1話 「習性」
もうすぐ日も昇るという明け方。日の出と共に起きるリュウトとアシュラもまだ夢の中・・・リュウトと違いアシュラは横になっておらず木に寄りかかって寝ているが・・・。
そんな時間にゴソゴソと蠢く怪しい影。その影がリュウトたちの方へゆっくりと忍び寄る。・・・そして
「ふにゃあ!」
飛び起きたリュウトとアシュラの武器が怪しい人物の喉元に突きつけられたが
「・・・レミー?」
「うう、ひっどいよ~・・・リュ~く~ん、ア~く~ん。」
う~ん、そうはいってもこれは自衛の為の行動だからなぁ。
「・・・リュウト、後は任せた。」
アシュラ・・・たまには説明役を・・・するわけないな。
「ごめんな、レミー。だがこれは習性なんだよ。」
「習性?」
「そう、戦士のな。寝ている間は無防備になるから近づいてくるものがいた場合は即座に攻撃が出来るように・・・体が覚えてしまっているんだ。まぁ、俺の場合は旅先限定だがな。」
いきなり斬りかかることはないとは思うが、安全のために寝ている俺たちには近づくなって言っておかなかったのが悪いな。
「そ、それってちゃんと寝ているの!?」
「う~ん、普通の人よりは眠りは浅いとは思うけど・・・」
「リューくんもアーくんも遅くまで見張りもやってるのに・・・」
お! レミーがそれに気づいているとは意外だな。・・・なぁ、レミー? その哀れみに満ちた目はやめてくれ! 俺たちは可哀想な子じゃないんだぞ?
「しかし寝起きの悪いレミーがこんな・・・時間に?」
ちょっと待て? いつもは俺たちがあんなに苦労して起しているレミーがなんでこんな時間に起きてるんだ? ま、まさか!?
「ん? どうしたの、リューくん?」
「まさか、アキに何かあったのか!! なんでレミーがここにいる? いや、なんでこんな時間に起きてるんだ!」
「きゃ! ちょ、ちょっとリューくん落ち着いてよ!」
これが落ち着いていられる状況か!
「いや~、偶々早く目が覚めたから寝起きのドッキリ? リューくんやアーくんの寝顔も見てみたかったし♪」
・・・レミ~、俺たちがこうやって神経を張り詰めているのは自分を守る為でもあるがキミたちを守る為でもあるんだぞ?
「頼む、頼むから今後そういうことはやらないでくれ。俺たちにとっては本当に心臓に悪いんだよ、これ。」
「そうなの?」
「そうなの! はぁ、とりあえず飯の支度するから・・・そこらへんで待機していてくれ。」
わざわざ起こしに行かなくてもアキならもうそろそろ起きてくるだろうしな。・・・なんで俺が毎回食事を作るのだろうか? そうだな、他に作らない奴1名と作らせてはいけない奴2名しかいないからだな。
「ム~、たまにはわたしが作ろうか?」
「・・・俺はまだ自殺願望はないから大人しくしていてくれ。」
「ム~! それってどういう意味!?」
どういうもこういうもない。そのままの意味だ。食べ物に平然と毒物を混ぜるキミの料理は食べたくない・・・天使って毒が効かないのか? 味付け自体も毒だと被害者の悪魔は言っていたが。
「りゅ、リュウト・・・その、おはよう。」
それからしばらくして起きてきたアキは昨夜のことを思い出したのか真っ赤になって挨拶をする。
「ん、おはよう。今朝は珍しく! レミーが起きてるから食事が出来るまでそこで待っていてくれ。」
「ムッ? なにかあったのか? そなた・・・怒っているのか?」
「・・・アキは知らないほうがきっといいとおもうぞ。」
危険はないが・・・呆れることになるからな。
「・・・なんとなくわかった。しかし、いつもすまんな・・・たまには私が・・・」
「それはいいから、座っていてくれ!」
なんで俺の周りには料理の出来ない(という次元ではない)女性陣しかいないのだろうか? まぁ、それでも・・・
「ん、いつもながらリュウトの料理は美味だな。」
こうして極上の笑顔を見られるんだからよしとしようか。なんとなく男女逆転してる気もしなくはないが、相手は女王様。これもありだろう。
章タイトルは緊迫ですが、第1話はほのぼのと。第2部は展開の都合上この手の話が書きにくいですからたまには・・・。
リュウト「俺にとっては緊迫の内容なんだが? ドッキリといい、料理といい! なんで料理で命の危機を覚えないといけないのだろうな。」
きっと、どんな料理でもうまいうまいとお世辞を言ってきた兄と、妹に一切料理を教えなかった姉の責任かと。
リュウト「あの2人か。姉は・・・危ないから、兄の方に今度あったら文句を言うとしよう。」
あなたの生活に与える影響は姉の方が大きいですけどね。
リュウト「・・・それを言わないでくれ(泣)」