4話 「光の竜」
「見事だ・・・。我が力、汝に授けよう」
その言葉と共に現れた光が俺の中に入ってくる。・・・これで俺に竜神の力が?その割には何かが変ったって感じはしないのだが??
「変化がわからんと言いたそうな顔だな。・・・そもそも汝は力を得ただけでいきなり強くなるとでも思っていたのか?」
ち、違うのか!?
「ふむ、汝とはたっぷりと話がしたいところだが残念ながら時間がない。簡潔に説明しよう・・・汝の人としての肉体には我が力は大きすぎる。ゆえにその力は汝の中で眠りについているのだ」
・・・ということは
「使えないと言う事か?」
「今すぐに・・・と言うのならな。眠っている状態でも多少は汝の体は強化されるだろうが、本来の力には程遠い。後は汝が眠りし力を起し鍛えるのだ。その力を腐らせるも我以上に大きく育てるも・・・好きにすればいい」
竜の力・・・かって世界を救った偉大な力を俺が育てる。ただ貰うよりもより大きなものかもしれないな。
「そうか・・・わかった。ありが!? お、お前・・・体が!?」
ナイフをつきたてた俺が言うのもなんだが(ナイフは回収済み)竜の石像はどんどん崩れていく。それに鼓動するように洞窟も崩れてる!?
「これは汝の行動によるものではない。役割を終えたものは消え去る・・・当然のことだろう?我も、この洞窟も・・・な」
石像とはいえ、意思あるものが滅びる。それは俺が力を求めたが故なのだろうか。
「すまない・・・俺は・・・」
「汝が気にすることではない。いや・・・此度の戦いは我の不始末。封ずることしか出来なかった我の責だ。・・・すまぬな。さぁ、洞窟の外へ送ってやろう!」
ん? ちょっとまて!? これだけは確認を!
「光の竜は死んだのではなかったのか!? お前は・・・っ!」
答えを聞くことも出来ず・・・気づいた時には俺は洞窟の外に立っていた。
「光の竜は死んださ。少なくても肉体はな・・・我はその意思を宿した石像に過ぎん」
崩壊が進む体と洞窟。このような場所で過ごした長き時。いまさら死などに感じるものはないと思っていたが、なかなか感慨深いものだ。だが、ひょっとしたらと思っていたような恐怖もない。これはむしろ安らぎ?
兄と笑いあった幼き時、光の竜と呼ばれ竜神と戦った戦いの日々、石像としてただ時を過ごした今・・・全て懐かしい。
後は少々頼りなく情けない我が後継者に全てをゆだねよう。 何、我が信じたものだ。あいつなら我と同じ間違いは犯すまい。・・・頼んだぞ、我が血を受け継ぎしものよ。
空中城 玉座の間
「竜神様、光の竜の後継者が現れたようです」
「ほう!やはり奴の子孫は今の世まで残っておったか。面白い! 今の世を支配するは容易い。・・・我が恨み・復讐をその身に受けるものぐらいはいないとな・・・」
はたして楽しげに笑う竜神・・・邪竜神の顔に僅かに浮かんだ影に気づいたものはその場にいたであろうか?
「ルーンよ! ならば、そやつはあの雪山にいるのであろう。奴に連絡をとれ!光の竜の後継者を討ち取ってみよ! とな」
「よろしいのですか? 奴では・・・」
「かわまぬ! 奴程度でも光の竜の後継者の実力を見る程度の役には立とう。奴に負けるようでは・・・我が復讐の相手には足らん!」