河童の宝物 2
光葉はサクラを抱えたまま、黒い森の中に降り立った。
頭上では、さっき飛ばされたもののけたちが再び集まってきて、ギャアギャアと騒いでいる。サクラを探しているようで、ゾッとした。
「さて、どうするかな」
上にいるもののけたちを静かにさせるのは光葉にとっては容易い。しかし、ここにサクラを一人で居させることに躊躇いがあった。
サクラは自分が何も役に立てなくて、守られてばかりのお荷物になっていることが辛かった。
「私にも何か力があればいいんですけど……例えば魔法とか剣を使えるとか」
……我ながら、アニメのような発想だとは思うけれど。
っって、光葉さん、そんなにまじまじこっちを見ないで下さい。ごめんなさい。言ってみただけです。そんなの使えるわけないですよね。
選択授業で剣道はやってるけど遊びみたいなものだし。実際渡されても扱える気がしません。
せめて人間の匂いや気配も消せたら足手まといにはならなくて済むんだけどね。
「代々のお館様に嫁いで来られた人間はこちらの世界に来たんですよね」
彼女らは、食べられたりしていない?
「彼女らは妖狐の一族が護るし、契りを交わせば狙われる事はない。あんな奴らだが、妖怪の中じゃ一目置かれる存在だ。」
あまり参考には出来なさそうでした。
「こう、人間の匂いを消す『妖怪印の香水』とか。あったら面白いんですけどね」
お空では、まだギャアギャアと騒いでいます。いい加減諦めて欲しい。
「仕方ない……ヤるか。」
光葉はいつまでもお祭り騒ぎの様子を見上げて、はぁーーと一つため息をつくと「そこを動いてくれるなよ」といい置き、一応の護身用にと短剣をサクラに渡すと、もののけたちをお掃除するために鮮やかに飛び立った。
サクラに渡した短剣より少し長い日本刀のような剣の鞘を抜くと、妖怪の群れの中をひらりひらりと軽やかに舞う。
長い爪や牙、口から吐く火の玉で光葉を攻撃するもののけもいたが、光葉の敵ではなかった。




