3話 「リュウトの限界」
「さぁ、そろそろ体も温まったころだろう?」
準備運動はそろそろ止めだと明確に言うアシュラ。そうだな、そろそろ勝負の時だな。
ギアをローからトップへと切り替える。・・・思ったよりもすんなり体をエネルギーが回る。予想していたような痛みも暴走もない。ただ自然に俺本人が驚くような力だけが残った。これが竜神の力なのだろうか?
「行くぞ・・・。」
光と風の融合。今までならこれは切り札だった。長時間維持など出来るはずもない技だったが、今では普通に使っていられる。・・・そうだな、今なら10時間は楽に維持できるだろうか。もっとも、これだけに費やせるわけではないのだかな。
ただアシュラに対して突撃をする。まるで時間が止まったような感覚・・・にもかかわらず自身の速度に感覚がついていかないような妙なチグハグ感。
バキィ!! 響き渡る音。最初はそれが何の音だかわからなかった。理解できたのは俺の体が後方の壁に叩きつけられて痛みが体に伝わった後だった。・・・俺はいつの間に殴られた? もし、この顔の痛みがなければ殴られた箇所さえも俺は認識できなかったに違いない。
「くっ!」
今一度、今度はファイントも含め、生み出した風の刃まで囮にして、サイドから斬り込む!
スカッ・・・空気を切り裂くような音。・・・いや、空気を切り裂いた音そのものだ。先ほどまでここにいたはずのアシュラはどこに行った!?
「どこを見ている? オレはここだ。」
突然目の前に現れたアシュラに首をつかまれ、俺の体は宙に持ち上げられる。そして・・・
「ぐはぁ!」
またしても気づいた時には俺の体は壁に叩きつけられていた。だが、それ以上におまけのように俺の腹部に叩きつけられたアシュラのひじの方がダメージは大きい。・・・つまり、俺がまったく認識できない速度で投げつけ、それに追いつきながら肘撃ちをしたってわけか。
「どうした? お前の力はそんなものなのか?」
俺を見下ろして笑うアシュラ。百年前の戦いを思い出す。あの時もこいつの化け物加減を思い知れされたが今回はそれ以上だ。俺も強くなっていたが、アシュラはそれ以上に強くなっていた。そして・・・こいつはまだまだ本気など出してはいない!
「くっ! 相変わらずの強さだな。だが、俺も負けるわけには行かない!!」
出し惜しみなどして勝てる戦いじゃない! 俺の全てを今出し尽くすんだ!!
そして5分後、まったく傷一つ、息切れ一つしていないアシュラと地面に膝をつき、竜神剣を杖代わりにして辛うじて立っている俺というシチュエーションになっていた。
この結果はある意味当然の結果だ。オレも魔界でも有数の実力者と言われる悪魔。オレがここの番人となって2000年、深層へ行く権利を得たものなど誰一人としていない。そして、この百年のオレの成長は今までにないほどの速度だった。・・・やはり、ライバルがいるということ。強くなる理由があるということの意味は大きいと見える。
百年前でさえオレとリュウトの力の差は大きかった。百年、眠っていただけで力を熟成させたリュウトとオレの差が開くのは当然と言える。つまり・・・これが今のリュウト=アルブレスの限界なのだ。
だが、オレは知っている。こいつの中に隠されたもう一つの力を。・・・いや、二つと言うべきか。ともあれ、オレを凌駕する可能性さえも秘めたこいつの真の力が目を覚ますとするならばこれからのはず。
さぁ、見せてみろ。オレをひきつけて止まないお前の力を。・・・竜神の力をな!!
さぁ、さすがアシュラといった感じの様相になってきました。リュウトの全力もアシュラには遠く及ばない。・・・アシュラの全力は見れそうもないな。
アシュラ「ふん、あの程度ならな。だが、オレの全力を見せる時もそう遠くはないだろう。」
まぁ、魔王戦も控えてますしね。それに深層魔界の強敵たちもこれから出てきますから。
リュウト「そんな奴ら相手に俺は戦わないといけないのか。頼れるのは・・・あいつか。」
そういうことです。さぁ、次回はリュウトの竜神の力が大爆発!? お楽しみ~^^