秋空「チャンス」
5話目です。少し長くなりすぎました。
私は俊介に恋をした。
俊介を想い続けて1ヶ月が経とうとしていた。
季節は秋。少し肌寒くなった。
私たちの制服も冬用に変わり、
空は秋晴れの綺麗な雲と共に流れていく・・・。
あの試合の後、俊介とは会わずに帰ってきた。
そして夜、電話がかかってきた。
-----もしもし?
-----もしもし、俺。
-----どうした?
-----今日試合見に来てくれただろ?ありがとな。
-----俊介コケてたね。
-----うっせ。(笑)
-----でも、カッコよかったよ。
-----いやー、それほどでもあるかな(笑)
よかった。普通に話せるじゃん。
その夜、俊介はうちにご飯を食べに来た。
それからというもの、俊介への想いは募っていき、
花奈には「早く告れ」と呪いのようにつぶやかれ、
楓ちゃんとも時々挨拶程度の会話をするようになった。
でも、俊介は普通だった。
いつもと変わらなさすぎて不安になる。
俊介が楓ちゃんのところに行くとやっぱり寂しくて。
花奈に「嫉妬深い女は嫌われるよ」って
忠告されたにもかかわらず相変わらず楓ちゃんに
ライバル心をむき出しにして俊介を想う。
前と変わったことといえば。
花奈に彼氏が出来て結構長く続いてること。
俊介がサッカーの試合のレギュラーメンバーに選ばれたこと。
楓ちゃんは社長令嬢だということがわかったこと。
私は・・・恋バナをするようになったこと。
花奈に好きな人に振り向いてもらえるにはどうしたらいいかと聞いたら、
泊まり込んで教えてくれたことがあった。
前より、恋に関心が向くようになった。
俊介は相変わらず楓ちゃんとサッカーで忙しい。
それでも、電話もメールもくれるし2人で遊んだりもする。
進展はないけど今のままでも十分いい。
こんな甘い考えをいつも花奈に怒られる。
「・・・ここはテストに・・・」
今は授業中。
もうすぐ試験なのにもかかわらず
最近は俊介と空のことばかり考えている。
今日もまた空を見上げる。
カサッ
何かが机に乗った。
ふと横を見ると俊介が笑っている。手紙だ。
なんだろ・・・
『ばーか(゜Д゜)ノ』
「・・・・」
何がしたいんだろうか。
・・・ん?
小さな字でまだなんか書いてある・・・。
『今日、部活ないから一緒に帰ろう』
バッと顔を上げて俊介の方を見た。
いつもの笑顔で笑ってくれた。
ヤバイ、ヤバイ、嬉しい。
どうしよう・・・顔が熱い・・・
「舞、舞」
隣で愛しい人が呼んでいる。
「どしたー?」
「な、なんでもない」
顔が赤いのをバレないように手で顔を覆う。
授業後、すぐさま花奈に報告。
「うそっ、やったじゃん、舞!!」
私はコクコクとうなずく。顔は満面の笑みで。
「いやー、久しぶりだねー、2人で帰るの」
「うん、最近部活と楓ちゃんで忙しかったから・・・今日はどうしたんだろ?」
「さぁーねー。ま、いい機会だし帰りなよ。私は彼氏呼ぶから!!」
「はいはい、頑張りますー(笑)」
それから放課後まで頭の中では帰りのことばかり考えてた。
俊介と帰るなんて・・・何話そう。緊張しないかな。
もうすぐ授業が終わっちゃう・・・
時間が迫るに連れて心拍数が増えていく。
こういう時思う。私は本気で俊介に恋をしたんだな・・・と。
キーンコーン・・・
「お、おわっちゃったぁ~・・・」
「なんだよ、お前(笑)」
「な、なんでもないよっ」
「・・・ククっ、馬鹿だ」
「馬鹿言うなぁ!!」
「ハイハイ。さ、帰りますよ、舞さん(笑)」
「もう・・・。」
花奈がニヤニヤしながらこっちを向いてる。
俊介が向こうをむいてる時花奈が口パクでこう言った。
「ほ・う・こ・く・よ・ろ・し・く」って。
「んー、寒くなってきたなぁ・・・」
俊介が伸びをしながら言ってきた。
秋になった今、夕方でも少し冷える。
「一緒に帰るの久しぶりだな」
「俊介が帰ってくれないんでしょ」
「何、ヤキモチ??」
ニヤニヤするなってツッコもうとしたけど・・・可愛いからやめた。
「ばーか、違うよ」
違うくないよ。ほんとはそうだって言いたいよ。
「最近さぁ・・・楓と居る時、舞のこと考えるんだよ」
「な、何!?」
「いや、この前舞とこの話したなー・・・とか。ここ、舞と来たなー・・・とか」
「そっか・・・また、いろんなとこ、行こうよ」
「おう、やっぱ舞と一緒にいると楽しいな!!」
・・・嘘だと思った。だって、私も俊介と同じだもん。
ヤバイ・・・涙出てきたかも。
「ん?どしたー?」
立ち止まる私に声をかける俊介。
「・・・俊介。ゲーセン行こうか」
「は!?今から!?」
「行こうよ、久しぶりに」
「んー、じゃあ、行くか?俺様の腕前をまた披露する時が来るとは!!」
「うんっ」
私たちはゲームセンターで2時間ブッ通しで遊んだ。
俊介は昔から起用でUFOキャッチャーとかがとても得意で。
私の大好きなキャラクターのぬいぐるみをプレゼントしてくれた。
「あーあ、財布の中身がさみしいぜ」
「ごめんね、こんなにもらっちゃって・・・やっぱ返す?」
「いや、いいよ。いつも構ってやれないお詫びだ。また行こうな」
そう行って頭をワシャワシャと撫でてくれた。
「今日はありがとう、俊介」
帰り、家に着いてしまうのがいやでトボトボと歩いた。
私たちの家はいつでも会いに行ける距離だけどやっぱりこうやって側にいたい。
そんな希望は叶うこともなく、私の家に着いてしまった。
「じゃ、じゃあ・・・」
「・・・あ、舞、待って」
「ん、何?」
「あ・・・えと・・いや、なんでもない。じゃぁな」
あのとき俊介が何を言おうとしてたのか、私は気になって仕方がなかった。
だけど、聞かなかった。
なぜなら・・・楓ちゃんのことってわかってた自分がいるから。
その日は電話もメールもすることなく、一日が終わった。
次の日の昼休み、中庭にて早速花奈に報告。
「あんたね~・・・もっとガツガツ行きなさいよ!!」
「無理だよ!!あくまでも普通に行くのがいいんだってば・・・」
「ったく。次いつ帰れるかわかんないんだよ?」
「わかってるよ・・・でも、今は」
「はいはい、わかりました。舞のやりかたで応援するよ」
「ごめんね、花奈」
「いいわよ、別に~・・・ 『竹田花奈さん、竹田花奈さん、至急職員室までお越しください。』」
突然放送で花奈が呼び出された。
「げっ・・・ワーク出してないのがバレたかも・・・」
「はい、頑張れ~」
渋々向かう花奈を笑いながら見送り、私も教室に戻ろうとした時・・・
「ごめん・・・楓・・・」
「ううん。私も、俊ちゃんのこと・・・」
「俺が悪いよ、ごめんな」
何があったかは知らない。ただ、私は見てしまった。
2人が・・・・抱き合う姿を。
それ以上は聞いていられなくて、私はその場を離れた。
教室には戻らずに、校舎裏の誰にも言ってない自分だけの秘密の場所に向かって走る。
私は時々1人になりたいときがある。この場所はよく空が見れるから好き。
走ってると涙が出てきた・・・
「・・・ッ」
馬鹿、馬鹿、馬鹿。なんで見た、なんで聞いた。なんで・・・
自分を責めると余計に惨めで。涙が止まらなかった。