取り敢えずは怖がられて居ない様だ。


 だが、やっぱり心配なので確認を取ることにした。


「ねぇ、リリアは僕が一歳なのに喋ってて怖くないのかい?」


「クリス様はこんなに可愛らしいのに、そんな事あるわけないじゃないですか!」


 鼻息荒く、否定された。胸元でグーの形に握られた拳がナイスでした。はい。


「でもなんでクリス様は女の子なのに、僕って一人称を使うんですか? 女の子は自分の事は私って言うんですよ!」


 いきなり痛い所を突いてきた。その答えは僕が前世で男だったからなのだが、彼女に全てを話して大丈夫だろうか。


「その理由を今から説明するんだけど、その前にリリアは誰かに言いふらしたりしない? それだけ確認を取りたいんだ」


 ちょっとでも言いよどむようなら、教えないつもりで聞いてみる。だがリリアの返答は、


「もちろんです! 言いふらす訳がないじゃないですか! 口が堅い自信ならありますよ!」


 即答だった。うん、安心出来そうだ。


 僕は彼女には事情を話しても問題無いと判断し、話し始めた。


 僕の中身は男であること、前世の記憶があるということ、いつの間にか転生していたこと。すべてを包み隠さず話した。


「そんなことが……本当にあるんですね。現に一歳であるクリス様はこうして私と会話しているわけですし……」


「まぁ、リリアと話せるのはそういう訳が会ったんだよ」


 リリアはふむふむと一通り納得したあと、神妙な顔つきになって、こんなことを言ってきた。


「まさかクリス様が私より年上だったなんて!?」


 気にするとこそこ!? いや、確かに僕は前世では十六歳で、リリアは現在十三歳なのだが。


「それはそれとして、クリス様がそのことを話してくれてよかったです。私が同じような状況だったら、とても耐えられるものでは無いと思います……気味悪がられたり、奇異の目で見られたりするのは、怖いですよね」


 リリア、いい子! こんなに心が綺麗な子を僕は前世では見たことがない! ……まぁ僕は友達があんまり(ちょっとはいたぞ! ←ここ重要!)居なかったから、案外周りには居たのかもしれないが。


「くれぐれも、誰かにこの話を話したりしちゃだめだよ? 母さんでもダメだ。リリアは怖がらずに話しを聞いてくれたけど、他の人がどんな反応をするか、わからないからね」


「かしこまりました。でも、イリーナ様なら笑って信じてくれそうですが……」


「それでもだ。物事には絶対なんてない。本当にそのとおりの反応が返ってくるとは限らない……、もちろん母さんが嫌いとかそういうものでは無いし、まぁいずれ時期を見て話すつもりだからさ」


 そう言って、僕は念を押した。するとリリアはクスリ、と笑って、


「なんだか、クリス様は凄く大人っぽいですね。まだ見た目は一歳なのに変な気分です」


(そりゃ僕のが年上だし!前世では!)


 それはそうだ。さっきも言ったように僕の方が精神的には年上のはずだ。その、ハズだ……。


 とはいえ、リリアも年の割に凄く成熟しているような気がする。僕は、思ったことをそのまま口に出した。


「リリアも、十三歳にしては凄く大人っぽいと思うよ。少なくとも前世で君くらいの年頃の子はまだずっと子供っぽかった」


 もちろん、体は年相応の発展途上である。しかし、女性らしさを示すものは、きっちり服の上からでも判るほどに成長していた。


 と、僕がそんな下世話な思考に陥っていると、リリアが頬を赤く染めて俯いていた。


「そんな…私が大人っぽいだなんて……ブツブツ」


 なにやらブツブツ呟いている。僕は何か変なことを言ってしまったのだろうか?


 僕が微妙な表情で彼女を眺めているとふと、我に返ったのか、最初にこなそうとしていた用事を思い出した様だ。


「あ! そうでした、クリス様のお召し物!」


 そう、僕の着替えである。その声に僕は、ジリジリと後ずさりを始めた。


「いや、着替えくらい自分で「まだ、赤ちゃんでしょう? それに貴族が使用人に着替えをさせるのは当たり前です! 任せてください!」する……」


「えっ、あの」


「さぁ、逃げられませんよ! クリス様覚悟してください!」


「いや、やっぱ自分で……アーーーーーッ♀」


 結局、手足が未発達でスプーンも満足に扱えない僕には、自分で着替えることが出来るわけもなく。


 リリアの手によって、今日も下着まで、取り替えられてしまったのであった。
















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