4話 「封印解除」
ザッザッ・・・とわざと足音をさせて俺は魔王に近づく。そして
「先ずは攻撃を仕掛けた非礼をわびよう。だが、そちらも早々に罠にはめてきたからおあいこにしてもらいたいな。」
さすがの魔王もこれは予想外だったと見え、唖然と固まる。
「貴様、何を考えている?」
「元々、あなたを倒しにきたわけではないということだ。・・・魔王マモン。」
ピクリと魔王の眉が動く。容姿から記憶にある名前をいったのだがどうやら正解だったようだ。先ずは精神的に優位になること。これが基本だ。
「我が名を知っているか。なるほど、思ったほど無知ではない様だ。だが、我を倒すのでなければ何用だ?」
「無論、地上への攻撃をやめさせる為。」
正直に言えば、この手の舌戦は俺ではなくアキの領分だと思うのだが、どうも俺が絡むとアキの能力は低下するらしい。勿論、アシュラやレミーに任せられるものでもない。特にレミーにはな。
「ならば我が命を絶つのも目的の一つだろう。」
「つまり予想どうり魔王たちが今回の地上侵攻を指示していた訳か。」
しまった。と眉をひそめるマモン。先ずは欲しい情報を手に入れることは出来た。かなり信憑性のある予想とはいえ、俺としてはやはり確証もなしに戦いたくはなかったからな。後は
「ならば問う。侵攻をやめる気は?」
「ない。」
はっきり言ってきたな。この状況下ですこしでも悩むなら話し合いもありかと思ったが、さすがにこれは交渉の余地はなさそうだ。
「交渉・・・決裂かな?」
「そもそも我相手に交渉をするつもりと言うのが不敬だな。」
お互いの主張はけして交わることはないだろう。ならば・・・仕方がないか。俺は正義じゃない。世界のために悪を討つ! なんてことは言わないが、どうぞ踏みにじってくださいなんていうような奴でもなくてな。自分自身の譲れぬものの為なら戦いも厭わない。
「リュム・・・第一封印、解除。」
精神世界を破壊するときに使えるようになったリュムの封印解除。リュムが言うには(未使用の能力説明は出来ないが、発動済みの能力の説明は出来る模様)第一封印の解除条件は俺が真に主と認められることらしい。これが肝心なところをぼかされた為わかりにくいが表層意識ではなく、本能レベルでの認識だとか何とか?
まぁ、そんな話は今はどうでもいいことで・・・肝心のリュムの新しい能力は『能力の増大』である。つまり筋力、内部エネルギー、思考速度などあらゆる能力の強化なのだが一番恐ろしいのはそれが使用者だけにとどまっていないと言う点だろう。
リュム・・・竜神剣は精神剣。つまり決まった定形も大きさも存在しない。見える形でも見えない形でも世界全てに触れることもできるのだ。もっとも、範囲と人数が大きくなるにつれ加速的に使用者である俺の体力消耗率も増えるのでこの場にいる仲間ぐらいにしか使えない・・・っていうか使う意味もなく、今の俺とリュムでは精々2~3倍程度が関の山だが。
「これは・・・力がわいてくる?」
「うわ~、リューくんすご~い!」
「ふん、これが竜神剣の力か。魔王共も恐れるわけだ。」
口々に感嘆の声をあげる仲間たち。そして苦虫を噛み潰したような表情のマモン。きっと、奴らが恐れるのは俺じゃない。俺どころか、アシュラ・・・魔王たちさえもひょっとしたら上回るかも知れない力を秘めたこの剣。もし、俺が使いこなせたら・・・魔王たちから見れば俺こそが絶対の勝利を揺るがせる不確定要素な訳だ。
「さて、じゃあ改めて勝負開始と行くか!」
竜神剣の封印その1がついに開放されました!
アキ「しかし精神世界で開放したのだろ? なんで再び開放を??」
ちょっと先の話でも出てくるのですが・・・まぁこれぐらいならネタバレでもないか。開放状態の持続は体力を消耗するため普段は封印してるのです。
アキ「開放状態の維持だけで体力を消耗する剣か。便利なんだが不便なんだか。」
まぁ、それだけ強力ってことです。それもまだごく一部の力しか使っていなくてアレです。(同時に致命的な弱点も内包しているとも言えますが)
レミー「えっへん! これでわたしも頭よくなる~!」
思考速度が上がったからと言って頭がよくなるわけじゃないんだけどな~。(考える速度が速くなってもその考えそのものには変化ないんだから。)