2話 「女神の道しるべ」
「・・・ここが天界の入口。私もう帰ってもいいよね?」
「えっ? それはいいけど・・・なんか元気ないね?」
あれからすぐに迷いの森に入って・・・す、少し迷ったけどママナの家に行って天界への転移陣まで案内してもらったんだ。でもママナはどうして元気ないのかな?
「ぶ~、眠いからに決まっているよぉ~。今何時だと思っているのぉ? 真夜中! 真夜中だよ! しかも寝ている私をたたき起して案内しろなんてぇ」
「だって思い立ったが吉日って言うし」
「それだったらせめて朝になってから動いてよぉ」
「ダメだよ。それじゃあ、思い立った日じゃなくなっちゃうんだ」
だって思いついたのは日付が変わる前だったんだよ。そりゃ、少し森で迷ったせいでこんな時間になっちゃったけど、動き始めた時間はその日のうちだから問題なし!
「ぶ~、それに巻き込まれる私のことも少しは考えてよぉ」
「え、えっと・・・ごめん?」
あははは、とりあえず謝っておいたほうがいいかな? ママナはまだ不満そうではあるけど、あの転移陣に乗れば天界にいけるんだよね? ・・・アレ??
「あのさ、何も起きないんだけど?」
「動いていないみたいだよぉ。ほら、あれ」
帰ろうとしていたママナの背中に話しかけると返ってきた答えと指差し。その方向を見ると何かが貼ってある? あれは紙かな? ボクは一応悪魔らしいママナと違って夜目はそんなに効かないんだよね
「ん~と? 『私も今は睡眠中。朝になってからやってきなさい』? どういうこと!?」
「どういうこともなにもなくそのままの意味だと思うよぉ」
「な、なんでボクがやってくること知っているのさ!」
「だってレーチェルだよ?」
「・・・そうだね、レーチェルさんだもんね」
どんなに理不尽なことでも『レーチェルさんだから』の一言で有りになっちゃうような気がするのはなんでなんだろう。でも、そういうことは朝が来るまでボクはここで待ってないといけないのかな?
「ねぇ、ママナ?」
「な、なに?」
「朝までここで待っているのボク暇なんだよね」
「う、うん、それで?」
「一緒に待と?」
「いや~~~~! 私は帰って寝るの~~~!!」
結局、帰る帰さないの言い合いで気がついたときには朝になっていたんだけど・・・暇は潰せたから結果オーライなのかな
「レーチェルさん!」
天界まではついてきてくれなかったママナだけど、途中で天使に道を聞いて・・・というよりも話を聞く限りではこの天使もレーチェルさんに仕えている天使で『今朝、急にここの転移陣の様子を見てくるように言われた』って言ってたからレーチェルさんが派遣してくれたみたいだね
「あら? 何の用かしら、アイちゃん」
むむむ、ボクが来ることもわかっていたんだから要件だってわかっているはずなのに
「言わなくてもわかっているでしょ」
「あら? 例え私がわかっていたとしても自分で言うのが礼儀じゃないかしら」
た、たしかにそうかも。でもレーチェルさんに礼儀を説かれるのはなんか釈然としないんだよね。一番礼儀を失しているのは多分この人だし。あ、たぶん礼儀という言葉が辞書に載っていない天使一人は除いておかないとね。ひょっとしたら辞書ごとないかもしれないけど
「わ、わかったよ。その、む、胸を大きくする方法を知りたくて」
「特別な方法なんてないわ。って言ったとしたら?」
「そういう言い方をするってことはあるってことだよ!」
ボクの叫びを聞いてクスクスと笑うレーチェルさん。この人絶対に楽しむ気マンマンだよ~
「でもね、その方法は結構大変よ」
「大変だからなんだっていうのさ」
苦労するくらいならば辞めるっていうのなら最初からここに来ないよ。レーチェルさんみたいにとはいわないけど、せめて人並み・・・ううん、小ぶりぐらいのレベルにはなんとか
「あなたのそれは個性よ? 巷には貧乳はステータスだという人もいるとか」
「そんな個性いらないし、そんなステータスも欲しくないよ!?」
それに貧ならばまだいいと言うか、無よりはマシだよねと言うべきか
「そう、じゃあ聞きなさい。タクカラ山・・・と言ってもわからないわね。エルファリアからよりはあなたの故郷からのほうが近いか。あなたの故郷から北に500キロほど進むと多分あなたの目ならば一際目立つ大きな山が見えるはずよ。その山の頂上にだけ生える木の実を潰して胸につけなさい。極めて効果の高い豊胸薬よ」
やっぱり! レーチェルさんのあの胸にはそんな秘密が!
「・・・言っておくけど、私は使ってないわよ。効果のほどは私が保証してあげるけど。ちゃんと実験もしたしね」
「じ、実験って・・・誰に?」
「された本人も忘れているって言えばわかるかしら」
「う、うん。なんとなくわかったよ」
確かにレミーも結構大きかったよね。い、いや別にレミーがそうだっていうわけじゃないんだけどさ。あはははは・・・
「じゃ、じゃあボクはそれ探してくるよ」
そうしてボクはその場から逃げるように立ち去って
「・・・その木の実が収穫できるのは半年先なんだけどね」
レーチェルさんのそのつぶやきは当然のように聞こえていなかった
今回の話は『アイ、レーチェルに騙される』の巻と言ったところでしょうか。あと、地味にママナが不幸な目に遭ってます
メイ「持たざる者のあがきというのは時として周りを不幸にするものなのです。見ている分には面白いのですが」
そういうことを言うから怖いとかドSとか言われるんだけどなぁ
メイ「ですが、今回は実際にご自分まで不幸になりそうな勢いではないですか」
それは相談を持ちかけた相手が悪すぎだからでしょう。あの女神とも思えない性悪神を頼るのが間違い
メイ「そうですか。では後でゆっくりと後ろを振り返るといいでしょう・・・私が安全圏まで退避してからですが」
えっ? それはいったいどういうこと・・・あ、あれ? この背後から感じるプレッシャーは一体?
レーチェル「さ、拷問部屋が貴方を待っているわよ、作者くん」
ま、またですか!? え、えっと読者の皆様、生きていたら来週またお会い致しまフギャァァァアア!!




