屋上のジンクス「俊介」・・・書きかけ
最近、舞が変だ。
いや、変なのは前からだけど何か俺に隠してる。
昼休みになると、いつも優也といるのを見かける。
俺には何も話してくれない。
俺の最近の悩みはこれだ。
授業の始まる少し前に舞が戻ってきた。
竹田と一緒じゃないところを考えて、また優也か。
2人でいったい何やってんだよ、舞・・・。
チャイムが鳴って先生が来た。舞も席に座る。
先生に気づかれないよう、舞に話しかけた。
「舞、舞。」
「ん、何。」
「さっき優也と何してた?」
「えっと・・・や、なんでもないよ。」
また・・・
「どこ行ってたの?」
「それも・・・秘密。」
まただ・・・。
「なんだよ・・・」
なんでいつもはぐらかすんだよ・・・。
「・・・どうしたの?」
「いや。」
「何怒ってんの?」
「なんでもねぇ。」
「優也と会ったから?」
「ちげぇよ。」
「じゃあ、なんで怒ってんのさぁ・・・」
舞は本当にわかってない?
ニブすぎだよ・・・
いつもなら笑って見過ごすんだけど。
「いいよ、もう・・」
今は笑えなかった。
舞が好きだ。
だからなんでも話して欲しい。
だから、俺以外の男と秘密で会って欲しくない。
俺は机に顔を突っ伏したまま、眠りについた。
「あ、起きた。」
「・・・うわっ、ビックリしたぁ・・・」
目を開けるとすぐ近くに舞の顔があった。
俺の机の前にしゃがんで、覗き込んでくる。
「お~い、俊介ー?起きろー?」
「ん~・・・っ。」
「おはよ、ねぼすけくん。」
「ん~っ・・・あれ、授業終わった?」
「もう2時間目も終わりましたけど。」
「え、マジ?俺そんな寝てた?」
「爆睡だったね。揺すっても起きないし、先生もほったらかしだし・・・(笑)」
「そっか・・・ふぁ~。ねみぃ・・・」
「次移動だよ、ハイ荷物持って。行くよ。」
「んぁ?マジ?・・・っれ、みんなは?」
「もうとっくに行きました~。」
「そっか、俺たちだけか。」
舞は・・・俺を待っててくれたのか?
嬉しい。思わず顔がニヤける。
「わりぃな、舞。待っててもらって。」
「ん、いいよ、別に。」
そう言って笑った彼女はとても愛おしい。
「あ、俺のケータイどこ行った?」
ふとポケットの感触がないことに気づき、俺はあたりを見回した。
「ん?あ、落ちてる!!」
床に落ちてたみたいだ。
それを舞が拾ってくれた・・・だけど。
「あ、あはは・・・楓ちゃんから電話着てるよ・・・」
「え、あー・・・うん。」
重い空気がその場に流れる。
楓のことになると、舞はいつもよそよそしくなる。
俺はサンキュ。と言って、すぐさまポケットに入れた。
そして俺たちは教室を出た。
廊下には誰1人していない。静かだ。
「電話・・・いいの?」
舞が遠慮がちに聞いてきた。
「うん。もう関係ないから。」
ほんとにもう何でもない。
楓の呼び出しにはあれから一度も答えていない。向こうが一方的にかけてくる。
笑って言うと、舞は何か考え出した。
「うーん・・」
「・・・何?」
「いやぁ・・ちょっと考え事を・・」
「何のこと?」
「いや、何でもないよ。こっちの話!」
また。
どうしてすぐ誤魔化すんだよ。
あははと笑った彼女はなぜか荷物を落とした。
「あーあー、馬鹿だなー」
「う、うっさい!」
クスクスと笑う俺をよそに、舞は拾おうとしゃがんだ。
しゃーねーな。俺も手伝ってやるか。
教科書を拾って舞に渡した。
「ん。」
「・・・」
「ん?」
「・・・」
「どした・・・?」
舞は顔を下に向けたまま、何かを考えているのか俺の声には答えない。
何かを想っているような・・・また考え事か?
俺はいくら話しかけてもぼーっとしてる舞に対してすこし意地悪な事を言った。
「パンツ見えてっぞー。」
「きゃっ!!」
女の子らしいその声と、とっさの行動が可愛くて。
やっぱり・・・おもしろい(笑)
「し、信じらんない!馬鹿、あほっ、ハゲっ!!!//」
顔を赤くして、俺に暴言を吐きまくる彼女だけど、嫌な気はしなかった。
「あははは、俺、ハゲてねーし」
「いっそのことハゲ・・ろ・・・え・・」
少し声が大きかった舞の口に俺は指でふれた。
舞は考えごとをしていて気づかなかったかもしれないけど既にチャイムは鳴っている。
廊下にいると、各教室からの先生の声しか聞こえない。「シーっ」と俺も自分の口に手を当てて、
「授業中」
と言って立ち上がった。
少し舞の顔が赤かったことに俺は気づいていた。
舞はあたりをキョロキョロと見回して即座に荷物を抱えて階段へダッシュした。
「危なかったぁ・・・」
「もう手遅れだろ」
階段に座り、自分の頬に手を当てている彼女の横へと俺は腰を下ろしクスクスと小さく笑った。
「そ、それより今から授業・・・行く?」
急な舞の問いかけに俺は少し考えて、
「もう、サボろーぜ!」
と言った。
「ほんとっ!?じゃ、じゃあ屋上!!屋上行こっ!!」
やけにテンションの高い舞がなぜ屋上を提案したのかはすぐに察しがついた。
俺は「いいよ」と短く答え、また笑った。
俺たちの学校は4階建てで、屋上へ向かうのには一苦労する。
俺はいつもサッカーで鍛えてるからかそれほど苦痛じゃなかったけど、
体力のない舞は結構辛そうだ(笑)
屋上のドアを開けて外に出ると一気に風が吹き抜けた。
冬の風はやっぱり冷たかった。
だけど、それを感じさせない舞のテンションの上がりっぷり。
舞は俺の思ったとおり、空が見たかったんだ。
俺も空を見るのは好きだ。舞が隣にいてくれると一段と綺麗に見える。
それは俺の勘違いかもしれないけど、今日も冬の空にしては晴れていて。
はしゃぐ舞を微笑ましく想い、相手の後を追った。
「見て!俊介!」
フェンスを背に、俺を手招きして呼び寄せる。
「見てるよ。」
俺は舞の隣に立ち、そこからの風景を見て驚いた。
「すげーな」
「うん、綺麗」
街全体を見下ろせるこの景色は芸術と言ってもいいぐらいだった。
俺もこんな景色を見たのは久しぶりだ。
ふと、隣を見ると舞も見とれていたのか少し微笑んだまま見ていた。
「・・・何?」
「え・・・い、いやぁっ、なんでもねっ」
あぶねーっ。見とれてた・・//
「・・?」
「あー、えと、写真撮る?」
俺は苦し紛れの提案をしたつもりだったんだけど、意外にも食いついた。
「えっ!いいの!?」
「おう!ちょっと待ってな。」
俺はポケットから携帯を取りだし、カメラモードに切り替えた。
そして舞に準備が出来たと伝えると、空をバックに舞に近づいた。
「はっ!?こ、これ・・・」
「じゃねーと、撮れねぇだろ?」
俺も近すぎたかなと反省したけど、舞の照れてる顔が可愛くていじめたくなった。
「そ、そそそうですね//」
「・・ブハっ。何焦ってんだよ」
「いやいや・・気にしないでいただきたい・・」
「クククっ・・・じゃあ、撮るよ、ピース」
俺、最近笑い過ぎかもな。舞のことで。
携帯を構えると同時に舞の肩に手をまわしてその手でピースした。
舞は一瞬だけ肩をビクっとさせ、そのまましぶしぶといった形でピースをした。
俺が「ハイ、チーズ」という合図をかけシャッターを切った。
写真を撮り終えると舞はすぐさま俺の側から離れ顔をマッサージしていた。
「おしっ。後で送るな」
写真をしっかり保存し、ふと思い出したことがあった。
前に友達から聞いたジンクスの話。
「そういや、ここの屋上って彼女が出来るって有名だぜ?」
「何それ。」
「知らねーの?屋上で空の写真を一緒に撮った男女は結ばれるらしいぜ?」
「ジンクスってやつ?」
「そうかもな。あー、彼女欲しいー」
「お前は一緒に行く女の子がいねーだろ(笑)」
横目で舞を見るとニヤけてた・・・。
何を考えているのか少し・・・引いた。
もしかして、俺と同じ事考えてたのかな。それなら嬉しい。
俺に一部始終を見られていたと知ったときの舞の赤くなった顔を
俺は忘れないと思う。
そして、舞の頭をクシャっと撫で笑いあった。
ずっと2人で入れたらいいのに。ジンクスが本当になればいいのに。
そんなことを思っていた。