5話 「リュウトVSシルフォード姉妹」
ふうふうふう・・・と、とりあえずつい叫んじゃったけど、まずはリュウトを何とかしないといけない。あのリュウトを殺すつもりで・・・
「アキ! 何やっているのよ!!」
!? リデアの声にはっと顔をあげると目の前にいるのはリュウト。ああ、そういえばリュウトはよく言ってた・・・戦場で足を止めたら死あるのみだと。こういうことで失敗するから私は駄目なんだね。
「アキ・・・リュウト君がよく言っていたけど、あなたの1番悪いところはその諦めの早さよ」
ぎゅっと閉じられた目が聞こえるはずのない声に見開かれる。なんで・・・何でここにいるの! お姉ちゃん!! それも9本に別れた鞭が全てリュウトに絡みついてそれが体の動きを封じている。
「考えるのは本来は後だけど・・・あのね、妹のピンチを黙って見ている姉なんかいないわよ。リュウト君の力がいくらすごくても体が動き出す始点を9つ封じられて自由に動けるはずがない。そう、いつものリュウト君ならともかく本能しか残っていないならね」
そう、笑うお姉ちゃんは本当に頼りになると思う。それ以上に怖いとも思うけど・・・
「でも・・・それ以上に落第はなんで倒して終わりしようと思うのかしら? アシュラ殿、コクト殿、レミー殿、それにリデア殿でしたね・・・あなたたちはゼウスの相手をお願いします!」
「・・・了解した」
即座に了解の返事をしたのはコクトだけど、他の人も・・・
「ふん、貴様らだけでリュウトを元に戻せるというのならばいいだろう」
「ム~、よくわからないけど向こうを倒せばいいんだよね?」
まぁ、レミーは予想どうりよね? でもアシュラまで納得するとは本当は思っていなかったの。たぶん、今の状態のリュウトよりも普段のリュウトの方がきっと強いとアシュラは判断したんだと思う。レーチェルさんのあの笑みもきっとそういう・・・
「な、なんでワタシまでアンタの言うこと聞かないといけないのよ! それ以前にあんた誰よ・・・ま、まぁ、兄さんを助けられるっていうなら聞いてやってもいいけど」
そう言えば初対面のリデアが文句を言ったけれど・・・お姉ちゃんに一睨みされただけであのリデアが引くなんて!? 凄いと言えばすごいけど、あまり嬉しくないのはなんでなんだろう?
うん、でも最終決戦までなんだけどたぶんゼウスはあのメンバーならばどうにでもなると思う。やっぱり問題は・・・リュウトの方よね?
「お姉ちゃん、どうすればいいのかわかっているの? ううん、それ以前に今の状況を・・・」
「ええ、勿論把握しているわよ。対処法はね、ある程度まで押さえつけるのはあなたの考えと同じ。でもね、その後は・・・あなたの心でリュウト君の心を取り戻してきなさい!」
な、なんか今凄くお姉ちゃんが苦しげに言った気がするのは気のせい? ・・・いえ、そんなことを考えるのは後だよね。お姉ちゃんが押さえつけている鞭ももう限界。これ以上縛っていたらたぶん鞭の方が駄目になっちゃう。今のリュウトは思念波なんかで会話できないだろうから遅い音で・・・もしかしたらそれ以外の方法を考えないといけないかもしれない。
「じゃあ・・・いくわよ、アキ」
「うん、絶対に負けないよ」
はらりと解かれるリュウトに絡められていた鞭。それとほぼ同時に突撃してくる・・・ん? さっきまでに比べたらだいぶ遅い。さっきまでは光速より速いぐらいだったけど今はマッハ1万ぐらい?
「ええ、鞭を解こうとする力もだんだん弱くなっていったからたぶんリュウト君も抵抗しているってことよ。だから私たちも負けられないわ! スプラッシュ・カッター!」
水のトンネルから撃ちだされるは無数の水の刃。防御と攻撃を兼ね備えたお姉ちゃんの必殺技の1つ・・・それも全て竜神剣に吸い込まれていく。
竜神剣は属性を吸収する属性の王たる剣。この状態の方がリュウトは竜神剣の使い方が上手い? ううん、本能で使い方を認識したってところね・・・この先の新しい戦い方を知ったというにしておくわ、リュウト!
「小細工なんてしないよ・・・あなたに伝える思いは絶対に偽りたくないから。『我が思いの形は常に一つ・・・汝の力を借りて、ここに現出させん!』ドラゴンソウル!!」
くるくると回転させた杖、いつもでは考えられないぐらい赤く熱くその力をたたえて、そして生み出された炎の竜・・・私の思いの全て、竜神剣が思いという力を吸い込んで力を発揮する剣だというのならば、きっとこの力はリュウトに届く! だって、リュウトを守りたい思いならば・・・誰にも負けない!!
「・・・っ」
小さく聞こえたうめき声。それでもそれはリュウトの言葉・・・受け止めて赤く燃えるは竜神剣。吸収できるものならばしてみなさい! いえ、きっとしないと思う。あの剣はなんだかんだ言ってリュウトに甘いもの。主に従うなんて言いながら私たちの味方をしてくれる気がする・・・。
「アキ・・・あなたは私が支えてあげるわ。もう一撃、撃てるわよね?」
「当然だよ、私の力・・・私の思いは絶対に届けるんだから! 『真紅なる業火よ。我が命の火を糧に偽りの生命となれ!』 ファイヤーバード!!」
ふっ、と一瞬力が抜ける。でもお姉ちゃんが支えてくれるから、ドラゴンソウルは連発できないけどファイヤーバードぐらいならば無理やりにでも! 殺到する火の鳥の力を受けて、より強く燃え上がる炎の竜に竜神剣がパキパキと音を立て・・・ついには砕け散る。少し心配だけど、たぶんあの剣ならばこのぐらいで消滅することはないと思う。
「リュウト!」
力の入らない足に無理を言わせて抱き着く。別に竜神剣が悪いわけじゃないから、これで元に戻るとは思えない。あとは・・・私の思いを直接伝える。きっと、きっとリュウトならばそれで・・・。
シルフォード姉妹2人だけで協力して戦うのは実はここが初めてなんですよね。
アキ「それ以前にメイが戦うこと自体が少ないからのう。これで3度目ではないのか?」
ええ、この前はサタン戦と以前あなたが暴走した時ですね♪
アキ「ムム、あれも私のリュウトへの愛ゆえなのじゃ!」
まぁ、それは確かに。ですが、これで終わりでは勿論ありません。そして見えてきた、竜神剣の秘密のベールのもう一枚先・・・さらには新たな戦術まで
アキ「有効に使われれば属性攻撃は殆ど効かんからのう・・・私たちマジシャンの天敵のような能力なのじゃ。まだレーチェル殿のリフレクトのように跳ね返ってこぬからよいが」
その代りレーチェルと違って全属性吸収ですからねぇ。おまけに魔法剣として生成するからある種反射に近い側面もあると。
アキ「じゃが、問題はそんなところではないのじゃ! 今は私の思いがきちんと届くかどうか・・・皆のもの次回も注目するのじゃ!」
ということでよろしくお願いします~♪




