2話 「天界にて」
エルファリア宮殿の奥深く、普段は誰も立ち入れないその部屋には女神レーチェルが用意した転移陣がある。転移魔法が使えるレ-チェルや飛んでいけるママナ、レミー、アシュラなど違って俺たちはこういうのがないとは入れないからな。・・・飛行が出来るようになったとはいえ俺はあそこまで高く飛ぶことはできないということだ。
天界・・・そこは超高高度、地球とか言う星ならならとっくに宇宙に飛び出ている上空1700キロの場所にある。当然空気が薄いのだが竜族+風使いの俺にはさほど苦ではない。逆にアキは苦手なようだな。もっとも一番苦手としていたのは常に吹いている強めの風だったようでズボンをはいている今はまだいいのだとか・・・俺の方は無理やりはかされているスカートが気になってしょうがないというか・・・アキの気持ちがわかるな。
「レミーはどこにいる!!」
・・・この声は俺の声ではない。聞いたことがない・・・いや、少々甲高い声だがどこかで聞いたような覚えが・・・。まさか!?
ちょっと顔を見合わせた後に走り出した俺たちのまえには、おなじみの白毛の狐がいた。・・・いや、腰が細くなっていたり、その、胸が今の俺以上に大きかったり、色々変化はあるにはあったが・・・
「アシュラ、お前もか。」
「ぬっ? ・・・そういう貴様らはリュウトとアキか。どうやら目的は同じなようだな。」
ああ、同じだろうな。レミーから元に戻る方法を聞きださないと! ・・・ところで
「なぁ、なんで俺だとわかったんだ? お前みたいにわかり易い姿はしてないと思うんだが?」
服だって(不本意ながら)こんな服を着ているし、見た目はその・・・俺から見てもかなり可愛らしい女の子になっているはずなんだが。アシュラやアキの気配が変っていることからすると俺の気配も変っているだろ?
「何を言う、貴様の顔つきは大して変っていないではないか。」
・・・嘘だと信じたい。
とまぁ、こんな感じで3人でやってきたのはレミーの家。ここにいるのは気配からも明白。幸いにしてコクトはいないようだ。・・・こんなみっともない姿を見られる人数は少ないに越した事はない。
「ん~、どうしたの? 3人とも?? あれ~? それって一体どうやったの??」
どうやらレミーは俺たちの変化に気づく前に俺たちの正体を見破った・・・というか疑問にさえ思わなかったらしい。きっとレミーだったからだ、そう思おう。
「どうやったも、なにも・・・」
「そなたが送ってきた饅頭を食べたらこうなったのだが?」
「・・・とっとと元に戻せ。」
俺たち3人から口々に言われ、ん~? と考え込んでいたレミーは
「ごめんなさい、わたしもレーチェル様の倉庫から持ち出したものだから良くわからない。」
などと言ってのけたのだ。レミー・・・自分でもわかっていないものを、その前に自分の主のものをかってに人に送るんじゃない。
「ん~、でもレーチェル様も別に構わないって言ってたんだけどな~。」
ほ~、つまり元凶はあの人か!!
そして、レーチェルの神殿
「あらあら、さっそく効果が出てるみたいね。」
出会い頭にそういってころころと笑った女神を睨みつける俺たち3人と後ろからとぼとぼついてくる1人。やっぱりあんたの仕業か。
「あら? なんか人聞きの悪いこと考えてない? 私はいらない物だったから、送ってもいいとはいったけど、選んだのはレミーよ。」
俺としては何でその時に止めなかったのかと声を大にして言いたいのだが?
「そんなことはどうでもいい。さっさと元に戻る方法を教えろ。」
そうだな、アシュラの言うとおりだ。経緯など今はどうでもいい、とりあえず元に戻るのが先決だ。
「そうね、ここから東の方にある森の中央にね、大きな大樹があるんだけど、その木の実が薬の効果を打ち消す薬になるのよ。今の時期ならばいっぱい生っているはずだわ。」
「つまり・・・そこに行けば元に戻れるってことね!」
ん? 私・・・じゃなくて! 俺、今、妙なことを言ったような?? ど、どういうことだ??
「ふふ、リュウトくんにはそろそろ効いてきたみたいね。その薬はね、時間がたつと言葉遣いや性格にも影響が出てくるのよ。そのうち元に戻ろうなんて気にならなくなっちゃうわ。・・・2つ食べたりしなくてよかったわね。一気に進行するから。」
青ざめた顔をするアキ、毛に隠れて見えないがそれでも焦っていそうなアシュラ・・・無論、私・・・じゃなくて俺も青ざめているだろうことは自分でわかる。当然のように俺たちは一斉に東の森に向かって走り出したのだった。
「あ、あの~・・・レーチェル様、わたしも着いて行っていいですか? 東の森って結構危険・・・」
「だからいいんじゃない。いい訓練になるわ。彼らなら問題ないわよ。でも・・・焦っていたからかしら? 彼らもちょっと迂闊よね。ここに元に戻る薬があるかどうか聞かなかったんだから。」
クスクスと笑いが漏れる。嘘はつきたくないから(誰よ、今ダウトって叫んだのは?)、聞かれてたら渡しちゃったでしょうね。まぁ、聞かれなくて助かったわ、これでもう少し楽しめるし♪ ・・・一番簡単なのは竜神剣で薬の『効果』を斬ってしまうことなんだけど気がつかないでしょうしね。
「れ、レーチェル様~、それは酷いです~。も、もし戻れなくなっちゃったらどうするんですか~!」
「大丈夫よ。あの薬はね、元々3日ぐらいしか効かないの。ちょっとの間、異性の気持ちを知るための薬なのよ。たとえタイムオーバーで戻る気がなくなっちゃっても個人差はあるけど約3日後には元に戻っているから♪」
レミーはちょっと何かいいたそうな顔をしていたけど知らないわ。それにね、あなたにも訓練は受けてもらうわよ~!
え~、なんというか・・・彼らに心休まる時はきそうもないってことですね><
レーチェル「あら、どうしてかしら?」
あんたらがいるからだ! 元凶の自覚あるのか?
レーチェル「失礼ね~、ちょっとした悪戯じゃない。」
これを悪戯というか? もの凄くたちの悪いことをやっていると思うのだが?
レーチェル「だから悪戯なんじゃない。」
あ~、たちの悪いことをやっている自覚はあるんだ。良く・・・はないな。レーチェルと知り合ってしまったことを怨むしかないわけか。
レーチェル「もう! そもそもはレミーが贈り物するんだ~ってあれを引っ張り出してきたからよ?」
それを面白いと見逃したあんたに責任があると思うが・・・結局はレミーのトラブルなのか・・・。
レーチェル「そういうこと♪」




