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異界の扉  作者: 紅葉
異界の扉
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河童の宝物 6

ううう……身体が暑い。


 なんだか、頭も痛いし……私、どうしたんだっけ?


 また気を失ってたんだ。こっちに来てからよく気絶するなぁ。


 サクラが目を開けると、どこかの家の中にいるようだった。

 光葉さんちじゃない。……少なくてもサクラの知っている場所ではなさそうだった。

 

 傍には心配そうな顔で覗き込んでいる光葉さんの顔。


 河童の男の子と女の子。それに、男の子によく似た女性……彼女もおそらく河童。

 きっと男の子のおかあさんなんだろうな。


 「気がついたか」


 目が覚めたことに気がついた光葉さんは、優しい微笑みで頭をなでてくれた。


 ううう……絶対怒られると思っていたよ。


 心配かけてごめんなさい。


 助けに来てくれてありがとう。


 光葉さんも無事で良かった。


 子どもたちも無事で良かった。


 ……あれ?『かくれ蓑』どうしたんだっけ?


 言いたいことがたくさんあるのに、喉がカラカラでうまく言葉にならない。

 もどかしくてポロポロと涙が零れた。

「泣くな、サクラ。守ってやるから。必ず人間界へ送ってやる」


光葉さん、違うんです。

でも、励ましてくれてありがとうございます。





河童の夫婦による治療と看病のおかげで2日もすると、サクラはいつも通りの元気を取り戻した。


子どもたちを助けて貰ったお礼にゆっくり滞在して行ってと河童の夫婦から言って貰ったが、光葉さんと相談した結果、明日の朝発つことにした。


それならば、今日はゆっくり……という事で4日ぶりのお風呂です!

熱が下がってから、奥さんに身体を拭いて貰ったりはしたけど、やっぱり

お風呂は格別!!


そういえば、異界に来てから初めてのお風呂かも?ひぃ〜乙女としてあり得ない!!考えないでおこう……


河童さんたちのお風呂は各家庭にもあるんだけど、共同の露天風呂の温泉もあった。せっかくなので、奥さんと妹ちゃん(二人は兄妹でした)と温泉に来ました〜!!

テンションあがるね。


ザァっと身体を洗って、湯船にチャポン。温泉の熱がじわじわ身体に染み込んで、寝込んでいたときの身体のダルさや疲れがお湯の中に溶けて出ていくよう。

石を組んで造ってあるその温泉は、周りは大自然。

眺めはいいけど、誰かに覗かれたりしないのかな……って不安に思う程の解放感。始めはそんなロケーションに服を着たまま入浴するのかと思ったけど、妹ちゃんも奥さんもぱっぱか脱ぎ出す。あまり、そういうところ頓着しない種族のようです。


まあ、私達以外に今は誰もいないようなので、私も脱ぎましたよ。郷に入っては郷に従えって言うしね。


脱いで初めてマジマジと見た肩の傷。大きな大きな猫に引っ掛かれたようなその傷跡はかさぶたが生々しい。

……いつか治るだろうか。



『お約束』のように男の人が入ってくる事もなく、無事入浴終了。


今夜は妹ちゃんと奥さんと三人で寝ることになりました。


河童のお医者さんちは玄関を入って直ぐに土間。そこには竈や水瓶があって、つまり台所。台所から一段上がった板張りの居間と寝室の二間続き。それに、離れに診療所と薬草庫。これは母屋の土間からも繋がっていた。


昨日までは私が居間で臥せっていたので、看病してくれていた奥さん以外は寝室で4人寝ていたそうなんだけど、今晩は女の子チームと男の子チームに分かれて寝ることになりました。


本当はずっと力の強い光葉さんは、

一人で客間を使って貰わなくちゃいけないくらい凄い妖怪らしいから、集落の長老の家に泊まって貰うつもりだったのだそうだけど……断ってお医者さんちに泊めてもらったみたい。


お布団を敷いて、ゴロンと横になると、妹ちゃんが、「おねえちゃん、モモのたからもの見たい? 」と訊いてきた。

その手は『宝物』を包んでいて、目はキラキラ。


「うん。見たいよ。見せてくれるの?」

と、訊けば満面の笑みで手の蕾が綻んだ。


ーーーー緑色の光る石。

確か、猫を助けて貰ったんだっけ?


その緑色は『翠』の瞳を彷彿させた。



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