3話 「闇の誇り」
「さぁ来なさい、坊やたち。わたしは堕天使レミー、誇り高き竜神の代わりにあなたたちに闇を見せてあげるわ。」
フフ、あれだけの信頼を見せられたら、さすがのわたしもちょっとは協力してあげないとって気にもなるわ。
「ふん、小娘が! 少々雰囲気が変わったが、我ら兄弟に適うとでも思っておるのか?」
「そっちの騎士はなかなか強かったけど、今度は完全にキミ1人・・・もう勝ち目はないよ。」
フフ、そんな認識なのね? まぁ、問答無用で倒してもいいんだけどぉ・・・少し遊んであげましょう。
「あら? たった2人でいいのぉ? どうせならそこに控えている2人も入れて4対1でもわたしはかまわないわぁ。」
「貴様! 我らを愚弄する気か!」
あらあら、こんなことで怒るなんて。別に挑発したつもりじゃないんだけどねぇ・・・はっきり言って、4対1でも楽勝すぎるのよ、貴方たちじゃ。
「まぁいいわ。じゃあ受けてみなさい・・・『シャドーアロー!』」
レミーのシャイニングアローに相当する闇を込めた矢『シャドーアロー』。1本、2本でどうこうという技でもないけど、数十本連射となれば話は別よね。
「・・・っ!? 小娘~! 薄汚れた闇の力などで・・・我らを倒せるものか!」
・・・薄汚れた? まともに受けても突進してきたことは褒めてあげようと思ったけど、気が変わったわ。闇の恐ろしさと・・・誇りっていうものを見せてあげるわ。
「ぬっ? 分身? ・・・いや! 幻影か! 笑止!!」
フフフ、幻影だって見抜いたところまでは褒めてあげるわ。でもね・・・
「それがわかったからってなんだというのかしら? さぁ、踊りなさい。現実と虚構のはざまで・・・『ダークボール!』」
無数に弾む闇のボール。もう、どこから発生しているかなんてわからない。ボールに紛れてわたしの幻影が何体いるかも把握できない。まして・・・ボール自体も幻影が混ざっているとなれば避けるもの防ぐものと無視していい物さえもあなたたちにはわからない。
「ちょこざいな! しょせん、貴様の技は目くらまし・・・正々堂々と戦うこともできない闇らしい臆病者の卑怯な戦い方だ!」
「くすくす・・・わかっていないわねぇ? これは闇の戦い方じゃないわ。 これは水の戦い方よ。まぁ、闇も近いことができないわけじゃないけど・・・闇の恐ろしさはこれからよ。」
そう、こんな戦い方はレーチェルだってできる。いえ、彼女が本気になったらこんな程度じゃ子供だましにすらならないと笑うでしょうね。だから・・・ここからが闇の本領発揮よ。
「な・・・に?」
「あ、兄者!? これは!?」
ドロリ・・・彼らの目に映る光景を音で表現するならこんな音かしら? わたしの幻影が・・・床が、空気が、そして彼ら自身がドロドロと溶けて形を失っていく。全ては幻影、全ては幻・・・でも全ては現実よ。
「し、心配するな、弟よ! これは幻影・・・そう! 幻影なのだ!」
「そ、そうだよね、兄者! こんなのが現実なわけは・・・」
ふふ、もうそんなことは関係ないのよ? 闇が司るのは恐怖、それが幻影でも現実でも貴方たちの心を蝕む恐怖はなんの遜色も見せない。
こわ~い物語を見た後になんの変哲もない暗闇さえも恐怖に感じるように・・・あなたたちの恐怖は連鎖的に膨れ上がる。もうあなたたちには現実と虚構の見分けはつかない。
「案内してあげるわ。もう何も見なくてもいい闇の底。恐怖と安らぎが同居するその場所へ・・・。」
一瞬、発生した闇が晴れた時にはそこには何も存在していなかった。・・・2人がどうなったかって? 生きてはいるわよぉ、死ぬよりましかどうかは保証しないけどねぇ・・・クスクス。
「レミー・・・いや、堕天使レミーか。キミは一体?」
「ふふ、リュウト・・・まだそれは教えられないわ。ま、わたしのことをレミーに言うかどうかはどっちでもいいわ。そろそろ知ってもいい頃かもしれない・・・特にレーチェルの計画に従うつもりがあるならね。」
レーチェルの計画? 今更驚くことでもないが、一体いくつの計画を練っているんだろうなぁ。
「またレーチェルなの! あの女はどこまで何をたくらんでいるのよ!」
「今に始まったことではあるまい。それに・・・レーチェル殿ならば意味なく隠しているわけではあるまい。・・・おそらくな。」
まぁ、リデアとアキの言うことももっともだ。たぶん、理由があって隠し、計画自体も俺たちを導くものなのだろうが・・・彼女の性格だと悪戯や脅かすだけという可能性も僅かにあるのが怖いところだ。
「ふふ、あなたたちは本当に変わっているわ。こんなに深い闇を発するわたしを信用するのだから。」
「・・・それが何の意味がある? まだ分かったなんて口が裂けても言えないけどな、キミはたしかにレミーだと思うぞ。だから信じるさ、闇の誇りは・・・だろ?」
「・・・!? ふふ、今回はわたしの負けかしらね? ホント、あなたって変わっているわ。実力だけなら勝てるっていうのに、向かい合って勝てる気がしないなんて。・・・じゃあ、また今度会いましょう? 楽しみにしているわ。」
勝ちも負けもないと思うのだがな。だがキミの目・・・信頼と不安を同居させたような目。キミも1人は怖いんだろ? レミーのように、俺たちのように・・・だから不安で、でも信頼したくて・・・そんな目をした奴を疑えるものか。
それに・・・闇は恐怖を映すもの。ゆえにその恐怖と向き合った自己を形成すること、弱いものから目をそむけないことこそ闇の誇りなのだろうからな。
「リュウト、レミーに・・・話すのか?」
「ふん、突きつけてやりましょうよ! そうすればこの馬鹿天使も能天気な顔ばっかりはしてられないでしょ!?」
羽が白くなると同時に崩れ落ちたレミーの顔を心配そうに覗き込むアキと、辛辣なことを言いながらしっかりとレミーを抱きとめたリデア。もうちょっと兄さんとしては素直になってほしいな。リデアが気にしているのは、知らないことの方が後に苦しみが大きくなるってことを知っているからだろ?
「ひとまずは保留だな。俺たちもまだ詳しくは知らんし、レミーと話してみないと何とも言えないだろ。それに・・・先に片づけなければならない問題もあるしな。」
さて、レミーが気が付く前に残りの戦いを征してしまうとするか!
レミーと堕天使レミー・・・彼女たちは対極にいるようで実は背中合わせなのです。さて、今回の話にふさわしいゲストというと・・・
レーチェル「勿論私しかいないわね!」
あ~、やっぱり。で、あなたは何をたくらんでいるんですか? って聞くのは色々とまずいので・・・
レーチェル「あら? 私は話してもいいと思ったんだけどね? 貴方さえいいんなら。」
駄目だからそらしたんです>< レーチェルの計画はどれもこれも物語の根底にかかわるネタバレばっかりなんですから。
レーチェル「ま、計画どころか知っていることの時点で大ネタバレですものね。それも物語の終盤も終盤・・・最終局面の。」
はい、ということで今の時点で出せるのはここが限界です。これに関しては感想などで聞かれてもお答えできませんのでご了承ください。
レーチェル「そうね、後は・・・私はちゃんとみんなのことを考えたうえで行動しているということぐらいかしら?」
一応・・・のレベルですけどね。ひっ!?
レーチェル「フフ、作者く~ん? せっかくイメージアップを図ったっていうのに・・・はい、こっちに来なさい♪」
い、いやだぁ~~~!! もう拷問は勘弁を~~~!!
レーチェル「いやねぇ? ・・・前作よりはまだ手加減しているでしょ? さ、読者君たちは次回もよろしくお願いね!」




