夏空「彼の彼女」
3話目突入です。よろしくお願いします。
昨日は良く眠れなかった。
自分の胸が苦しくてそれが嫌で嫌で
何に対して怒っているのかも分からず
ただ自分の中に押し込めてきた。
「舞、おはよ」
「俊・・・介。」
「昨日、なんかあった?」
「・・・関係ない。」
「は?お前どうしたんだよ、昨日から・・・」
「彼女のとこ、いけばいいじゃん」
「後で行くよ」
・・・行くのかよ。
そんなこと思うのは始めてだ。
俊介に冷たい態度なんかとったことなかった。
でも、今日の空は曇ってて。
私の心も曇り。・・・ときどき雨。
「もう・・・なんなのよ・・・」
「こっちが言いてぇよ」
話が噛み合ってないよ。
「舞、彼女に会ってくれない?」
「は?・・なんで、私が・・・」
「会いたいんだって。俺の幼馴染だし。」
どうしようどうしよう。
会いたくない。会いたくないけど・・・
俊介がどんな子と付き合ってるのかを
見てみたかった・・・。
マネージャーって言っても新しく入った子みたいだし
サッカー部人気だから5人ぐらい女の子いるって聞いたし・・・
その中のどの子かも知らない。
何も知らない・・・。
「わかった」
「ほんとか!?」
「少し会うだけ・・・なら」
「サンキュー舞ー。じゃ、放課後なっ」
恋ってなんでも奪っていく。
私の時間。私の大切な人。私の思い。
この時の空は灰色に埋め尽くされ
次第に雨となって私の心に降り注ぐ。
「舞、どしたの?」
様子がおかしいことに気づいた花奈は
時たま聞いてきた。
それでもこの気持ちを消し去ろうと。
「なんでもないよ」
私は笑い、嘘をついた。
放課後・・・
「あ、雨・・・」
教室でサッカー部が終わるのを待っていたとき
私の気持ちと同じような雨が校庭に降り注いだ。
真っ暗な教室には誰もいない。
花奈は帰り、心配そうに私に訪ねた。
「舞、泣きたかったらうち来て」
その時は意味がわからなかった。
教室の後ろのほうでガラっと音がし、ドアが開いた。
びしょ濡れになった彼と・・・・・・その彼女。
「いやー、途中で降ってきやがったな」
笑ってる場合じゃないよ、俊介。
私の顔、見て。顔。
「あれ、舞怒ってる?待たせてごめん!!」
いや、そんなことじゃないんだよ。
「俊ちゃん・・・・」
か細い声が聞こえたと思ったら
俊介のユニフォームの裾をちょこんと掴んで
上目遣いで俊介を呼ぶ。
「あぁ・・・・その」
早く帰りたかった。この場から消えたかった。
・・・・聞きたくなかった。
「俺の彼女の・・・楓・・・デス。」
何照れてんのよ。馬鹿みたい。
「あ、あのっ。宮間楓ですっ」
「藤咲舞です・・・よろしく、ね」
「はいっ・・・あの・・俊ちゃんから話は聞いています・・・あの、幼馴染ってこととか・・・家が近所でいつもお泊りしてたとか・・・BBQによく行くとか・・・お化けが怖いとか・・・」
何を話してるんだ、こいつは。
「そ、そっか。そんなこと・・・」
そんなことこの子に話すんだ。
「楓緊張しすぎ」
おいおい、彼氏くん。君のせいだよ。
「しゅ、俊ちゃん・・・藤咲さん・・・また怒ってない??」
「え・・・うぉう!!何、舞、何かした??」
「いや」
声のトーンが明らかに違うのがわかる。
さっきからイライラする。
彼女・・・いい子じゃん。可愛いし。おとなしいし。
モテそうなタイプだね。
私と正反対の。
私、なんでここにいるんだろう・・・
「か、帰る」
「えっ、ちょ、ちょ舞!!待てって!!」
「何よっ」
俊介が私の腕を掴んで引き止めた。
「え・・・お前泣い・・・泣いてんのか?」
「え・・・?」
嘘でしょ。目からも雨?おかしいでしょ。
なんで泣くのよ。なんで・・・
「な、泣いてない!!」
「でも・・・」
「うっさい、馬鹿!!」
そうして走り去っていった。
私がいなくなった教室ではどんな話をしたんだろう。
彼女さん、気分悪くしたかな・・・やたら怒りっぽい人って思われたかな。
「・・・ッん」
涙が止まらないよ。俊介。
あ、傘忘れた。もう・・・ヤダ。
「風邪、ひいちゃうかな」
そうして、私は濡れながら雨の中花奈の家へ向かった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。