9話 「12月24日」
天界、レミー宅
「スゥスゥ・・・ううん、リューくん、お兄ちゃん、あーちゃん・・・えへへ、アーくん♪」
そろそろ日も高くなってくる時間ですが、レミーはまだ夢の中のよう。
「うひゃあ! つ、冷た~い!!」
突然振ってきた冷水をかぶって、さすがのレミーも飛び起きたようです。・・・一体どうしてこんな事になったんでしょうね? レーチェルさん?
「うう~、寒いよ~。」
突然振ってきた水でびっしょりのわたしの体。犯人はわかっているけど文句なんていえないし・・・でも、どうやってわたしのいる場所を知っているんだろう? ・・・まぁ、いいか!
そんなことよりも今日は! わたしはウキウキしながら日付けを確認する。ここ数週間毎日楽しみにしてたんだから忘れるはずがない。今日は12月24日、わたしの誕生日♪ 毎年レーチェル様がちょっとしたお祝いをやってくれるけど、今年はリューくんたちもいるし、もっと楽しくなるよね!
「あれ?」
部屋を出ると、いつも笑いかけてくれるお兄ちゃんがいない。そういえば、こんな時間まで起されないのも初めて・・・。どうしたんだろう?
「う~、あ! 今日はゆっくり寝てていいってことだね! じゃあ、おやすみなさ~い! うきゃあ!」
うう、酷いよ~。なんでまた水が振ってくるの~、レーチェル様~!
「おはようございます、レーチェル様・・・。」
「あら、おはようレミー。今日は随分遅かったわね。それに寒そうね。」
ニコニコって笑いながらそういうレーチェル様。絶対わかっていて言ってるよ~。わたしだってこんな寒い日に水なんてかぶったら寒いに決まってるよ~!
「はい、何故か突然水が振ってきました・・・2度も。」
「あら嫌だ。雨漏りでもしてるのかしら。ちゃんと直しておきなさいね。」
レーチェル様~、雨漏りは晴れてる日にはきっとしないと思うの。・・・しないよね?
「あの・・・それで今日は?」
「ん? 今日はいつもどうりに動いてちょうだい。最近忙しくてね~。じゃ、お仕事頑張ってね!」
えっ!? 毎年この日は私が祝ってあげるって仕事は(レーチェル様の分もわたしの分も)入れないでくれてるレーチェル様なのに。ひょっとして、今年は忘れられてる~~~!?
「はぁ・・・」
らしくもないと言われようとついつい出てしまうため息。夕方になったけどレーチェル様が思い出すことは無く、お兄ちゃんもどこに行ったのかわからないし・・・うう~、寂しいよ~。
わたし、このまま忘れられちゃうのかな? 日が沈んで夜になって、それでも何にも変らない。わたしなんか変なことしちゃったの? もう、わたしは誰からも必要とされていない?
コンコン、と突然鳴ったノックにはじかれたようにわたしはドアを開ける。ひょっとしたら・・・! でも、そのままわたしの意識は暗転して?
「悪いな、ちょっと乱暴な方法だが勘弁してくれ。」
なんかリューくんの声を聞いたような気がした。
「おい、リュウト! 貴様は一体レミーになにをした! ちっとも起きないじゃないか!」
「もうそろそろ気づくって。妹が心配なのはわかるが、少しは俺も信用しろ。」
・・・お兄ちゃん? リューくん?
「・・・んっ。」
「おお! 気がついたか! レミー!」
「ここ、どこ?」
まだ、ぼんやりしてる視界だけど、ここわたしのうちじゃないよね?
「勿論、パーティ会場だ! 誕生日会のな。」
その言葉にわたしの意識は一気に覚醒したの! わたしの誕生日会!? 聞き間違いじゃないよね!?
目を開くと視界いっぱいの料理。綺麗な飾りつけ! それに・・・リューくん、あーちゃん、まーちゃんにレーチェル様。勿論お兄ちゃんもいるし、コーリンさんや忙しいはずのめーちゃん・・・アーくんもいる!
「うう、みんな覚えていてくれたんだ。レーチェル様はとぼけてたし、お兄ちゃんはどこに行ったかわからないし、わたし寂しかったよ~!」
「えっ? 俺はちゃんとテーブルの上にメモを置いておいたはずだが? 会場の準備をしてくるって・・・」
へっ? わたし、そんなの見てない!? ふと、レーチェル様を見ると
「あら、じゃあ風にでも飛ばされたんじゃないかしら?」
レーチェル様、わたしの家はそんなに風通しよくないよ~。たぶん・・・そうなんだよね? なんかみんな(めーちゃんは笑ってるけど)もちょっと呆れ顔でレーチェル様を見てるし。
「あれ? そういえば、わたしなんで気を失ったの?」
「ああ、それはリュウトの奴がな・・・」
わたしがリューくんを見ると、リューくんはちょっと慌てて
「そ、そもそもこの計画を立てたのはメイとレーチェルだぞ! まぁ、この2人に計画を立てさせた俺たちの落ち度といえなくもないが・・・」
「あら? リュウトくん、それはどういう意味?」
「リュウト殿? 私をそんな風に思っていたのですか?」
めーちゃんとレーチェル様の目が全然笑っていない笑顔にリューくんの顔色は悪くなっていく一方。リューくんって決めるところはバシッって決めてカッコいいのに、なんで普段はこうなんだろうね?
「リュウトも渋ってはおったのだ。そう怒らないでやってくれ。」
そう言いながら近づいてきたあーちゃんはニコニコと本当に機嫌がよさげで
「ん? わたしは別に怒ってないよ?」
「そうか、ならば良かった。あれでもリュウトはこの日のために走り回っていたのだぞ。・・・ちょっと妬けてしまうほどにな。」
最後にクスって笑っておめでとうと付け加えてくれたあーちゃんはリューくんを助けに戻っていった。それじゃ、わたしは・・・
「アーくんも来てくれたんだね!」
「ふん、リュウトの奴に引っ張ってつれて来させられてな。」
アーくんが本気ならリューくんだってつかまえられないと思うんだけどな? ねぇ、こーちゃん?
「さぁ、どうでしょう。私からは申し上げられませんわ。」
う~、ニッコリと笑うこーちゃんは教えてくれそうもない。でも、たぶん・・・アーくんもちょっとはお祝いしてくれているんだよね?
「ほらほら、まだ始まっていないんだから♪ じゃ、とりあえずはレミーに一言言ってもらいましょうか!」
レーチェル様に押されてわたしは会場の中央へ・・・わたしから言うことは・・・
「みんな! 本当にありがとう! 今日はちょっと寂しかったり、悲しかったり、驚いたりしたけど・・・でもね、凄く嬉しかったよ♪」
わたし、本当に幸せだよ~!!
12月24日はレミーの誕生日。日本ならクリスマスイブで人が集まるかは微妙ですが、この世界にはそんなイベントはないようです。
レミー「実際にはあるにはあるみたいだよ~。ただ、クリスマスの方が大事って言うだけ。まぁ、天使のわたしには関係ないけどね♪」
まぁ、関係ないと言えば無いのか? しかし、メイとレーチェルに計画をやらせるとサプライズになるっていうのはほぼ確定のようです。
レミー「レーチェル様は吃驚させるの好きだから・・・」
趣味・・・まではいかないのでしょうが、迷惑なことには変りませんね。では、次回は!
レミー「は~い、わたしが紹介するよ~。部屋で休んでいたリューくんの元を訪れた人は誰!? 竜神伝説第3部3章『リュウトの弟子』ええ~、リューくん弟子とるの!? って感じみたい。じゃ、次回も見てね~! レミーのお・ね・が・い♪」




