女の会話はコロコロ変わるもの
今年、初投稿ですね。
ほんとは先週投稿するつもりでした……すいません。
待ってた方、ありがとうございます!!
「うまいわね~」
「そんな事、ないですよ。人並みくらいですから」
今あたしは、夕食の準備中。
周りには、同じくじゃがいもの皮を剥く先輩方。
「でも、マウちゃんはさ。だいたいの事はそつなくこなすし、昨日来たばかりなのに頼りになってるし。掃除も洗濯も上手いし、将来は、良いお嫁さんになるわー」
「いえ、そんな。これは、慣れですから。慣れたら誰にだって出来ますよ」
そう、慣れ。孤児院の時からお手伝いして、兄さんとの二人暮らしではあたしが家事全般をしていれば、上手くならないはずがない。
「でも、慣れって言ったて、上達しない人も中にはいるものよ」
「そうね。でも、慣れるのもある意味怖いものよね。初めは、教えてもらいながら見よう見まねでやっていた事が、いつの間にか自然と考えずに出来る事に気づいた時とか。驚かない」
「うんうん。私も最初はじゃがいもの皮剥きとか苦手だったのにさ、今じゃこれよ、これ」
そう言った手元では、一つのじゃがいもがあっという間に剥かれていた。そのまま、次のじゃがいもに移る。
「まあ、出来て困ることじゃないし。むしろ、料理上手とでも呼びなさい!」
「はいはい。料理上手と言えば、リリはパン作りは得意よね」
「あれだけ、おいしく作れるのはリリだけよね」
「……リリて、パン作りそんなに上手いんですか?」
「上手いてもんじゃないわよ。簡単なパンでも、驚くほど絶品に仕上がるんだから」
知らなかった。リリがパン作りがそんなに上手いなんて、絶品と言わせるパンてどんなだろ、食べてみたい。
「ちょうど明日は、リリの当番の日じゃない」
「それは、楽しみね」
「何の話してるんですか」
リリのパンで盛り上がっていた所に、洗い終わったにんじんがたくさん盛られた入れ物を持って来たロアンナさん。
次は、これを剥くみたい。
「リリのパンがおいしいて、話よ」
「ああ。まあ、人には一つくらい得意な事がありますからね」
「そうね。それに、ずいぶん昔からやってるから」
「えっと、八才の時からだっけ」
「本格的にやったのはね。手伝いくらいならそれよりも、もっと前よ」
「昔から、神殿の手伝いはやってみたいだからね」
どんどん進んでいく中で、話についていってないあたしに気づいたロアンナさんが、教えてくれた。
「マウには言ってなかったわね。リリは生まれも育ちもここ、神殿よ」
知らなかったわけではないけど、本人からも誰からも聞いたわけではないから、何とも言えなかったのだ。
先輩方がロアンナさんの説明に続ける。
「リリは元々ここで働いてた母親から生まれたんだけど、すぐにその人が亡くなちゃたらしくてね。父親もすでにいないうえ頼れる親戚もいなくて、見かねた司教様が神殿で引き取る事にしたらしいの」
「それからここで、十六年育ったわけ」
「…そう、ですか。…でも、あの、本人がいないのに勝手に話しても……いいんですか……」
結構ペラペラと話していたけど…ここに本人はいない。なのに本人の了承もなしに勝手に話してもいいのだろうか。複雑な自分の出自が、勝手に知られるなんて嫌な人は嫌なはず。あたしの場合は自分の事は別に構わないけど…。
「ああ、大丈夫よ。あの子、気にしてないから」
「それにさ、マウちゃんには、知っていて欲しかったのよね。ここにはさ、ほとんど二十代後半から上しかいないでしょ。だからさ、リリと年の近い子て今までいなかったのよね。私たちだと友達とはまた違うから、だから、リリに友達ができたのは私たちもうれしいのよ」
「ロアンナも若いちゃ若いけど、ギリギリ二十代前半だからね」
「しれっと、人の年バラさないでください」
「いいじゃない。一応、若いんだから」
流されて、友達になっようなものだけど……そう言われたら、それでもよかったのかも。
リリは人の話を聞かないで行動するタイプだから、これからたくさん振り回されていくんだろうな。でも、いつかそれが振り返れば楽しい思い出に変わっているんだろうな……。
「そういや。“封印の守人”。全員そろたけどさ、みんな美形よね」
やっぱり、女の人の会話はくるくる変わる。リリの出生を話していたはずなのに。でもあたしも、普段こんな風なんだろうな。わからないけど。
「そうそう。みんなそれぞれ系統の違う美形でさ。あと、何より若い!」
「若さには勝てないわー」
「ねぇ、マウちゃんは、ギルシア君とウィルティール君。どっちが好み」
「えっ!」
「いやね、マウちゃんが困っているでしょうが。でも、気になるわね」
唐突に突入した恋バナ。
好みて言われても……。
「ギルシア君は……寡黙で凛々しい騎士風。ても、マウちゃんがいると過保護なお兄ちゃんかな。マウちゃんがいなかったらちょっと近づきにくかったかもね」
たしかに兄さんは、人によっては口数も少なくなるし。鋭い目や長身で勘違いされやすいし。でも、兄さんは優しい人だからちゃんと話せばわかってもらえる。
「ウィルティール君はね…まあ、王子とか貴公子とか呼ばれるタイプかしら。正統派イケメンて感じ。まあ、モテ男よね」
あたしも最初会った時、その感想を頭の片隅で抱いた。まだ、会ったばかりで美人な人だなては思うけど……
「う~ん。やっぱり、兄さんは兄さんだし、ウィルティールさんは会ったばかりだから……好みと言われてもピンとこないです…」
「そっか。ごめんね。なんかそんな感じはしてたんだけど……。正直恋とか興味ないでしょ」
「うっ…はい。ごめんなさい」
「いや、いいて。恋バナはやめて、別の事話そっか。そうね……今度の“魔女”に選ばれたあの子。魔女なだけあって不思議な子よね」
不思議な子。
そう、まるであたしが人と違うものを持っているのに気づいているみたいで、あの人と同じ感じがする……。
「不思議だし、感じはマウちゃんより幼くも見えるし」
ムムは、あたしより二つ上。リリの一つ下だと本人が言っていた。あたしよりは背は高いけど、子供ぽい言動なんかで実年齢より下に見える。
昨日出会った彼女は、その後まるであたしに謎の発言をした事なんてなかったように無邪気に話して、一緒にご飯まで食べた。
リリと兄さんは、得体の知れないものを見るように警戒していたけど、あたしはそれほど警戒はしなかった。年相応というよりも若干幼い笑顔を満面に浮かべいつでも楽しそうな姿はただの少女に見えたから。ちょっとはあの発言が気になるけど。仲良くなるのは楽しいと思う。むしろ、がんがんあっちが迫ってきてる。
なんだか、リリとムム二人がいるとあたしはすごく振り回されそう……。
気合いいれて相手しなきゃ。
そんな二人はというか、守人の四人は今それぞれ講習を受けてる。
兄さんは、“バズリット騎士”としての役目と封印の蓋であるバズリット騎士の愛剣について教わっているらしい。バズリット騎士の剣は、大剣とも細身の物とも言われているけど……いったいどんなのだろう。
ウィルティールさんは、“カリル騎士”としての役目と魔物の生態、そしてひたすらに剣の腕を磨くらしい。修練の成果が、どうか実ってくれると祈っている……。
リリは、“巫女姫”としての役目と封印の仕方を教わるらしい。封印てどんな風にするんだろう………そう言えばもう少しで、その役目あたしになったかもしれなかったんた………。
ムムは、“魔女”としての役目を教わるらしい。簡潔かつ重要なのが“魔女”らしい。
そう考えていくと、四人と普通に話していたけど、すごい人達なんだな。実感はわきずらいけど。世界の命運を握っているんだもんな。
あたしとは、何か違うよね……。
「……マウ」
「マウ!」
声の張りに驚くほど、差がある声が後ろから聞こえた。
もう、そんなに時間が経っていたんだ。二人の講習が終わったんだろうな。
「お疲れ様」
振り返った先には、やっぱりな人物が立っていった。
いつも通りの眠そうな雰囲気のリリといつでも楽しそうなムム。
「マウはここで何してたの」
「皮剥き。二人はもう終わったの」
「うん、終わった。わたしも、手伝う」
「あ、でも、もうないよ。にんじん」
おしゃべりしながらもちゃんと剥いてたから、にんじんはもうない。
「なら、この剥いたの、切ってくれない」
皮を剥かれ、こんもり盛られたにんじんとじゃがいも。これを今から切っていくらしい。数は多いけど、孤児院でも食べ盛りの子がたくさんいたから作る量が多いのは慣れてる。やっぱり、慣れだね。
「じゃあ、リリ。切ろう。ムムは、どうするの」
「う~ん。料理は得意じゃないんだよね~。でも、やる」
リリとムムも加わって、今度は切っていく。ムムは宣言通り、危なっかしい手つきで切っていた。ひやひやしたのは当たり前。
神殿の先輩方、私はお姉様方と呼んでいます。
二十代後半て、時代的に嫁ぎ遅れかも……。お姉様方に、それ言ったら絶対怖い……。
後、年齢的には、リリより上の皆さんでも十何年働いてないと、リリの後輩になるんですよ!一桁の時から、お手伝いしてたので。
読んでくれた方々、ありがとうございます!
来週も投稿出来るよう、頑張ります……たぶん。