3話 「竜の試練」
・・・今こいつはなんて言った? 我を倒せ!? 竜神の力を手に入れる術がその竜神を倒すことなんてありか!!?
「ちょっと待て!!!」
俺の言葉が言い終わるかどうかと言うタイミングで、再び石像の目が輝いたと思ったら俺の体は壁に叩きつけられていた。
「待たぬ。・・・汝とて容易に力が手に入るとは思っていなかったろう? それとも逃げ帰るか?」
くっ・・・!? そこまで言われて引き下がるわけにもいかないな。
俺は竜の石像に突進するかのような勢いで剣を引き抜き、竜の石像を力いっぱい斬りつける。俺の剣はあらゆるものを切り裂く伝説の聖剣・・・であるわけがなく潰れかけた武器屋で見つけた安物の剣だ。そんな剣で硬い石像を斬りつけたらどうなるか・・・答えは自明でだな。
そう、パキーン・・・・と小気味いい音を立てて剣は真っ二つに折れた。そして一瞬の静寂の後、俺は再び壁へと叩きつけられたのだった。
あのようななまくらで我を切りつけたときはあきれ返ったが、おそらくこやつには他の攻撃手段が存在しないのだろう。・・・魔法がまるで使えぬというのはいささか問題があるが、仕方あるまい。
もとより、この試練は力を見るものではない。そのようなものは後からいくらでもついてくるもの。我が求める資質があるのならばな・・・。
「一つ問おう。・・・汝は何ゆえ力を求める」
力を欲する以上は何かしら理由があるはず。下らぬ理由に我が力を譲るわけにはいかん。
「大した理由はないさ。ただ守りたい人がいる。邪竜神をほっといたら何時奪われるかわからない・・・それだけだ」
そうか・・・やはり奴は蘇ったか。しかし
「奴を倒すのが汝である必要はあるまい。人には分相応と言うものがあるものだ」
「いつか誰かが助けてくれる・・・そんな希望に頼っていて手遅れになったら死んでも死に切れない。その誰かが俺ではいけない理由もないはずだ!」
そのとおりだ。いや、汝でなければいけないのやも知れぬ。
「わかっているのか? 人は異端を恐れる。つまり・・・」
「わかってる! 竜神、あんたの言う光の竜は死んで英雄になった。勝ったところで俺は英雄になどなれないさ。・・・・それでいい、あいつらを守れるなら・・・俺の人間としての命などくれてやる!」
迷いもなく言い切ったか・・・そしてその目
「もう質問はないな・・・ならば、行かせて貰うぞ!」
と少年は腰につけていたナイフを手に飛び込んでくる。先ほどまでとて戦いの最中・・・断りなど入れなくとも、問いを無視する形で戦っても非難などされはせんというのに・・・・いいだろう! 我はそなたを後継者として認めてやるぞ!!
少年の持つナイフは元々戦闘用ではないのだろう。さきほどの剣と比べてもなお脆い。このままでは先ほどの二の舞になるは明白。ならば、少年にわからぬように少々強化してやろう。後は我が防御を解いておけば・・・。
永遠とも1旬とも思える時の後に我が眉間にナイフが深々と突き刺さり、そして・・・・
「うぉぉぉぉぉおおおおおお!!」
間髪いれずにナイフの柄を殴りつけさらに深く押し込めてくる。・・・そうだ、それでいい。
「見事だ・・・。我が力、汝に授けよう」