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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
4部1章『天界の異変』
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5話 「愛と不安」

「さて、私は少々リュウトと話がある。そなたたちは席を・・・いやリュウト、こちらに来てもらおうか。」


「ちょっと待て! アキ!!」


 ズルズルと俺を草むらに引き込んでいくのはアキ。無論、本気で抵抗すれば逃げることなど容易だが・・・そんなことが出来るはずもない。そして、頼りの綱の2人は


「ふん、この先の戦いに影響が出ない程度にしておけ。」


「ム~? わたしは待っていれば良いんだよね?」


 多少の『惨劇』は容認しているらしいアシュラと何が起きているか理解してないレミーは綱どころか藁にさえなってはくれなかった。・・・っていうかレミーはアキが怒っているってところまでわかっていて、なんでその先を理解できないんだろうな?




「・・・ ・・・」


「・・・ ・・・」


 草むらに連れ込まれて数分。俺は・・・いやアキもだろうな、話す言葉が見つからず息苦しいほどの沈黙だけが続いていた。


「ねぇ、リュウト・・・」


 沈黙に耐えかねてなのか、それとも・・・いずれにしてもその声は痛々しいとまで思える悲しみに満ちていて。それを与えたのは疑いようも無く俺なわけで・・・。


「・・・すまん。」


 この一言を言うのが精一杯だった。それさえも思いっきり上ずった声で、もし第3者が聞いていたら思いっきり滑稽に映ったことだろう。


「リュウト、私が何を怒っているか・・・ううん、何を悲しんでいるか、本当にわかっている?」


「お、置いていった事だろ?」


 やっぱり上ずった声で言う俺に、アキは悲しそうに首を横に振る。


「違うよ。私はね、リュウトに私の思いをわかってもらえなかったことが悲しいの! リュウトが私を心配してくれたことは嬉しいよ? 何が起きているかわからない天界、どんな危険があるかもわからない場所に連れて行きたくないって言う気持ちは嬉しいの。でも!」


 俺は何も言えない。言うわけにはいかない・・・アキが何を悲しんでいるのかわかってしまったから。本当は抱きしめたかった。抱きしめて慰めてやりたかった。でも、それをするわけにはいかない。それではただ誤魔化しているだけになってしまう。


「なんで・・・相談さえもしてくれなかったの? そりゃ、この事態を教えられた上で連れて行けないなんて言われたら喧嘩もしたかも知れない。でもね、突然あなたにいなくなられた私がどれだけ心配するか・・・あなたにはわからなかったの? 今回は偶々大よそのことはわかったけど、それでも私は心配だった。不安だったの! あの時・・・私を震えながら抱きしめたあなたにそれがわからないなんて言わせない!!」


 あの時・・・そうだ、アキが不老の力を求めて俺の前から消えたときに感じた途方もない不安と心配と絶望。まだ間に合う! 伸ばしても手が届かないならば、届くところまでどこまででも走ればいい。そう信じながらも確実に心を侵していた冷たい感情・・・俺は同じことをしてしまったわけか。


「すまない、本当に・・・っ!?」


 アキの目からつぅ~と流れ落ちた一筋の涙・・・それは俺の理性を吹き飛ばすのに十分すぎるものだった。




「リュウト・・・いや・・・」


 ぎゅっと力強く、痛いぐらいの力で私を抱きしめたのはリュウト。痛いことが嫌なんじゃない。むしろ、その力が強ければ強いほど(まぁ、リュウトが本気で締め付けたら私、死んじゃうと思うけど)リュウトの思いが伝わってくるようで嬉しく、心地よかった。だからこそ・・・その心地よさが何よりも嫌だった。


「すまない・・・俺は・・・俺は!」


 ギリギリとさらにリュウトの力が入る。・・・ねぇ、本当に私を絞め殺すつもり? 結構息苦しくなってきたんだけど? ・・・でも、そんな中でも私の心はどんどん穏やかになっていっているのがわかる。リュウトの体も、リュウトの匂いも、リュウトの心も・・・全て私の心の安定剤。だから拒否しなくちゃいけない。今この快感に溺れてうやむやにしちゃいけないの!


「りゅ、リュウト・・・痛いよ。」


「す、すまない!」


 この言葉はある意味リュウトには必殺! 私の言葉に、まさにはじかれたように離れるリュウト。本当はもっと抱きしめて欲しかった。離れていってしまった温もりが恋しいって私の心が叫んでいるのがわかるけど、それに流されちゃ駄目!


「ねぇ、リュウト? 私はね、いつだってあなたの隣にいたいよ?」


「お、俺だってそうだ!」


 真剣な顔と声に心がギュって締め付けられる気さえもする。私とリュウトの思いはきっと同じ。同じだからこそ、すれ違っているんだと思う。


「でもね、同時にあなたに危ない目にあって欲しくない。」


「・・・」


 何も言えないという感じのリュウトの顔。何か必死で痛みに耐えているようなそんな顔。きっと、痛いんだよね? 体じゃない・・・あなたの心は本当は傷だらけでボロボロなんだから。それはどんな回復魔法でも治せない。時間が解決する・・・なんてよく聞く言葉だけどリュウトの傷はどうだろう? 優しすぎる彼の傷は治るのではなく、新しく出来た傷に隠されて目立たなくなるだけなんじゃないかと思う。


「私たちは同じだよね? 私がそう思うように、あなたも私を危険な目にあわせたくない。でも・・・忘れちゃった? 私たちはあの夜に、恋人になれたあの夜に誓ったはずだよ? お互いを守るんだって・・・だから私にもあなたを守らせて欲しい。うん、戦うだけが守る術じゃないことは知っているよ。でも、私は無力じゃない・・・こんなときはあなたの隣にいさせて欲しい。で、あなたも私を守って? 危険から遠ざけるんじゃない、危険の中にありながら私を守って欲しい。だって、じゃないと私の心は守れないよ?」


 本当は凄いわがままなことを言っているって自覚はあるんだ。それでも私はリュウトの隣で笑っていたいから・・・あなたが戦いから逃げられないなら・・・お願い! 私もあなたと共に戦わせて!


「本当は・・・本当は駄目だって言うべきなんだろうな。だが、キミの気持ちもよくわかるんだ。そうだな、体を守って心を殺してそれで満足なのか・・・そうあいつに言ったのは俺だった。体も心も守る! って宣言したのも俺だった。正直、まだ自信はないんだ。だから・・・」


 そこまで言ってリュウトは私の方を見た。うん、繋がる言葉・・・私にもわかるよ。


  「「一緒に居よう! 足りないところを補う為に!」」


 相談なんてしなくても自然と重なる言葉。さっきまで喧嘩(?)してたのに今はお互いこんなに笑顔。やっぱり私たちは似たものどおしで通じ合っているんだと思う。でもね、私はもっともっとあなたが知りたい。もっともっとあなたに私を知ってもらいたい。永遠には届かないけど、一緒に歩いていこう? 私の足が未来を目指せる限り・・・




「あ! あーちゃんたち、帰って来た~!」


「ふん、意外と無事そうではないか。」


 ・・・レミーはともかく、私ってアシュラにどう思われているんだろ? そんなに暴力振るうように見えるのかな? そんなことしたこと・・・あ~、あったよね、確かに・・・。


「こ、これから戦いというときに無駄な労力は消費せん! それよりも隠れておった方がよかろう? これから行くべき道が見えておらんというならな。」


「ん? どういうことだ、アキ?」


 レミーだけでなくリュウトもわかっていないみたいね。リュウトは戦術や交渉とかは得意そうだけど、戦略や指針を決めるのはちょっと苦手なのかもしれない。うん、こういうところで私も役立てるよね!


「先ほどリュウトは一部はどこかに飛び去ったと言ったであろう? それが援軍を呼ぶためでも、報告であろうとも必ずここに戻ってくる者たちがいるはずだ。そして、そやつらが気絶している仲間を見つけたら・・・本拠地はありえぬだろうが拠点、ないしは前衛基地になっている場所に連れ込む可能性が高い。先ず私たちが得なければならぬものは情報だ。それが僅かでも手に入る可能性のある場所ならば当たって見ぬ手はない。」


 なるほどって感じのリュウト。ゼウスの元へ行こうとしていたみたいだから基本的な考えは同じなんだろうけど、ちょっと甘いってところね。その逃げた天使を追いかけたところいきなり監視となるとそれ自体がきっと罠。この方向に行ってつくとは思いにくいわ。もっとも、操られていて仲間の命をなんとも思っていないなら私の考えた手も罠の危険性もあるんだけど、このまま進むよりは進展があると思う。ちなみに、この説明に対してアシュラは何を考えているのかわからないし、レミーは理解してない見たいね~。


「では、戻ってこぬうちに隠れるとしよう。」


「あ! あーちゃん、ちょっと待って?」


 早速隠れようとした私をレミーは止めて・・・え、えっと、なんでそんなに体をジロジロ見るのかな? 私にその気はないんだけど?


「ム~? ねぇ、いつの間にこんな怪我したの? ここら辺のホネ、ちょこっとヒビ入っているよ?」


 とレミーがおなかの辺り・・・たぶん肋骨ね・・・に回復魔法をかけながら言って来る。ふ~ん、思い当たることが1つあるなぁ~。確かにちょっと痛いなぁとは思っていたけどヒビまで入っていたとは思わなかったよ? ねぇ、そこでそっぽを向いているリュウト~♪


アキの思い、そしてリュウトの思い。どちらも相手を守りたいがゆえに悲しませ、悲しむ。彼らの環境が苛酷なのもありますが元々恋愛自体がそういう要素を持っているのかも知れませんね。


メイ「確かにそれも真実ですが、どちらかというとリュウト殿が臆病なのが最大の要因ではないでしょうか?」


まぁ、リュウトは恋愛関連は酷く鈍くて臆病で、仲間を失うということにはこれ以上無く脆いですからね。


メイ「そうですね、仲間を失っても女王様は泣きはしますでしょうがなお遺志をついで前を見るでしょうね。」


ある意味レーチェルとそこらへんは同じともいえますね。レミーは一晩泣いても翌朝には笑顔を見せるでしょうし、アシュラは表面上は変らないでしょうが、あいつは戦意を失いかねませんからね。


メイ「というよりも前作では失っていませんでしたか? レーチェル殿が死んだと勘違いしたときに・・・。」


失ってましたねぇ。あの時はアキのビンタとなお戦おうとする仲間たちの姿に復活しましたが・・・まぁ、リュウトが何故恋愛にああまで鈍いのか、そして仲間を失うことに対する弱さと孤独の秘密は今作で出てくる予定ですので楽しみにしていただければ♪


メイ「理由があったのですね。ただのへたれだと思っておりましたが・・・。」


し、辛辣ですね(汗)でも、そんな彼に惚れているのでは?


メイ「だからこそ・・・はっ!? な、何を仰るのです!!」


といったところで今回はお開きです~。では~♪


メイ「こ、こら~! 待ちなさい!! わ、私は、その・・・って本当に終わるのですか~!?」


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