第2話
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朝岡泰助は、部下三人と検視を連れて富岡玲人の住んでいたアパートへやって来ていた。泰助は、予め受け取っていたアパートの鍵をドアノブの中央にある鍵穴へ差し込む。そして、何の躊躇も見せず、土足で中へ上り込んでいく。部下たちも後ろに続く。
「そんじゃ、始めてくれ。」
泰助の合図で、部下や検視が部屋のあちこちを捜索し始める。
富岡玲人は、昨日解決された西尾高校襲撃事件の犯人の一人であった。彼は、事件後遺体として学校から発見された。警察医によると、何者かに射殺されたらしい。状況からして、何が起きてもおかしくないが、自分の持ち込んだ拳銃で撃たれて死ぬなんて、何ともみじめな死に方だ。と、泰助は犯人の死に方に呆れる。
泰助の合図から一時間が経過しようとしていた。しかし、これといって新たな発見につながるものは見つからない。
そもそも、なぜ解決した事件のことを調べているのか。それは、犯人の動機や事の詳細をより明確にするためでもあるが、泰助には他の目的があった。それは、共犯者あるいは裏でバックアップしたであろう誰かを探すための手掛かりを見つけ出すためであった。
今回の事件には、不可解な点がいくつも見受けられた。
事件のきっかけともなった爆弾の作り方。爆弾の配置。拳銃の入手…。どれをとっても、犯人たちだけでは到底不可能な犯行であったと、泰助は資料から読み取り、今回の捜索に名乗り出たのだった。
きっと、裏で事件を操作した者がいる。泰助には、その直感ともいえる感覚がこの事件に感じ取れたのだ。
腕時計に目を落とす。時間には余裕があるが、まだ見ぬ真犯人の存在が、泰助の気持ちを焦らせる。
「神山!ちょっとの間、ここを任せる。白井!一緒に来い。」
神山の返事が聞こえるか聞こえないかというタイミングで、泰助はアパートの玄関を出ていった。不意に呼ばれた白井は、それを見ると作業を放り捨て、慌てて玄関へと駆けていった。