河童の宝物 7
「綺麗な石だね〜」
モモちゃんの手のひらに載っている石は、ぽわんと柔らかく発光していた。
「えへへ」
モモちゃんは宝物を褒められて嬉しそうにはにかむ。
隣の部屋で布団を敷いていた、お兄ちゃんの太郎くんと光葉さんも近付いてきた。
光葉さんもモモちゃんの手のひらの石を覗き込んでいる。
「妖石か」
「妖石?」
「もののけが己の妖力を結晶化させて作る宝石のことだ。それに籠められた妖力で誰が造ったものか判るくらいで、その石自体には大した力もない。子どもの妖力を操る練習で造る遊びのようなものだ」
そういって、光葉さんがグッと拳を握ると幽かに手の内が淡く光り、次に手のひらを開くと、親指の先ほどの大きさの透明な赤い石が入っていた。
光葉さんはその石をモモちゃんの手のひらに乗せた。
「ボクも!ボクもやる!見ててね」
太郎くんも両手を胸の前に合わせて、ギュッと眼をつむる。
……なかなか手のひらは光らない。
「うーーん」
肘がだんだん上がってきて肩に力が入っているのがよく判る。
「妖力を手のひらに集めて、塊になるようなイメージで……」
光葉さんのアドバイスを受けながら、太郎くんはさらに精神集中する。
漸くぽわんと小さく光り……
「やった!!」
手のひらを開いてみると、小さいビーズのような大きさの青い石が入っていた。
「おかあさんに見せてくる!! 」
太郎くんは土間にいるおかあさんに褒めて貰って、とても嬉しそう。
「サクラ……この石から猫又の妖力を感じる。」
「ほんと?ねえ、モモちゃん、この石をくれた猫ちゃんて、黒くておめめが緑色だった?」
ドキドキ……
翠を見付ける手掛かりになるかも知れない?
「うん」
やっぱり!!
「助けてあげた後、どこに行くとか言ってた? 」
ドキドキ……
モモちゃんは首を傾げた。
「わかんない」
ガックリ……
そうだよね、そんなにうまい話は無いよね。
「一つ考えていたのは、ここから1日ぐらいの距離にある『猫又の里』へ行ってみようと思うんだが……」
「それいい!! 賛成!! ありがとー、光葉さん」
猫又が集まって生活しているそうな、そこなら翠がいるかも!!光葉さんの提案に飛び付いた。
いや、実際光葉さんに抱きついた。
明日は『猫又の里』に行くことが決まった。その夜は、もうすぐ元の世界に帰れるかも知れないってワクワクして、なかなか寝付けなかった。




