夏空「試合と恋」
4話目です。舞の心境に変化がありますよ。
ウッウッ・・・
私は泣いていた。花奈の部屋で。
「馬鹿だね。舞も安藤も。」
「なんで私もなのさ・・・」
「一緒だよ。2人とも。」
「馬鹿なのは・・・」
自分。
「彼女、可愛い子だった・・・」
「舞も十分可愛いよ?」
「花奈に言われると嘘に聞こえる。」
「ほんと、馬鹿」
「うるさい」
こういう時、持つべきものは友達。
・・・って誰かが言ってたけど
ほんと、そのとおり。
花奈にはすごく感謝している。
・・・明日からどうやって俊介に接しよう。
もし、学校で彼女にあったらどうしよう。
「なんちゅう顔してんのよ!!」
「ビックリしたなぁ!」
花奈は私の背中をバシバシ叩いてくる。
「もういい加減白状しなさいよ。好きなんでしょ?安藤のこと」
「・・・花奈。好きって何?」
「今の舞の気持ちみたいになること」
そっか・・・。これが恋か。
んー・・・んー・・・・
「まだわかんない?」
「だって、イライラしかしないもん」
「それは嫉妬よ。もう鈍いんだから」
嫉妬・・・誰に?
「彼女に?」
「もちろん」
「なぜ?」
「安藤を取られたから」
「取られたなんて・・・」
「ずっと一緒にいたもんね~・・・あんたたち」
ほんとだよ。
中学の時は俊介のことを好きな子がいても
付き合ったりはしなかった。
その理由の一部に私が彼女という噂も流れた。
だけどそんなことどうでもよかった。
俊介といるときが一番楽しかった。
だけど・・・今は。
今の俊介の一番は私じゃない。
きっと彼女だ。
私の一番は俊介でしかないのに。
「素直になりなよ」
「ねぇ・・・明日どうすればいい?」
明日はサッカーの試合の日。
「行けばいいじゃん」
「だって・・・そんな」
「行きたいんでしょ?」
「行きたいけど・・・彼女に悪いし・・」
「はぁ・・・ほんっと馬鹿なんだから・・・。」
・・・当日。
半ば無理やり来させられた試合場には
たくさんの観客たちがいた。
その中に私・・・・と花奈。
「まったく、私がついてないと逃げるでしょ」
そういう花奈に少し睨みをきかせながら
空いてる席を探す・・・あ、楓・・・ちゃんだ。
「花奈・・・あれ」
「え・・・あぁ、あの子が・・・」
楓ちゃんが気づく。
「安藤っぽくないね」
「そうでしょ」
「どこがいいのかね」
「知らないよ」
そして私たちは楓ちゃんからできるだけ離れた場所に座った。
「あ、始まるみたい」
フィールドに選手たちが入場してきた。
俊介は11番・・・真面目な顔してる。
そういえば俊介の試合見るの久しぶりだな・・・
昔を振り返りながら俊介を見つめてると
こっちを向いた。・・・目が合った。
「ほら、安藤手、振ってんじゃん」
「う、うん」
私も振り返す。その様子を楓ちゃんがただじっと見てた。
ピピーッ
試合開始のホイッスルと同時に
俊介が気負いよく飛び出す。
「すごい・・・」
次々と抜かれていく相手のチームは
俊介を追いかけるのに精一杯って感じで。
俊介、目立ってんなぁ・・・
ずっと練習してきたもんね。
私は知ってる。
毎日欠かさずジョギングを続けてること。
雨の日は筋トレを手伝うように家に来ること。
少し体重を落としたこと。
時々語ってくれる夢のこと。
[俺、サッカー選手にむいてね?]
[俊介ならなれるよ!!]
[やっぱり~?]
そういってまた馬鹿やってたこと。
「花奈・・・・やっぱり楓ちゃんには渡したくないよ」
「遅いわよ、気づくの」
「私は俊介に恋してるの?」
「そうだよ。それが恋」
気づけた。俊介のおかげで。
楓ちゃんのおかげで。花奈のおかげで。
今日、夏の青空と同じように
私は俊介に恋をした。
まだまだ続きます。