4話 「ハーフ」
「ム~、わたしの相手はおじいちゃんか~。」
リューくんたちはみんな強そうな相手だったのになんでわたしの相手はこの人なんだろう?
「ほっほっほ、見た目で判断するものでないぞ。そうじゃな、頭の悪そうなお前にワシが知恵を授けてやってもいいぞ。」
「ム~! そんなのいらないもん!」
それじゃあわたしが馬鹿見たいだよ~! アレ? そんなようなこといわれたっけ?
「ほっほっほ、残念残念。まぁよい、ワシの名はメフィストフェレス。これでも悪魔の大公だ。」
えっと、名前を名乗られたら名乗り返さないといけないんだよね?
「わ、わたしはレミーだよ。えっと・・・」
「ほっほっほ、馬鹿正直に答えようと隙を見せる。やはり天使とは愚かよ。」
えっ!? きゃああぁああ! 突然降りしきる雷にわたしは打たれる。こ、これってアーくんがたまに使う『サンダーレイン』? ってことは雷属性・・・。う~、わたし(水の属性だから)雷苦手だよ~。
「う~、でも負けないよ~! ウォータランダムショット!」
邪竜神戦で使ったウォータショット乱れうち・・・レーチェル様が新しく名前をつけてくれたの。あまり仲間がいる場所では使わないことって言われたけど、今なら平気だよね?
「なるほど、なるほど。たしかに手数は多い。だが、それだけでは当たってやれんのぉ。」
「ええ~!?」
な、なんで? 消えた!? 移動系の技は水か風じゃないと使えないはずなのに・・・
「ほれ、隙ありじゃ! うむ、その様子じゃとわかっておらぬな? たしかに通常自分の属性以外は使えぬものじゃ。だが、世の中にはそれを覆す手段もまたあるのじゃよ。もっとも、死に行くおぬしには関係ないことじゃな。」
なにを・・・言ってるの? なんかよく・・・聞こえない。さっきの一撃・・・効いたなぁ。あれ? 急に・・・寒く・・・なってきた。・・・・・・温かい? これは・・・リューくんの・・・力?
初めに感じたのは違和感。それは止めを刺したはずの天使から感じた。
「はて? 例え生きていたとしてもあの傷では何も出来んはずだが?」
もし、死後に意識というものがあるのならメフィストフェレスはこう思っただろう。『何故、もっとしっかりと止めを刺しておかなかったのかと』
ゆらりと揺れるように致命傷だったはずのレミーが起き上がる。いや、すでにその傷は致命傷とはとてもいえない程度までふさがっている。そしてなによりも一番の変化はその羽。・・・純白から漆黒に染まった羽である。
「な!? ま、まさか・・・貴様は・・・」
レミーは何も答えない。いや、その虚ろな瞳は何かを写しているのかどうかさえも怪しい。そしてペロッと口元を舐めたそのしぐさは・・・顔自体は変っていないにもかかわらず、いつもの陽気なレミーではなく、むしろあのルーンを思わせるような妖艶さがあった。
「・・・ファントムアロー」
けだるげな声でレミーが言ったのはその一言だけ。次の瞬間には無数に降り注ぐ、矢の雨が現出していた。
「くっ!?」
慌てて結界を作り出すメフィストフェレスだが意味がない。なぜなら無数に降り注ぐ矢は全て・・・イリュージョンアロー、幻影の矢だったのだから。
「貴様は・・・光と・・・闇の・・・?」
最後まで言葉を継げることも出来ず、メフィストフェレスの体は崩壊していく。そして、それを見届けたのかレミーもまた倒れこむのだった。
「アレ~? わたし、一体どうしたんだろ?」
たしかわたしは不意をつかれて攻撃されて・・・あれ? その後のこと覚えてないや? うん、敵の姿も見えないし、きっと無意識のうちに倒したんだね! さっすが、レミーちゃん♪
レミーの秘めたる力、どうだったでしょうか? その正体はここで語らずともこれまで読んでいてくれている方にはお分かりかと思います。
リュウト「たしかに凄いけど、自分の意思で使えないんじゃあまり有効じゃないよなぁ~。」
・・・自分の意思で使えない強力な力を持つ人の代表格が言うセリフじゃないでしょ?
リュウト「いや、俺のはどっちかというと、俺ではなくてリュムの力だからな。」
それもそうですが・・・
リュウト「まぁ、なんにせよレミーの本当の力を一端を見たってことだな。次はアキか・・・信じているからな、アキ!」
・・・はっ! また締めの言葉を奪われた!?