最終部8章「修羅の優しさ」4話 「正常性」
「ククク、クハハハハハ!」
奴の目からはどう見えただろう? 吹き飛ばされて突っ込んだ木々は粉々に跡形もなく粉砕され、その粉塵の中から響く笑い声か
「僕には理解できないね。まさか今のは油断しただけなどと言うつもりはないだろう」
油断? クハハ、油断して吹き飛ばされただけならばここまでは笑わん。戦士が、修羅が笑う理由など1つだろう
「目の前に心躍る戦いが! 命をとして結果の分らぬ戦いが出来る強敵がいて喜ばぬ理由がどこにある? 誰もが歓喜の笑いを上げるべき場面だろう」
「わけが分らないな。僕の実験のために命を喜んで捧げる実態体のようなものかな? けど1つだけ明確な間違いがあるよ・・・これは結果が見えない戦いじゃない。僕が圧勝することは決まっている」
交わらぬ主張。だが、そんなことはどうでも良い。そもそも初めから交わるとも思っていなければ、議論などで決着を付けようなどとも思っていない。勝負を付けるものはあくまでも
「その答えは拳で見せて見せろ」
拳にものを言わせるためには当然近寄らねばならぬ。まして大きさ、つまりはリーチで負けているオレは奴の懐に入らねば話にならん
「何度やっても同じだよ」
先ほどと同じように拳が放たれる。だが、同じなのは奴の行動だけだ。その速度は速く、その力は強大。確かにそのどちらもオレよりも上と言えるだろう
「えっ・・・」
ただ目標に向かって放たれただけの拳など避けるのはそう難しくはない。動かぬ的を狙っているわけではないのだ・・・先ほどのようにお互いが故意にぶつけ合うのならば別だがな
打ち出された拳をかいくぐるように懐に入り込み、素人が慌てて振り払うように払われた腕を身をかがめることでかわす。そして
「修羅・・・烈風斬!」
足を払い、崩れた体勢を打ち上げるために腹部をかち上げる。巨体故の重さはあるが、そのようなものはこのレベルの戦いとなれば意味はすでに無い。打ち上がった体を追うように飛び上がり爪での八連撃、そしてそのまま突き刺すように打ち下ろす! 慣れ親しんだ何時もの攻撃だが試しにはちょうど良かろう
「っ・・・だが、この程度!」
・・・ダメージは確かにあった。だが、回復速度が速い。なるほど、つまりはオレのエネルギーの回復速度とリュウトの再生能力を持っている。いや、それを強化しているのか
「言っただろう? この体はキミも竜神君も超えた怪物だと! 僕の研究の集大成なのさ」
「・・・なるほど、外側だけはそこそこ。だが、それだけでは足りんな。成果を誇るならば足掻いて見せろ。もっと、もっとオレを楽しませろ!」
ニヤリとオレは笑う。持久戦ならばオレの得意とするところではあるが、奴はどうだ? 悪くはないスペックと話にならん技量、それが膨大な時間でどう変化するのか・・・ククク、十分に楽しめる戦いと言えよう。だから
「さぁ、死合を始めようぞ」
これから始まる楽しき時間、リュウトのようには行かぬとも最低でもオレに冥府の入り口を見させる程度には楽しませて見せろ!
アシュラとトワメル、はたしてどちらが正常なのか
アイ「戦闘狂とマットサイエンティスト、どっちも異常だよね!?」
えっとタイトルをいきなり否定しないで欲しいのですが
アイ「えっ? 正常性はどこに行ったって話じゃないの?」
・・・まぁ、それでもいいか。元々アシュラに戦闘におけるまともを期待する方が無理と言うことで
アイ「味方だから頼もしいけど敵だったら凄く怖いよね」
一応最初は敵だったんですけどねぇ。当時のとはいえ三人がかりでギリギリだった強敵、今でも変わらず強キャラをやってくれています。と言うところで今回はお開き、次回もまたよろしくお願い致しますね~




