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何かすっごい適当ですね。それよりも私は今非常に綾乃と心境が似ています。文章書くのも得意ではないけれど好きだね。後学芸会、六年になったらまたやりたかった……。うちの学校も三年に一回。四年のときやったからもう来ないんだよね……。
赤碕さんは、今日は休んでいる。何か具合が悪いみたいだ。
赤崎さんはまぁほっといて、そろそろ練習に取り掛かろう。
「はい、今日は一の場面をやります」
島本恋雪先生の合図で皆は一斉に取り掛かった。
「主役はメインキャストの方へ集まってください」
メインキャスト、すなわち主役の二人のことだ。
『とある少女の物語』の主人公、藤崎梨花を演じるのは私、飯島佐織。
そして今回、転校生の男の子役を演じることになったのは……。
隣のクラスの大木藍斗君。彼も偶然ながら今年転校してきた男の子だ。
「藍斗君、宜しく」
「うん、宜しく」
ちなみに彼は私の弟、俊と一緒の塾に通っている。かなり頭がいい。
ちなみに俊は一昨日ストーカーまがいの俊大好き教師失格の教師、松井直子にキスを迫られた。あれは一生トラウマになるだろう。
まぁそんなことは置いておき。
今は練習に熱中するべきだ。
「そっちは、もうそろそろ本格的に取り組んだ方がいいね」
真帆の声。
私の親友の北野真帆は、裏方係兼舞台監督になった。つまり、リーダー的な存在。
舞台監督の役目は皆をまとめ、リーダーになり、更に皆に気を配り、今後の適切なアドバイスを下すというとても難しい仕事なのだ。
「で、メインキャストの人達とナレーターは、比較的に出番が多いので、慎重に練習に取り組んでください」
真帆は私を見てクスッと笑みを浮かべたが、すぐさま冷静な顔になって皆に指示を出した。
やっぱり彼女はすごい。真帆は性格も良いし、可愛いし、リーダー性もある。真帆はもう一人の天才かもしれない。
「次に、大道具係か……。大道具の人は、図工室からのこぎりとかマスキングテープ等を持ってくるので、少し待っててください。あ、誰か手空いている人いませんか?」
真帆の言葉は更によく通る。
「よし、練習始めようか」
「はい」
物語の大まかな内容を説明する。
藤崎梨花の母親の弟夫婦の所に至るまでの話はしたと思う。で、そのあとの話ね。
それから、弟夫婦はどんどん酒やパチンコに溺れていき、梨花は屋上から飛び降りようとした。
でもそこに、転校生の男の子、風上雄樹が現れ、梨花は雄樹の優しさに心を開き、事情を話す。だが雄樹は、そのことをクラス中に話した。
その事実と梨花の気持ちを力説した雄樹のおかげで梨花をいじめていた奴らは反省し、梨花を取り巻く周囲の問題に力を貸すことになった。
「『何をしているんだ?』」
藍斗君の演技力抜群の声。
「『貴方は……風上さん……?』」
「『何で屋上にいんだよ、何してんだよ。立ち入り禁止のはずだろ?』」
「『だって、私、私ぃ……』」
ん……? 私、案外泣き真似上手いんじゃないか?
って、私がいつも俊の泣く姿を見ているからか?
「『誰だよ……梨花さんを泣かせたの……。誰だよ……』」
藍斗君がボソリと呟く。うん、すっごくいい。
「『でも、風上さんだって、いつも私を遠くに見てたじゃない……。なのに今更そんなこと言うなんて、卑怯だよ。自分が正義のヒーローだって、酔いしれてんの?』」
「『ごめん……』」
藍斗君がまたボソリと呟いた。
「『俺、自分がいじめられるのが怖くて、ずっとやめようって言い出せなかった。本気でやめようって思ってたのに……。梨花さんのことが好きだってずっと分かっていたのに……』」
「『え?』」
そう、ここで雄樹は梨花に告白するのだ。ただ、あまりにも突然すぎる告白で、ちょっと聞き逃してしまったのだ。
「『何でもない……』……本当に何でもないってわけじゃないけど」
「へ……?」
今、アドリブ入れたよね? あからさまに今本当に何でもないわけじゃないけどって言ったよね? 私、ちゃんと分かってるよ?
「何でもないの?」
「うん、何でもないよ」
「よし、じゃあ再開ね」
綾乃さんの合図で皆がやろうとしたそのときだった。
「キーンコーンカーンコーン……」
チャイムが鳴った。
「あーじゃあね。私、ちょっとトイレ行くし、次算数でしょ? 少人数の先生、オバサン臭くてやなんだよねぇ」
真帆の声だ。舞台監督とは思えない間抜け声だったが、私はオバサン先生と聞いて松井を思い出して、ウゲッと唸った。
「次算数か……。うわっ、図形の問題とかマジ嫌だっ!」
私は図形の勉強の必勝法を考えようとした。
だが、またまた人の波に押されて、考える余地もなかった。
赤崎さんは次の日、登校して来た。
赤崎さんは惜しくも落ちてしまったから、大道具係と弟夫婦の子供役に就くことになった。ちなみに弟夫婦の子供役が出るのはほんの数秒の間だけで、残りに出てくるところといえば、最後の合唱のときだけだった。
ただ何でもかんでも人に押し付けてしまうため、ひどく皆から嫌われていた。
「はぁ……。ねぇ、ちゃんとやってよ赤崎さん。大道具係で皆に押し付けてたら駄目じゃない」
「あ、真帆ちゃん。……舞台監督だからって調子乗んないでよ! 大体、舞台監督は一番仕事やんなくていいんじゃない?」
「はぁ? サボってる人には一番言われたくない一言ね」
赤崎さんは何もやっていない。
仕事してないのだ。彼女は。
「もう、私のこぎり使って、汗出てるんだから!」
そう言って赤崎さんは向こうの方へとかけて行った。
「駄目だ夏実ちゃん……」
私は赤崎夏実の方を見て、はぁ…と溜息をついた。
「ちょっと顔が可愛いのをいいことに……。性格が全然可愛くないんだよ、ベーッ!」
「真帆の方がよっぽど可愛いよ」
「そう……? そう、なのかな……」
「うん。そうだよ? 私、真帆の顔見てると、自分が真帆だったらどんなだったんだろうかって想像しちゃうよ」
「ありがとう。でも、私、ちょっと言葉の意味分からなかったかも」
「ん……。そう?」
私、俊と似てるのかな……?
その次の週に……異変は起きた。
「あれ……? 大道具が全部消えてる!?」
真帆の発した言葉で、皆が「えぇぇぇぇぇぇぇぇーーーっっっっっっっ!!」
と悲鳴を上げた。
「そんな……俺達がせっかく作った学校と、マンションの模型が無しにされるなんて……」
男の子の真っ青な悲鳴。
「昨日塾休んで仕事に惜しんだのに……」
いやそこまでしなくていいと思う……。
けれども、本当に誰がやったんだ?
常識的に考えるのなら、誰かが持ち去ったとか、先生が点検の為に持っていって検査してるとか? 耐震性とか、脆くないかとか……。
そんなことを考えていると、先生がひどく慌てた様子で体育館に現れた。
「先生、大変なんです!」
「それが、大道具が無くなってて……」
「私達の努力が水の泡になっちゃう!」
女の子達が一気にまくし立てる。
「えぇ、そのこと知ってるわ。今朝見に行ったら大道具がなかったのよ。昨日まではあったはずなのに……」
「先生が持っていったんじゃないでんですか!?」
「先生、持っていってないわよ」
「そんな……」
ここで大道具探しが始まった。
こんなことは一日で終えてしまわないと……。
「誰かが持っていったとは考えにくいから、学校中をくまなく探そう!」
2組のイケメン先生の指示で、皆は学校中をくまなく探した。
教室、音楽室、家庭科室、図書室、理科室、図工室、校庭、算数少人数、給食室、体育倉庫、準備室、トイレ、女子更衣室、男子更衣室……。ちなみに更衣室は男女別々に探した。




