6話 「それでも」
涙を一杯にためて笑顔でコクトさんに走りよっていったレミーと入れ替えでリュウトが戻ってきた。
「ふぅ、さすがにきつかったな。」
「わざと喰らったりするからだ。初めから本気でやっていればもっと楽だったろうに。」
そういいながらもリュウトならそんな道は選べないんだろうなって私は思う。
「それじゃあ意味がないからな。・・・っ!? いててて!」
「おい、リュウト! 大丈夫か!? レミーを呼び戻してくる! 先に治療をしないと・・・」
私が思っていたよりもリュウトの怪我は酷かったみたい。感動の再会をしているレミーには悪いけど、こっちが優先だわ。
「いや、大丈夫だ。これぐらいなら自分で治療できる。」
へっ? じゃあなんで戦闘中はなんの処置もしなかったの? そんな私の心を見透かしたようにリュウトは言う。
「一対一・・・意地と意地のぶつかりあいに回復魔法は無粋かと思ってな。それにコクトも使えなかったのか使わなかったのかはわからないが、向こうが使ってないのに俺が使うのも・・・な。」
ホントにリュウトは無駄に心配ばかりかけて。レミーの心だけじゃなくて私の心だって守って欲しいなって思うけど・・・あはははって苦笑するリュウトを見るとそんなこといえそうもない。だって・・・リュウトの内心の葛藤がわかっちゃったから。
「本当にそなたは馬鹿だ。・・・大馬鹿だ。」
「ごめん。・・・難しいな。みんなの心と体を守るって。俺が本当に守りたいのは・・・」
「ん? 守りたいものは・・・なんだ?」
えっと、私とか!? りゅ、リュウト~?
「なんだ、いいところで寝てしまったのか。」
ちょっと残念。でも、お疲れ様。今はゆっくり休んで・・・私はそんな優しいリュウトが好きなんだから・・・。
「お兄ちゃん!」
あの目! 間違いないよ! 昔わたしを見てくれていたときの目だよ! リューくん、本当にあのころのお兄ちゃんを・・・
「レミー・・・すまなかった。俺はとんでもない勘違いをしていたようだな。」
そうだね、違うなんて言えないよ。お兄ちゃんの勘違いのせいで泣いた人一杯いる。・・・わたしを含めて
「うん、すっごく迷惑な勘違いだったね。でもね、そんな勘違いしちゃったのはお兄ちゃんが一人だったからだよ? わたしもね、よく間違ったことするの。もし皆が近くにいてくれなかったらきっと・・・。わたしには間違えた時に教えてくれる人たちがいる。だから、お兄ちゃんもね?」
「今更俺がどんな顔をしてあの中に入れると言うんだ・・・。レミー、悔しいけどお前の兄は・・・あいつだった。そういう・・・」
「違う! たしかにリューくんも大切。お兄ちゃんみたいだと思う! でもね、コクトお兄ちゃんだって大切なんだよ? 誰にも代わりは出来ない。・・・大丈夫、あーちゃんもアーくんも・・・リューくんもきっと受け入れてくれる。」
それは都合のいい甘い夢なのかもしれない。でも、わたしはきっと受け入れてくれると思うんだ。
「リュウト・・・とか言ったか? あいつは凄いやつだな。殺しても殺し足りないほどの恨みを持っているはずなのに、あいつの目からはそれを感じられなかった。いやむしろ感じたのは・・・。まぁいい、それにお前を心から守ろうとしていた。そのために本当に自分自身を賭けることが出来る・・・。」
「ん~? リューくんが優しいのは確かだけど、リューくんだって結構わかっていなかったりするよ? 超がつくほど鈍いからあーちゃんなんて何回泣かされているかわかんないもん。そういう意味ではよく似てるよ、お兄ちゃんとリューくんは。」
わたしのその言葉にお兄ちゃんは意外そうに目を丸くして、静かに笑ったの。
今回はリュウト&アキサイドとレミー&コクトサイドでお送りしました。どちらがより印象に残ったでしょうか? ・・・一人ハブられている人は気にしないで下さい。
アシュラ「かかわりにならなかっただけだ。哀れみを込めるんじゃない。」
どっちもいい雰囲気ですから出て行きにくいですもんね~。
アシュラ「そうではない。・・・オレが自ら進んであのような話に関わると思うのか?」
いえ、まったく♪
アシュラ「どうやら貴様とは一度腹を割って話す必要がありそうだな。」
え゛!? あはは、では今回はここら辺で~!
アシュラ「まったく、逃げるぐらいなら挑発をするんじゃない。」