異界の扉
過去に異界の扉を通った人がいる……
悪い予感しかしないけれど、聞かずには居られない。その人たちは、自分たちの世界へ戻れたのか。
「その人たちは……戻れたのでしょうか」
「前任者の話では……あー。食われた残骸を見付けて気付いたそうだ。さっきも言ったが、人間には通常、異界の扉は見付けられんし、くぐれもしない。拐われ、もののけと共に通らんかぎりはな。だから、もののけが人間界に行く事を監視はしても、入ってくる方は余り重要視してなくてな」
ガーーーン。
光葉さんに助けて貰えて良かったよー。でなきゃ、妖怪に見付かって食べられてたよーー!
「というわけで、サクラを元の世界へ戻してやりたいんだが、確実な方法は分からん。まあ、もののけと共になら通れるだろうから、試してみるか。
異界の扉は毎日、日没前の逢魔が刻に開く。だが、この異界の何処に開くかは決まっていない。
もののけには大体何処に開くかは感じることが出来るから問題はないのだがな」
光葉さんが送ってくれることになった。
今日の扉の出現場所は葛葉の杜周辺だという。
このままだと危なくて外に出られないから、と簑を貸してくれた。
簑って、初めて見た!!
こんなの昔ばなしの絵本でしか見たことなかったけど、藁で編んだマントってとこ?
頭も出ちゃうし、何でこれを貸してくれたのかよく分からないけど、有り難く貸してもらうことにする。
「では、行くか」
簑を着けたサクラを横抱きにすると光葉の背中からバサッと黒い翼が出た。