7話 「不完全」
カツーン、カツーンと響く俺の足音。・・・無論、本来ならこんな歩き方はしないんだが、ママナを安心させる為にはこのぐらい大げさな方がいい。後は・・・
「で、お前は何時まで隠れているつもりだ?」
「ふにゃ!?」
妙な声を出しながら天井から落っこちてきたのはレミーだ。・・・隠れているのは気づいてたが何も落ちなくてもいいのに・・・蝉か何かじゃないんだから。
「リューくん・・・気づいていたの?」
「そりゃあな・・・で、なんでレミーは天井なんかに張り付いていたんだ?」
俺とママナの話を聞いていたようだからもう誤解は解けたとは思うんだが、レミーのことだから直接話さないと不安と言うのも事実だ。
「う~ん、アーくんに酷いこといわれたまーちゃんを慰めようとしたんだけど、なんていっていいのかわからなくて・・・迷っていたらリューくんが来たから・・・」
それで天井に隠れていたってわけか。確かに隠れるところなんてそこぐらいしかなかっただろうけど、そもそもなんで隠れるかな? まぁいい、レミーにしてはまだまともな判断だと言うことにしておこう。
「でも、さすがリューくんだね。以前アーくんがやったときはわたしまったく気づけなかったよ?」
アシュラにやられていたら俺も気づかないだろうけどな。レミーの気配隠しはまだまだ未熟だ。とはいえ、そこでそういうのは得策ではない。
「まぁな。」
とだけにとどめておこう。
「・・・ねぇリューくん、ちょっといいかな? さっき、まーちゃんと話していたことだけど・・・アーくんが守りたいのはわたしって本当?」
まぁ、当然本人としては気になるよな。だが、それに対する俺の答えはこれしか言えないんだが、
「さぁな、俺はアシュラじゃないからはっきりとしたことは言えないぞ? 気になるならアシュラに直接聞くことだな。・・・あいつが素直に話すとも思えないが。」
ちょっと意外なリューくんの言葉。そうだよね、リューくんは優しいけどいい加減な言葉で慰めてくれるんじゃない。・・・だからこそ優しいのかな?
「そうだよね・・・本当のこと知っているのはアーくんだけか。・・・でも、やっぱりわたしなんかをアーくんが心配してるなんて信じられないよ。わたしだって、そりゃまーちゃんよりは強いと思うけどアーくんに比べればずっと弱いし、いっぱい迷惑かけちゃってるし・・・」
自分で言ってその現実にちょっと悲しくなっちゃった。いつのまにか溢れた涙が頬を伝わる。
「・・・俺もアキも、レミー・・・キミもアシュラだって胸を張って完璧だといえる存在じゃないだろう?」
リューくんが優しく諭すように言う。・・・完璧じゃない? あのアーくんも?
「戦いもそれ以外もそうだ。俺やアシュラは回復は苦手だ・・・アキもな。レミーがいてくれるおかげでどれだけ助かっているか。アキの魔法攻撃もなくてはならないものだ。・・・まして戦闘以外なら俺やアシュラなんて欠点だらけだぞ。」
リューくんもアーくんも完璧じゃない? そうだね、わたしはリューくんの弱さを知っている。同じようにアーくんにも弱さがある? でもそれが何の関係があるのかな??
「人は・・・いや俺たちは人じゃないが・・・まぁ、生きるものは皆、自分が持っていないものに惹かれるものさ。不完全な自分の欠けてしまった部分を捜し求めるように・・・。アシュラのかけている部分なんて明確だろ? それを一番強く持っているものもな。」
アーくんの欠けているもの・・・私にはわからないけどリューくんには見えている? そしてそれを持っているのが・・・わたし?
「わからない。・・・わたしにはわからないよ。でもそうだとすると・・・リューくんの欠けたものをあーちゃんが持ってるの? あーちゃんが欠けたものはリューくんが?」
アレ? なんかリューくんが焦っているように見えるけど??
「ま、まぁ・・・俺もレミーと同じでアキの欠けたもののことは良くわからないが、少なくても俺の欠けたものをアキは持っている。・・・それだけが理由ではないが、きっときっかけはそれだったんだと思う。」
顔を真っ赤にしながらもちゃんと話してくれたリューくん。・・・ってことはわたしを慰める為の嘘じゃないんだよね? わたし、信じてもいいんだよね?
「じゃあ、本当にアーくんは自分の欠けたものをわたしにもとめているんだ。・・・必要としてくれているんだ。」
「・・・と、俺は思っているんだがな。さっき言ったとおりさ、本当のことを知りたいなら直接アシュラにな。」
ううん、きっとリューくんがそう思うならそのとおりだと思う。・・・ちょっと悔しいけど今一番アーくんに近いのはリューくんだもん。・・・私の目から流れる涙は変らない。ううん、さっきよりもずっと量が増えてる。でも・・・悲しい涙じゃない。
「わたしは・・・わたしでいいんだよね?」
「・・・いや、もう少し頭を使って・・・」
「ム~! ひっどいよ、リューくん!!」
お気楽天使のレミーだって悩む時は悩むと言う話です。
レミー「え~!? わたしはいつだって悩んでいるよ~! 今日のおやつ、なんにしようかな? とか。」
・・・そういうのを悩みって言っているからお気楽って言われるんだけどな。
レミー「??」
まぁいいや。レミーの思い、アシュラの思い・・・それらが導くものは・・・もう少し先になります。そして次は彼女の悩みの解決の番。
レミー「リューくん! ここでカッコいいところ見せたらあーちゃんはもうメロメロ~だよ!」




