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異界の扉  作者: 紅葉
異界の扉
13/47

河童の宝物 3

「えーん、えーん」


森の中から微かに女の子の泣き声が聴こえてきた。


「泣くなよ。一緒に探してやるから」

今度は男の子の声。


どうしたのかな。


小さい子どもが泣いてると気になってしまう。


光葉さんに心配させてしまうから、この場所からは離れられないしなぁ……


やがて目の前に現れたのは、人間の子どもでいったら5歳くらいの男の子と3歳くらいの女の子。二人とも緑色の肌で指の間には水掻きがあった。

うん。もののけよね。


女の子の方が、しくしく泣いていた。


「どうしたの? 」


声をかけてみれば、二人は怯えた顔をしてキョロキョロする。


そっか。簑を着たままだった。

声だけ聴こえたら、そりゃ不気味だよね。

胸の前に結んである簑の紐を解いて手に持つと、二人は更に驚きの顔をする。


何もないところから姿が現れたら、そりゃ〜驚くよね。


「おねえちゃん、げんじゅつつかい? 」


女の子の方が、目をまん丸くして尋ねる。

男の子の方は、女の子を庇うように前に出て警戒した顔で睨んできてますよ。

なかなかの紳士ぶりです。


「あ、いや。幻術使いじゃないよ。ところで、さっきどうして泣いていたの?」


迷子かな?おかあさんとはぐれた?


「宝物を無くしちゃったのーー」


思い出した女の子は、またうりゅ〜とつぶらな瞳に涙を滲ませた。


「宝物ってどんなの?」


「緑色の光る石。猫ちゃんに貰ったの…… 」


昨日河原で溺れかけてた猫を助けて貰ったその石は、大事に手に握っていたらしい。

今日も河原で遊んだあと、森を抜けて家に帰る途中に無くしたらしい。

河原を出発したときには持っていたらしいから、森の入口付近……つまりこの辺に落ちている可能性が高いみたい。


一緒に探してあげたいけど……。


勝手にここを離れて、これ以上光葉さんに心配掛けられないしなぁ……。


と思いつつ……直ぐに戻れる距離をウロウロ、下生えをガサガサしてみる。

二人も一緒になってその辺をガサガサ。


ガサガサ


ゴソゴソ


不意に下生えの中からピョイと出てきたのは、小さい小鬼ゴブリン

20センチくらいしかないんだけど、その腕に緑色の光る石を抱えて走り去ろうとしていた。


「あ!!」


三人が声を揃えた。


まてーー!!


三人でちょこまか走り回る小鬼を追い掛ける。

ちょうど倒れた大木が道を塞いでいるところに追い詰めた!


逃がすか!


「そっちから廻って!挟み撃ち! 」

足の速い男の子に指示を出す。

意味が伝わり、即座に反対方向に駆け出す。

女の子もおろおろしながらも、退路を塞ぐ。


「ギャワ!」


連携プレーで、何とか小鬼を捕まえることに成功した。


やったーー!!


さっきまでのお互いの警戒心はどこへやら。三人で飛び上がり喜ぶ。


おっと。石は返して貰うね。

小鬼の手から石をつまみ上げると、女の子の掌に渡す。

小鬼が睨んでくるが、小さくてあんまり怖くない。他人の物盗るのが悪い。


そのまま小鬼を握っていたら、それまでモゾモゾと逃げ出そうとしていた小鬼の動きが止まった。


ん?


と、前をみれば今度は大きな毛むくじゃらの妖怪が近づいて来ていた。

子どもたちも、地面に縫いとめられたように動けないみたい。


毛むくじゃら妖怪が大きな口からヨダレをダラダラ流しながら近づいてくる。

「くくく……河童のガキと人間の娘か……。どっちから食うかな…… 」


毛むくじゃら妖怪は真っ青になってガタガタと震えている女の子の方に襲いかかる。


そうだ!あの短剣!!


小鬼を緊張の余りギュウギュウ握っていた手を開いて、光葉さんから持たされた短剣を両手に握る。

解放された小鬼はグッタリしていたけど、ごめん。まずはこの状況を何とかしなきゃ。


両手に力を入れて、思いっきり毛むくじゃら妖怪の背中に突き立てる!!


「ギャアーー!!」


毛むくじゃら妖怪が悲鳴を上げた。

眼にギラギラとした怒りの感情をたぎらせてサクラに襲いかかった。





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