秋空「楓ちゃんの事実」
10話目になりました。長すぎですね(笑)
あれから、普通に授業を受け、
普通に俊介と会話し、普通に放課後になった。
だけど、俊介がずっとソワソワしていたのが少し気になった。
「あ、俊介今日も部活??」
「あ、あぁ。舞もちょっと来て欲しい。」
「ん?なんで?」
「ちょっと、話がある。みんなにも。」
楓ちゃんもいるんだろうなぁ。きっと。
「いや、でも・・・」
「お願い、来て。」
真剣な目で見つめる。俊介の瞳の奥には何が秘められているのか。
「わ、わかったよ・・・」
そんな顔されたら断れないじゃん。
やっぱり俊介に見つめられるとドキドキするな・・・。
優也のときもしたけど。
「舞ー、帰ろー・・・あれ?」
「あぁ、ごめん、花奈。私ちょっとサッカー部行ってくるね。」
「え、何々、何かあった?」
「いや・・・なんか俊介が来いって・・・」
「なんかあるんじゃない?期待していいんじゃない?」
「もう、うるさいよっ!!さ、帰った帰った!!」
「はいはい、明日報告ね!!」
そう言い残して、ブンブンと大きく手を振って帰っていった。
そして、私たちはサッカー部へと向かった。
向かってる途中、俊介は一言も喋らなかった。
私は何かを感じ取ったのか、俊介がこんなにも悩んでいるような、
だけど、どこか決意したような。複雑な顔をしていた俊介にかける言葉がなかった。
サッカー部部室前。
もうすでにほとんどの部員が揃っていると俊介は言う。
その中に・・・楓ちゃんもいた。
「おせーよ、俊介。」
「あぁ、わりぃ・・・」
「彼女がお待ちだぜ」
俊介がチラっと私を見た。そしてこういった。
「舞、ちょっと向こう行ってて。」
「う、うん。」
何か聞かれたくないことでもあるのかな?
そこは男同士だからかな?2人の間には険悪な雰囲気が・・・
すると、私の隣に楓ちゃんが来ていた。
「あの、2人。うちのサッカー部ではライバルみたいな関係で、いつもあぁなんです。」
「楓ちゃん・・・」
「お久しぶりです、舞さん。」
「きょ、今日なんかあるの?」
「どうしてですか?」
「いや、なんか私連れて来られたし・・・」
「後で私たちから話があります。多分、俊ちゃんは舞さんにも一緒に聞いてもらいたくて・・・」
「なんの話?」
「それは・・まだ。それより、舞さんって俊ちゃんのこと好きですよね?」
「え”っ・・・何・・・急に・・」
「見てればわかりますよ」
ニコニコ笑う彼女はほんとにいい子だと思った。
素直で可愛くて、優しくて・・・。
「・・・好きだよ。」
「やっぱり。俊ちゃんも多分舞さんのこと好きです。」
「え・・・」
「俊ちゃん、私といる時いつも舞さんの話してました。」
「それは・・・幼馴染だからで・・」
「ちがいますよ、それだけじゃない。彼女だから、だったからわかるんです。」
「・・・だった?」
楓ちゃんはそれ以上は何も言わなかった。
ただ、遠い目で俊介を見つめてる。
そして、とても悲しそうな顔をした。
「おい、みんな聞いてくれ。」
俊介がみんなを集めた。楓ちゃんを呼ぶ。
そして、こう言った。
「俺たち、別れたんだ。」
「・・・は?」
「サッカー部公認だったからみんなに一番に報告・・・みたいな?」
「その、色々あって・・・私たち別れました。」
「だから、お前らもう俺らなんともないから・・・さ。」
部員たちがざわつく。私は・・・・目を見開いたまま動けなかった。
「舞?」
俊介の声にハっとする。
「あ・・・いや、ビックリしちゃって・・・」
「・・・ごめんな。」
「なんで、俊介が謝るの。」
「うん、ごめん。」
「楓ちゃん・・・」
楓ちゃんは何も言わずにただ、笑っていた。
そして誰も別れた理由を聞く者はいなかった。
帰り、私は俊介と帰った。
「いつから?」
「俺と楓が休んでるときに、決めた。」
「理由は聞いていいの?」
「いいよ・・・まぁ、ざっくり言っちゃうと家柄かな・・・」
「楓ちゃんってお金持ちなんだよね・・・?」
「あぁ、ご令嬢だよ。俺、楓の父さんに会いに行ったんだ。ははっ・・・見事に「娘はやらない」って言われちゃってさ・・・」
「俊介・・・」
「馬鹿だよなー・・・俺、弱いんだ。何も出来なかった。」
「俊介のせいじゃないじゃん。」
「違う、俺は・・弱いんだ・・・俺は・・・」
「俊介」
思わず抱きしめてしまった。
「わ、ごめん!!」
「・・・いい。このままでいさして。」
もう家の近くまで来ていたのにも関わらず、
俊介は私を抱きしめる力を弱めなかった。
それに応えるように私は、俊介を強く、強く抱きしめた。
俊介は・・・私が守る。
そして、これからは俊介の1番になれるように努力すると誓った。
空は夕暮れで、オレンジ色に染まる夕焼けが私たちを赤く照らしてた。