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あたしに出来る事

何とか、怪我だけはせずに終われたけど。そのせいで、本人は自信がついたみたいです……。「ボク、やれば出来るね。これからも手伝うよ」と、言ってました。怪我はしなかったけど、やってる間に一切の進歩が見えなかった気がする……。

やっていればいつかは、上達するよね。いつかは。


切り終わったにんじんとじゃがいもは、スープになり、パンとサラダがついた夕食になった。

そろそろ、兄さんも食堂に来るだろうから、席を確保しようとリリとムムに言っていたところ。黒づくめで長身と分かりやすい出で立ちの兄さんが入ってきた。


「あ、こっち!兄さん」


食事時だからそれなりに混んできている中では、チビのあたしは精一杯腕を伸ばして、爪先立ちをするくらいじゃなきゃ気づいてもらえない。それでも、気づいてくれた兄さんがこちらに歩いてくる。その隣には、彼もいた。


「あっ。二人だったんだ」

「途中でばったりと会ったので、そのまま一緒に来たんです。ご一緒してもいいですか」

「えっと、あたしはいいけど……」


ちらりと、後ろにいる二人を見る。


「別に、いい」

「いいよー」


あっさりと受け入れた二人。そのまま夕食を受け取り、五人で席につく。


「………」


食事の前には、みんなで創造神に祈りを捧げる。

創造神は、この世界全土で信仰されている唯一無二の神様。この世界を創造し、生命を見守っていると伝えられており、この神殿でも奉られている。

が、この神殿では、“封印の守人”を主に置き。神は二の次にされている。だからといって神をないがしろにしているわけではなく、むしろ、守人を見つけるための占いは神によるものだっと言われている。

そのせいで、他の神殿とは違った部分がここには多いらしい。


「食べよ」

「うん」


できたてほやほやのスープにスプーンを入れて、じゃがいもを掬う。できたてで、熱々のじゃがいもはただでさえ熱いから、猫舌のあたしにはよく冷まさないときつい代物。息を吹き掛けて用心しながら口に運ぶ。

素朴で、暖かくておいしい。


「おいしいですね」

「今日のスープの野菜はボクが切ったからね。おいしくないわけがない!」


自信満々に言うのを聞くと、さっきまで切っていた姿を思い出す。上手くはないけど、一生懸命に切っていた姿。

結果出来上がったのは、他のより大きかったり、小さかったりしている野菜たち。


「そうですか。おいしいですよ」


笑って言う彼の髪や服は所々汚れていて、さっきまで剣を振るっていた事が伺える。


「そうだ。リリ達は何を習ったのさ」

「………っ」


それまで黙って食事をしていた、兄さんのスプーンを持つ手が、震えた。

あたしがそれにいち早く気づけたのは、兄さんがあたしの目の前に座っていたから。


「兄さん……?」


そう声を掛けるが、兄さんは「何でもない………」と言うだけだった。


「わたしは、まず初代の“巫女姫”だった人の事教えられた。なんでも、封印にはその人の癖とか性格が出るかららしい」

「うんうん。魔術には、それぞれの癖とか性格でるからね。他人のに手を加える時て、相手の事理解してないとできないからね。面倒だよね」


わかるわかると、頷く顔は本気でわかるって伝わってくる。ほんとに魔女なんだ。


「初代の“巫女姫”て、どんな人だったんでしょうね。伝えで聞いているものには、あまり詳しくは話されてませんから」

「単純な人、らしい。封印、ちょっと教えられたけど、なんかわかった気がする」


それは、リリが単純て事になるんだけど、気づいてないよね。


「ほうほう。師匠もそう言ってたな」


師匠?て、誰だろう。聞こうかなって思った時には、


「ウィルはー?」


先に進んでいた。


「僕は……、そうですね。主に魔物の事を学びました」

「古い魔物についての書とかあった!」

「えぇ、ありましたよ。とても、古いものらしいですよ」

「おおー!!ボクもみたいなー!そういうのて、なかなか見れないんだよ。たいがい、国単位で管理されてるからさ、見れる機会なんて一生にあるかないかなんだよ。いいなー」


そういうのがここに有って見れるのは、やっぱりここがどの国にも属さない独立地だからだろうな。“カイル騎士”に選ばれた人に魔物の事を教えるためにそれがあり、国の一部であれば許可やら手続きなんてのを取らないといけなくなるんだろうな。

魔物についての書物はあまり出回ってないわけじゃないけど、事細かに記されているのなんてそうはない。子供のうちには魔物についてある程度は、教えるのが決まりだし。

そして国で管理されているものは、ほとんどが古く、魔物について細かく正確に絵姿まで載っているらしい。先人達が残した、大切な記録だ。


「司教様などに相談してみたら、あんがい見れるかもしれませんよ。ギルシアさんは、どうでしたか」

「………俺は」


少しの沈黙。周りでは同じように食事をしながら、談笑する人達がたくさんいる。

一瞬、兄さんはリリに目を向けると、


「………すまない」


食事もそこそこに兄さんは立ち上がり、そのままどこかへと歩きだした。


「兄さん!?」


あたしは慌ててその後を追おとしたが、止められる。


「マウさん」


左隣に座っていたムムから腕を掴まれ、ウィルティールさんから制止の声を掛けられた。

それぞれに顔を向けると、ムムは兄さんの出ていった扉を見ていて、ウィルティールさんはあたしを見て首を振る。


「マウ、座って」


いつもと違って強めの口調のリリに、しぶしぶしたがう。


「………」


どうしたんだろ、兄さん。何か思い詰めていたようにも見えた………。


「マウさん。先程僕らは、普通・・簡単・・に自分達の役目を訊き、話しました。でも、ほんとは、簡単なものじゃないんですよ」


伏せられた睫毛は長い影を作り、ネフライトと同色の瞳が陰る。


「知れば、それがどんなに難しく、恐ろしい事かわかります。今まで、知っていた伝えが現実味を纏い僕達に重くのし掛かってくるんです。……僕は魔物の生態を知る度に……恐くなりました。初代ですら無傷でなかたのに………僕なんかで………」


ウィルティールさんの机に置いていた手が小刻みに震え、それを隠すようにもう片方を被せて机の下に下ろした。


「だから、きっと彼も……自分の役目に思うところがあるんでしょ。マウさん、今は、一人にしてあげましょう」

「………わか、りました」


正直、四人がどんなものを背負っているのかはわからるようでわからない。知っているなんて言っても、人の気持ちはわからないから、どんなものを背負って、どんな気持ちでそれと向かい合ってるんだろう。

あたしなんかに、何が出来るんだろう。


「ありがとうございます、教えてもらって。こんなあたしに……何が出来るんでしょうね……」


目を伏せると少し冷めたスープが目に入る。


「マウには、マウにできる事が、ある」

「そうだよ。大丈夫!」

「ちょっとした事でも、人はうれしいものです。考えすぎないでくださいね」


三人、それぞれの言葉は優しい。

うん、うじうじはやめよう。


「ありがとう。リリ、ムム、ウィルティールさん」

「お礼なんて、いらない」

「ボクらは、思った事を言っただけだよー」

「気にしないでください。それと、ウィルティールだと長いのでウィルと、愛称で呼んでください。ムムさんはすでにそう呼んでますし 」

「………じゃあ、改めてウィルさん」

「はい」


三人がいて良かった。なんか元気出た。

ちょっと冷めたスープを飲んで思い付く。そうだ!


「兄さん、ご飯あんまり食べてないから、何か持って行こう」

「それいいじゃん!」

「たぶん、何か残ってるはず。食堂に聞いてみよう」

「……サンドイッチなんかだったら、冷めても食べれますね」


小さな事でも、何か出来る事があるならあたしは、それをたくさんやろう。まずは、兄さんにサンドイッチを作ろうかな。

な、なぜ軽くシリアスになった………!

気づいたらシリアスが若干入ってました。おっかしいな、ウィルも加えて食事して、愛称呼びさせるだけだったのに………。

まあ、思わぬ方向に行くのはいつもの事ですけどね。←


そういや、初代の方々ですが、結構設定考えてあったりしますよ。本編で小出しにしていきたいですね。


後、ネフライトは検索すれば出てきますから、興味があったら見てみてください。成分?によって色が変わるらしいですよ。作者は緑が濃いのが好きです。


そして、お知らせです。

来週は投稿できるか微妙です。

テスト勉強と修学旅行の準備がありますので。すいません。

何かありましたら、活動報告に書いておきます。

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