3話 「悪魔たちの会話」
「さて、そうすると次はここね」
「そうさね、こっちの坊やもなかなか鍛えがいがありそうだったさね」
ふふ、アシュラの坊やのことだから、そんな評価じゃ怒るでしょうけどね。いえ、怒っているの間違いかしら?
「貴様らは人の館にそんなことを言いにやってきたのか?」
ほら、憮然とした顔であなたの後ろに立っているわよ?
「別にあたしはどっちでもいいさね。まぁ、あたしたちの侵入に気がつけたのならば十分に合格点と言っていいとは思うさ」
「ふん、気配を隠しもせずに侵入してきて気が付けただと? 貴様らはオレを馬鹿にしているのか?」
おや? これは確かになかなかね。これでも普通の者ならば絶対に気が付かない程度には薄い気配なんだけど、私たちにとっては隠していない通常状態だと気が付いているようね。
「へぇ? やっぱり、あの坊やと同じで面白いさねぇ。以前あった時のあんたじゃわからなかったんじゃないかい?」
一見淡々と話しているように見えるけど、リリィも相当驚いたみたいだということは付き合いの長い私にはわかる。竜の坊やといい、アシュラの坊やと言いこの時代の猛者は成長速度が速いのが特徴なのか・・・それとも竜の坊やに特別な何かがあるのか。アキのお嬢ちゃんたちの成長もエルフにしては速すぎることを考えると後者かもしれないわね。
「まぁ、私たちとしては別に用はないのよね~。暇つぶしの顔見せに来ただけだから・・・で? そっちは何かあるかしら?」
正直なところ、ここまで来たら実力も見ていきたい所ね。気配だけで推し量るのは正確なところじゃないし・・・まぁ、あのアシュラ君ならばこうまであからさまに挑発されて引くようなことはないでしょう。
「ふん、レーチェルと言い貴様と言い忌々しい。選択を突き付けると見せておいて、実際にはないものばかりだ」
ま、アシュラの坊やの場合は好戦的というだけで馬鹿ではないから気が付いて当然か。でもね、策略というのはそういうものなの。相手の性格を踏まえたうえで自分に有利になるように選択肢のない選択を迫れないようじゃ2流とも呼べないわ
「あら? 私は別に何も言ってないと思うわよぉ」
心にもないことを言う。けれど、相手にもばれているということと、自分から明言するのとでは同じようで決定的に違う。だからこそ、アシュラの坊やも忌々しい顔をするのだから
「ちっ・・・だが」
「そうさね、あたしたちの背後に回ったというのは褒めてあげるさね」
アシュラの坊やは竜の坊やたちのパーティでは(光の女神様を除けば)最速。とは言っても、光速よりも遅いようじゃ私たちの脅威にはなりえない。リリィが評価しているのは正面からではなく、実力差を考慮しての背面攻撃を選んだことね
「ふん、それをいとも簡単にいなす化け物どもがよくいう」
「あはは、まぁ、あたしは仮にも猫だからね。苦手な肉弾戦と言えどもネズミに負けるわけにはいかないってものさね」
後ろ手にアシュラの坊やの手を掴んで前方に投げ飛ばしたのはリリィ。確かに魔女のとる行動とは言い難いわねぇ。まぁ、あの程度出来てくれなければ囮の壁役すらあの人相手には勤まらないけどね。・・・本当の化け物たちはこの先に嫌っていうほどいるのだから
「で? どうするのかしらぁ。勝てない相手ならば逃げるのも手段よぉ? もっとも、貴方の方から仕掛けてきた戦いなんだけど」
クスクスと意地悪く笑う。これで引くのもまた選択・・・この選択ならば私にとっても悪くはないから選ばせてあげてもいい。
「ふざけるな。そもそも、逃げるなどという選択は実力差が大きければその時点でうてん手だ・・・それにオレは逃げるのは性に合わん」
あら、ちょっと残念ね。まぁ、後者の理由だけならば失望するところだけど、私たちが本気で戦うつもりならばそもそも逃げれないということを理解しているならば良しとしましょう。どんな理由であれ本気で戦っていないならば命を取られる確率も低い・・・アシュラの坊やには屈辱でしょうけどね
「ふふ、じゃあ私たちが逃げちゃうわぁ。私たち夢魔にはそんな戦いの誇りなんてないものぉ」
私のセリフに苦虫をかみつぶしたような顔をしたアシュラの坊や。まぁ、死闘を楽しむアシュラの坊やからすれば、こんな中途半端な戦いは不本意でしょうね。でも、文句はちょっと予想外のところから来たりする。
「ルーン? 何度も言うけどあたしは夢魔じゃないさね。あんたに誇りがあるかどうかは知らないけど、あたしまで巻き込まないで欲しいものさね」
「あら? 魔女なんて言うのも戦いに誇りを持つ存在じゃないはずだけどぉ? あなたたちが誇るのはその数知れぬ魔法と知識じゃなかったかしら?」
リリィは師、そして私の昔の友でもあるルナの志と誇りを受け継いでいる。だから、誇りがないという発言は受け入れられなかったのね。そこら辺がまだまだ若いというか青いというか・・・ルナは戦わなくていい戦いはあっさりと逃げることを選ぶ子だった。その魔法と知識で多くの人を救った時こそ誇りに満ちた良い笑顔で笑ったものよ
「・・・っ!? そうだったさね。まさか、夢魔のあんたに魔女の誇りを教えられるとは思わなかったさね。これも年の功って奴さね?」
・・・リリィ? あんたは一言多いのよ! とりあえずはアシュラの坊やの屋敷からは退避するけど・・・覚えていなさい? 私だって、歳を気にしていないわけじゃないんだからねぇ
今回はアシュラの話。コーリンは危険なためにアシュラが表に出してはいません。
リリィ「そうはいうけどねぇ、どっちかというとルーンの秘密がまた少し増えたのかあかされたのかさねぇ・・・ルナさんとも繋がりがあるみたいだし」
そこらへんにリリィとルーンがコンビを組んでいる秘密があるのですけどね。というか君自身は知っているでしょ?
リリィ「おや? あたしが知っていることを平然と言っていいのさね? だったら色々話してあげるけど」
勘弁してください>< あなたとルーン・・・それにレーチェルあたりの知っていることは本作の最重要クラスの大規模ネタバレが大部分を占めているんですから
リリィ「だったら余計な突っ込み入れずに大人しく聞いているんさね。あっはは、何を暗い顔をしているんさね。どこぞの光の女神様のように攻撃が飛んでこないだけましさ」
・・・まぁ、マシの基準が凄い低い気がしますけどそう思っておきましょう。では皆さん、次回もよろしくお願いしますね♪




