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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
2部7章『妹と兄』
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2話 「レミーの過去」

 

 わたしにはお父さんやお母さんの記憶はない。


 お兄ちゃんの話によると天使のお母さんと悪魔のお父さんはわたしが小さいころに起きた戦いに巻き込まれたのだと言う。その戦いは天界と魔界が争った戦いでお父さんもお母さんもどっちの味方もできなかった。・・・そしてある日突然姿を消したのだと。


 二人が何故姿を消したのか・・・それはお兄ちゃんにもわからないと言う。お兄ちゃんは戦いたくないから逃げたんじゃないかって言っていたけどわたしは違うと思う。


 悪魔と天使・・・いがみ合う種族でありながら共に生きることを選んだ人たちがお兄ちゃんと幼いわたしをおいて逃げたりはしないと思う。それは後にレーチェル様もそう言ってくれた。でも・・・事実としてはまだ子供だったお兄ちゃんと私だけが残されたと言うことに変りはなかったの。


「こいつ、天使の振りしてるけど実は悪魔なんだって!」


 お兄ちゃんは見た目は天使のわたしを守る為に自分にとっては都合の悪い天界を住処に選んでくれた。・・・でも天使や神だって必ずしもいい人だというわけではない。特に多くの天使にとって悪魔は憎むべき敵だったから・・・。


「わたしは・・・わたしは・・・」


 天使だって言うのは簡単だった。でも悪魔だってことを否定することは出来なかったの。だってそれは嘘になっちゃう。・・・お母さんが愛したお父さん、悪魔でありながら天使を愛したお父さん、そして悪魔の見た目を持つお兄ちゃんを否定することになっちゃう。


「こら~! レミーを虐めるな~!」


「うわぁ~!! あ、悪魔が襲ってきた~~!!」


 そんなわたしをいつだって守ってくれたのがお兄ちゃんだった。お兄ちゃんはいつだってわたしが困った時には駆けつけてきてくれた。


「大丈夫だったか? レミー。」


「うん・・・ありがとう、お兄ちゃん。」


「レミー、今度あんなこと言われたら『悪魔なんかじゃない』って叫んでいいんだぞ?」


「駄目だよ・・・わたしは天使で悪魔なんだもん。嘘はついたらいけないんだよ。・・・悪魔のお父さんもお兄ちゃんもわたしの大切な人だもん!」


 そう泣きながらいうわたしにいつもお兄ちゃんはちょっと悲しそうな笑顔で


「そうか・・・なら何かあったらすぐ兄ちゃんを呼ぶんだぞ? 兄ちゃんはいつだってレミーの味方だから・・・」


 って言ってくれた。そんなお兄ちゃんが急にいなくなったのは・・・それからすぐのことだった。




「ヒック、ヒック・・・お兄ちゃん・・・お兄ちゃんどこ? ねぇ、助けてよ? わたし・・・凄く寂しいよ・・・。わたしが・・・わたしがいつもメソメソ泣いてたからいけないの? じゃあ・・・わたしこれからいつも笑顔でいるよ? だからお願い・・・帰ってきてよ・・・お兄ちゃん。」


 その日から・・・わたしは涙を見せないようにしてきた。絶対じゃないけど・・・泣いちゃったらお兄ちゃんが帰ってきてくれないような気がしたから。だから、わたしはいつだって笑顔でいなくちゃいけないの。


「ちぇ! こいつ殴られても笑顔で気味が悪いや。やっぱり悪魔だな。」


 でも・・・それでもわたしは虐められ続けた。虐められてそれでも笑顔でい続けて・・・何が悲しくて何が楽しいのかもわからなくなって


「おなか・・・空いたな。なんか・・・凄く寒いな。わたし・・・死んじゃうのかな?」


 それでも別にいい気がしたの。お兄ちゃんに会えないなら・・・生きていても意味がないと思った。でも・・・


「・・・温かい?」


「気がついたみたいね・・・よかった。さすがの私ももう手遅れかと思ったわ。」


 目が覚めたわたしにニコッって笑いかけてくれたその笑顔は女神様みたいだと思った・・・まぁ実際そうだったんだけどね。


「私はレーチェル=フランよ。あなたは?」


「わ、わたし・・・レミーです。レミー=エンジェル・・・あ、あのわたしは天使じゃ・・・」


 本当は天使っていっても悪魔っていっても嘘じゃないんだと思うけど、そのときのわたしには天使とは名乗れなかった。


「ん~? そういえば少し違和感があるわね? あ~、噂の天使と悪魔のハーフちゃんかな? 大丈夫、私はあなたのことを虐めたりしないから。種族なんて何の意味もないのよ? 種族に関係なくいい子もいれば悪い子もいる。悪魔も天使も鬼も人も・・・神だって、みんな生きてる同じ生き物なのよ。」


 この言葉、それからレーチェル様は口癖のように言ってたけど、きっとわたしを慰めてくれていたんだと思う。そして


「ねぇ、私もね・・・こう見えても神なのよ。あなた・・・天使として私のところに来る気ない? 私の権利と力・・・全て使って守ってあげるから。」


 こうしてわたしはレーチェル様に仕えることになって・・・リューくんやあーちゃんにまーちゃん・・・アーくんに出会った。今、わたしは本当に幸せだと思う。だから・・・




 深層魔界にいつの間にか降り出した雨が冷たく体を濡らす。・・・でも今のわたしはもう大丈夫。みんなと一緒ならどんな不幸にだって負けないもん!


「もうわたし・・・お兄ちゃんに守ってもらわなくても大丈夫だよ? だから今度はわたしが守る番。お兄ちゃんが幸せになる番なんだから・・・帰ってきてよ!」

いつでも笑顔でムードメーカーなお気楽天使のレミーに隠されていた過去と思い。ちょっとレミーに対する評価が変ったでしょうか?


アキ「そうだな・・・一番辛い過去を背負っているのはレミーなのかもしれないな。」


リュウト「ひょっとして、あの御馬鹿さ加減も演技なのか?」


いえ・・・あれは素です。レーチェルの教え方がスパルタなのと本人の資質の悪さがあいまって殆ど覚えられないと・・・。


アキ「ス、スパルタなのか・・・レーチェル殿は。」


それゆえにお抱えの天使は殆どいないみたいですね。一応かなり力を持っているほうの神なんですが・・・。あまりの過酷さに逃げ出したり精神的に病む天使もいたとかいないとか・・・。


レミー「うう~、だからわたし言ったよ~! レーチェル様の性格はきついって・・・」


優しいところは優しいんだけど・・・ギャップがね~。

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